貴方が名作とおもうこの一冊この場面

ウルトラセブン EPISODE：０
ウルトラセブン EVOLUTION
著：武上純希
出版社：朝日ソノラマ文庫

オリジナルビデオ作品平成ウルトラセブンシリーズ『最終章六部作』と『EVOLUTION』のノベライズ。
小説という構成上から各シリーズの単独エピソードは各々の人物から断片的に語られるにとどまり大筋としては各シリーズの大まかな物語を追う展開。
『EPISODE：０』においてはかつてのノンマルト事件とフレンドシップ計画、中国から発見されたオーパーツの隠蔽をカザモリ･マサキに変身したダン（ウルトラセブン）が謎を追っかけてゆく。
『EPISODE：０』において興味深いのはダンの精神面に触れたことでノンマルトがかつて彼が愛したアンヌに変身し地球を追いやられたノンマルトの気持ちとダンにフラれた（と思い込む）アンヌの女性としての心情がクライマックスに重なる。
またかつてのノンマルト事件をもとウルトラ警備隊隊長であったキリヤマ隊長が語る場面がある。
なぜ彼はノンマルトを真っ先に攻撃したかの真相がはっきり明示される。ちなみに本来なら映像作品でもキリヤマ隊長を演じられた中山昭二氏が出演するはずだったが本作出演前に他界されている。本来は小説版のようにキリヤマ隊長がすべてを語る場面が予定されていた。
次作『EVOLUTION』では地球侵略がなくなったはずの地球では水面下による星人の侵略が進み地球防衛軍および基地は壊滅したところから物語は始まる。
カザモリはウルトラ警備隊を辞し自分はカザモリなのかセブンなのかと葛藤しながらも愛するサトミを失う。
そして明かされる真実。アカシックレコードにより本来人類は滅ぶべき道を辿る未来が予見されるがサトミの心を聞いた何者かが人類は衰退するが地球で新たな植物生命体と共に生きていく未来が示唆される。
昭和ウルトラセブンシリーズとは異なるアプローチの本作ではあるが本作もまた『ウルトラセブン』であると思われる。
地球を愛したM７８星雲人またダンやセブンを愛する者、地球を愛する者たちの物語でもある。