北風 2016-09-11 16:47:48 |
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それは、あの学年に一人は居る、クラスメイトや先生の良からぬ噂とかを一早く仕入れるタイプの人間の事か?
「昶はこの街で一番と言っても過言では無い程の情報を持っている」
「!?……そんなに……」
驚いて思わず昶くんを見つめると、彼は珍しく無邪気に誇らしげな表情を浮かべた。
こう見ると普通に可愛い中学生なんだけどな……。
「昶は訳有って『情報』に拘って居る。情報収集が趣味──否、仕事の様な物だ」
故に、と鴫羽さんは続ける。
「此の街の住人の事なら、手に取る様に解る。そいつの住む世界が、表であろうと裏であろうとな」
「…………」
背筋に冷たい汗が流れる。
──だから私の事も知ってたんだ……。
名前の事も体質の事も。
「昶の所持する記録媒体には、此の街を裏の住人の連絡先がびっしり刻み込まれている。そいつらに一斉にメールでも送れば、今街で起きている事件の詳細や真相等直ぐに入手出来るんだ」
「…………すご……」
思わず感嘆が口から洩れる。
映画のような体験など幾らでも味わってきたつもりだったが(サスペンス限定)、正に現実は小説より奇なり、だ。
昶くんは私よりも幼いが、そこらにいる普通の大人を遥かに上回る情報網を持っているだろう。
胸が高なるのを感じる。
と、昶くんが不意に口を開いた。
「ああ因みに蛍ちゃんって裏社会では割と有名人だよ。三人に一人は知ってるんじゃないかな」
「ぅえ!? 嘘!?」
「うん嘘」
「……」
「五人に一人くらいかな」
「え、ええぇ……?」
またも昶くんに翻弄される私。
てか、有名人?
何で?
「で、でもあの人達、私の事知らないっぽかったよ?」
私を拐ったヤクザさん達は、私を誰かと間違えていたようだった。
私を知っていたら、拐う前に気付く筈では?
「ああ、安河山ほど力持ってる所は知らないんだろうね。脅迫とか詐欺とかでみみっちく食い繋いでる奴等には知れ渡ってるよ。『標的はランダムで選んでる筈なのに、風実蛍という少女の登場率がいやに高い~』って」
「……」
心当たりがあり過ぎる。
よくよく考えてみれば、いや考えなくとも私が犯罪者の皆様の間で有名になっているのは当然の事だ。
「でもねけーちゃん、アキちゃんはそこをりよーしようとしてるんだよ」
「?」
利用?
ヒオちゃんが得意気に言った言葉に、私は首を傾げる。
「利用?」
鴫羽さんも首を傾げる。
いや、あんたは理解しているべきだろ。
立場的に。
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