館の主 2016-04-03 20:04:48 |
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───私は、死んだ。
その記憶は吐き気がするほど鮮明に、脳内に刻み込まれていた。まるで宣教師に教えこまれた言葉のように、或いは悪の救世主が差し伸べる手のように。それは"安堵"や"思考停止"という恐怖で自らをもう二度と目覚めぬ奈落の底へと導いたはずなのに。
本能が、理性が何かがおかしいと警告を発している。
取り敢えず、逃げなければ。
はじめに思ったことはそれだった。不思議と不快ではない男の声をBGMに、体に力を入れるも動かない。否、油の切れたギアのように錆び付いているだけで、完全に動かないわけではないのだ。だが、これでは逃げられない。少なくとも私が生きていた世界では、もう死は免れないだろう。
───いや、既に一度私は死んでいる。
だからと言って幽霊等という酷く滑稽な存在を信じている訳ではない。だが、私は現に生きている。
この矛盾を問いただすために、私は軋む首を持ち上げた。そして男の目を覗き込み、そこに映る自分の姿を、衝撃の事実を知るのだった。
───私の"____"
自分は紛うことなき、人形だった。
>全てが終わるまで、もう少しの辛抱を
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