北風 2016-09-11 16:47:48 |
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多少危惧していたが、どうやら心配は無用だったらしい。
数分後には、私は花柄の可愛らしいワンピースを身に纏っていた。
「済ま無いな、そんな古いもので。生憎君の体躯に合いそうな服が其れしか無くてな」
「い、いえいえいえ! とても素敵なワンピースで。ありがとうございます!」
浴衣からの開放と可愛いワンピースに私が若干テンション上がっていると、
「オイ鴫さん!何してんだよ!?メシが冷めちまうだろーが」
突如スパァンと襖を開け放ち、誰かが現れた。
驚いて顔を向けると、金髪強面の男の人がお茶碗を片手に立っていた。
いかにもその筋です。といった外見だが、お茶碗というほのぼのアイテムひとつで迫力が完全に失われてしまっている。
「む、モロハか。済ま無い、今行く」
「ったく……早くしろよ!…………あ?んだこのガキ?ネムの餌か?」
モロハと呼ばれたその人は、私を睨み付けてそう言った。
……餌?
「違う食用では無い!訳有って此処に匿う事になったいたいけな美少女だ」
鴫羽さんはむっとした様子でそう言い返す。
美少女て。
鴫羽さんみたいなルックスの人に言われても全く嬉しくないどころか僅かに怒りさえ覚える。
……食用?
人間に対して使用するにしては何だか物騒な単語達に小首を傾げていると、鴫羽さんがこちらを見て笑顔で言った。
「安心し給え。モロハが餌とか宣って居たが、君の事は食べない」
フォローになっていない。
「いや、僕は犬を飼って居るのだがな?そいつが偏食家で人肉しk」
「あ、説明は結構です」
精神衛生上これ以上聞くのはよろしくないと判断し、私はその台詞を遮る。
「そうだ鴫さん。そのガキ、匿ってるたー言っても部外者なんだろ?余計な事教えんじゃねーよ」
モロハさんもあきれた様にそう言った。
この人、もしかしたら一番常識的なのかな……。
本当に人は見た目によらない。
「てか、それよりメシだ!ガキも早く来い!」
「は、はい!」
「ああ、では行くとしようか」
そうして、私の死際荘での慌ただしい2日目が始まったのだった。
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