ヒーローと日本刀【非募集】

つまり、それは恋愛感情…。
(好意を伝えてくるその様子に胸が苦しくなるが、そんな自分の気持ちが分からないもどかしさで拳に力が入り多くの返事は返せず。しかし最後の言葉に食いつくように反応しては「何を言っている！出来ることなら一時も離れたくないくらいなのに、捨てるわけないだろう！今だってお前の気持ちが、好きだという言葉が死ぬほど嬉しい、のに…」と、喝を入れるように述べては相手の頬を両手で包み込み視線を合わせ。それと同時に反射的に口を開けば自覚していなかった己の心が一気に言葉として溢れ、思わず自分でも驚いたような表情になってしまい。今まで感じてきたものが何なのかそこでやっと分かれば頬に手を添えたその状態のまま、みるみるうちに顔を染め)

…良かった。
(両手で頬を包まれしっかりと目を合わせられれば視線を逸らすことすら叶わなかったものの、その分真摯な気持ちが直に伝わってきたため相手の言葉を疑うような真似はせず。心底ほっとしたような笑みを浮かべるとぽつりと呟くも、自分を安心させるためだけに言ってくれたのだとばかり思っていたため、相手自身が驚いたような表情を浮かべるとその様子を不思議そうに見つめて。直後頬を赤らめる相手を見て固まれば、「…なんで守沢さんが照れるの。告白したの俺じゃん」と混乱のためか間を空けてから尋ね。羞恥心が皆無だと言っても過言でない相手が照れること自体珍しく感じられて、見たことのない表情にほんの少しだけ鼓動が速まって。)

そっ、それもそうだな！…きっとこんな感情を抱くのはお前が初めてでだから、動揺しているのだろう。
(的確な言葉にハッとしては慌てながら、今自分が置かれている状況を改めて理解し。未だ微かに熱を持った顔のまま緩く笑みを浮かべ、愛おしそうに相手の頬を撫でた後手を離し。己の気持ちが分かれば、後は突き進んでいくのみ。再度返事をするべく真剣な眼差しで改めて相手に向き直れば「改めて返事を言わせてくれ。…加州、俺を好きになってくれてありがとう！俺も、お前しか見えないくらい“大好き”だ！」と相手の両手をとりグッと顔を近づけては、くさいセリフも至って真面目に伝え。最後には力が抜けたようにふわりと笑みこぼし)

──お、俺！気持ちを知っていてもらいたかっただけで、主から普通の幸せを奪いたいわけじゃなくて…、っていうか主の幸せが俺の幸せだから、
(ようやくその言葉の意図と相手の気持ちがわかり、信じられないという驚きと純粋な嬉しさが入り混じって。花が綻ぶような微笑みを見ればどうしようもなく舞い上がり頬が火照るものの、心のどこかで冷静な自分が手放しに喜ぶことを許さず。慌てて相手の手から逃れるように両手を抜き取り弁解しては、少しだけ寂しそうに「…主と一緒に年をとることすらできないんだよ。わかってる？」と問いかけるももう泣くつもりはなく、どのような結果になっても相手の選んだ選択を受け入れようと柔らかく笑みを浮かべ。)

あぁ、分かっている！きっと俺の方が先に老いてしまって…そうなるとお前に悲しい思いをさせてしまうな。それなら、このまま何も変化がない方が良いのかもしれない
(覚悟の見える、その美しく思える表情に応えるように大きく頷き。ふと地面に視線を落としてはこれからあるだろう未来の事を想像してしまい、暗い顔をするまいとぎこちなく笑みを作り。しかし、こちらは引き下がるつもりなど毛頭ない。悔いなく想いを伝えたいという一心で、拳に力を込め再び視線を上げれば「だが、それでも一緒にいたいと願うのは自分勝手だろうか？お前と一緒にいることが俺の幸せなんだ。なぁ…加州、本当に“知ってもらいたかっただけ”なのか？」とハッキリとした物言いをしつつも、その目には微かな不安や切なさが浮かんでおり)

…あーあ、せっかく大人な対応をしようと思ったのに。もう諦めてあげないから、責任持ってずーっと一緒にいてよね。
('知ってもらいたかっただけ'などという健気さを装った言葉の裏の、醜い下心を見透かされたような心地がして言葉に詰まり。あまりのきまり悪さに目を逸らしてどう言葉を返そうかと悩みつつ、ふと相手の瞳に視線を戻すとそこにはらしくもなく不安の色が滲んでいて。自分の自己満足ではかえって相手を不幸せにしかねないのだと気づくと、わざと非難がましく開き直ったような言葉を連ねて。未来に思いを馳せる時の相手のどこかぎこちない笑みを思い出せば、今度はこちらが相手の頬にそっと触れて「そんな心配しなくていいって…最期の瞬間まで傍にいられること以上に幸せなことなんてないでしょ？」と穏やかな語調で諭して目を細め。)

…っ。か…加州ぅﾞ～！
(頬に添えられた手に手を重ねると、想いが通じ合ったことの喜び、いつかは死に別れが来るという悲しみ、さらにはその心地よい声色と頬に感じる優しい温もりに安心するという様々な感情がむせ返り。口をつぐみ顔を歪めたかと思えば、名を呼ぶと同時に同時に大袈裟なほど勢い良く涙が溢れ出し。ムードぶち壊しも良いところ、グズグズと泣き声をこぼしては片手で己の目元を覆い「うっ、ゔぅ…俺は嬉しいぞぉぉ！責任はいくらでもとってやる！ずっと、っ…ずっと一緒にいような！」と涙に邪魔されながらもいつものように暑苦しい語り方をし。手を下ろせば、未だ涙の残る顔でニッと笑って見せ)

!?えー…泣かないでよ、せっかくの男前が台無しになるよ。
(突然相手が大泣きし出すとびくっと肩を震わせて、途方に暮れたように呟きもう片方の手を伸ばして相手の頭を撫で。しかし一生懸命語られる相手の言葉に耳を傾けているうちにようやく心からの喜びが湧き起こってきて、くすりと笑みを零したかと思えば顔を綻ばせ。相手らしい、周りに元気を与えるような晴れやかな笑顔に少しだけ頬を染めると、小さな手招きを付けつついたずらっぽい口調で「千秋くん千秋くん」と注意を引いてから、若干つま先立ちになり相手の耳元に顔を寄せて「好きになってくれて、ありがとね」と耳打ちして。)

～っ、どういたしまして！
(撫でられたこともあってか涙も次第におさまり落ち着きを取り戻してきた時、下の名を呼ばれると驚いたように相手へ視線を移し。さらに耳元で囁かれるという予想外の事に目を見開いた後、そんな相手の可愛いらしい言動に心をくすぐられ思わず頬が緩んでしまい、我慢出来ず相手に覆い被さるように抱き付けばギュッと腕に力を込め。ふと何かを思い出したようで、肩を掴みパッと身体を離すと「というか、初めて…初めて下の名で呼んでくれたな！こう、ぐっっときたぞ！」と片手で小さくガッツポーズをしながら、なんとも嬉しそうな表情で述べ)

ぐっときたって……言っちゃうんだ、それ。
(相手の温もりに包まれるとたちまち心が満たされて、しまりのない表情でそっと抱きしめ返し。すぐに身体を引き離されてしまい困惑したように相手を見つめるも、予想外の言葉が飛び出せばぱちくりと瞬いてから小さくふき出しおかしそうに返して。些細なことでここまで喜ばれるとこちらまで釣られて嬉しくなってくるもので、ついつい緩んでしまいがちな口元を意識して引き締めては「でも普段は主って呼ぶからね。千秋くんは俺の主でもあるんだから」と腰に手を当て真面目ぶった表情と口調で宣言して。)

はっはっはっ、それはもっともだ！まぁ主であり恋人であり…そんな関係になったが、たまには名で呼んでくれよ？
(途端に真面目な様子を見せてくる相手に対し、決して馬鹿にするわけではないが笑い交じりに肯定しては頷き。おもむろに腕組みをしては嬉しげに前記を述べ、先ほど呼ばれたことで味を占めたのか軽く口角を上げては首を傾げ。瞬間、静かになった空間でグゥゥｯと盛大な腹の音を響かせれば「…。おお、そろそろ俺の腹は限界のようだな」と恥じらうでも慌てるでもなく、己のお腹をさすりながらヘラリと緩い笑みを向け)

えっ？あ、そっか恋人ね……こいびとってちょっと、照れるよなー…。
(相手に言われて初めてその関係性の名前を自覚したため、繰り返し呟いてもなかなか実感が湧かずじわじわと頬を朱に染めて。相手の問いかけさえも耳に入らないようで、熱を冷ますために頬を両手で押さえながらぽつりと独り言を零し。そこへ盛大な腹の音が響けばはっとしたように手を離して、「ごめん！主は座ってて、なるべく急ぐから！」と大慌てで夕餉の支度へと戻り。手を切らないよう気をつけつつ急いで残りの野菜を切ってしまえば、熱した鍋に油を馴染ませ玉葱と肉を炒めて。)

…？おっ、おお！ふむ、では俺は取り皿やら箸やらを運んでおくか。
(独り言が聞き取れず不思議そうに首を傾げた後、せかせかと動き始めた相手の様子に気圧されながらも反射的に返事をし。促されたものの相手が働いているのに自分だけ座っているだけというのもできずに、ソワソワとあたりを見回し。すると食器が目に入ったため、それらをそれぞれ二人分ずつ探しては「これでよしっ。…加州、俺は大丈夫だから あまり慌てるなよ！」と一声かけた後、食卓であろう机の置かれた畳の部屋へ向かい)

ありがとー、助かる助かる。
(水を切った野菜や調味料を加えて煮込んでいると声をかけられて、気の利く申し出に振り返り微笑を浮かべて答えては自分も手が空いているうちに支度をしておこうと茶碗や漬け物の用意をして。胡瓜や人参、白菜と一緒に漬けられた茄子が目に入れば相手の情けない反応を思い出しおのずと口元が緩むも、一人であるのをいいことに隠しもせず機嫌良く作業を続け。漬け物を小さく切って皿にのせ二人分の茶碗にご飯をよそってしまえば、落し蓋を捲って火の通り具合を確かめるために芋に竹串を刺し。)

よぉし、任務完遂！だが…うぅむ、またしても仕事がなくなってしまったな…。加州～！
(運んできたものを並べておくという小さな仕事だが、終えれば腰に手を当て満足そうに頷き。このまま出来るまで座っていれば良いものの、やはりジッとしていられないのか室内を軽く徘徊し。結果駆け足で厨へと戻れば、料理の良い匂いに期待を膨らませながら「どうも待っているだけというのは落ち着かなくてな。他に手伝うことはあるか？」と料理中の相手の斜め後ろあたりから、ヒョイと手元を覗き込み)

んー……もうちょっとだから待ってて。
(相手が急いで戻ってくる足音が聞こえ、まるで小さな子供のようなその言動に笑いを禁じえず。これ以上待たせるのは申し訳ないと思いつつも他の支度を全て終えてしまったため相手に頼む仕事はもう一つもなく、斜め後ろから覗き込んできた相手に凭れるようにして寄りかかりながらなだめ。ふと思いついたように振り返ると、「お腹空いてるならそこの漬け物食べてていーよ。茄子もあるし」と小皿の上の漬け物を指差しつつからかいの言葉を口にして。)

おぉっ、そうか！漬物もある…―っ、ナス！？
(寄りかかってくる相手を受け止めれば、胴回りに腕を回しじゃれるように軽く抱きしめ返し。振り返る様子を見せるので腕の力を緩めると続けざまに漬物があると告げられ、嬉しそうに声を弾ませ相手の示す方へ顔を向けるも、己が泣くほど苦手な“茄子”という単語を聞いてしまい。反射的にビクッと肩を震わせ、再び勢い良く相手へ顔を戻すと冷や汗を流し「確かに腹は減っているがっ、ナスとは…。試練か！？これは加州からの試練なのか…！？」と大袈裟ともいえる言い方で、真面目な様子で相手を見つめ)

試練？あっ、そうそう！これ試練ね。……食べてくれないの？
(案の定効果てきめんといった様子を見せた相手がなにやら真面目な顔でよくわからないことを言い出せば、一瞬ぽかんとした表情を浮かべるもなんとなく面白そうな気がしてすぐに大真面目な口調で話を合わせて。ぴったりと身を寄せては悪戯を思いついた時のような笑みを浮かべ、相手の唇をふにふにと指先でつつきながら挑発するように問いかけるも、すぐに再び鍋へと意識を戻せば火を消し落し蓋を取って「でーきたできた！」と嬉しそうに大きめの一枚の器に肉じゃがを移して。)

むっ…。やはり試練か！だが、いきなりこんな大きな試練があるとは油断していた。ナスが苦手とはいえ、加州が用意してくれた夕飯でもあるからな。よし！食べっ…いや、しかし…
(唇をつつかれた事に小さく声をこぼしキョトンとした後、そんな挑発的な態度にいとも簡単に引っかかってしまい。恨めしそうな視線を漬物へ送ると食べるか食べないかの葛藤があるのか、口元に軽く手を当て独り言を呟いており。相手が肉じゃがを移している事にも気付かず未だ葛藤を続けていたかと思えば、ふわりと漂ってきた匂いに釣られ「…良い匂いだな！」と振り向いては、先程の表情とは打って変わって期待に目を輝かせ)

まあいきなり漬け物ってちょっとハードル高いしねー…無理しなくていいよ。
(真剣に悩んでいる相手の姿を見ればどれほど茄子が苦手なのかがよくわかり、無理を強いるのは少々可哀想な気もしてきて、無自覚に甘やかすような相槌を打ちながらお盆を用意しそれに二人分の食事一式をのせて。落ち着き払ってはいるものの、本当は相手と一緒に食事をとれるのがどうしようもないほどに嬉しく、少し上擦った声で「お待たせ！食べよっか」と応じると、先に相手が箸や取り皿を持って行ってくれた部屋へ意気揚々と夕食を運び。)