ハナミズキ 2015-10-30 16:57:47 |
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俺達の食事が終わるころ、いつから飲んでいたのか、かなり酒を飲んで出来上がっていた男達がいた。
そいつらは散々飲み食いをしたあげくに、金も払わず店を出て行ってしまった。
「食い逃げか?」
俺はそう思い、飲み屋の亭主に尋ねた。
「ああ。いつもの事だよ。あいつらはいつもそうさ。金も払わず飲み食いしてくんだ。
俺の店だけじゃないぜ。どの店でもそうだ」
「なぜ金を払うように言わないんだ?」
「言った奴もいたさ。その後そいつは死んだがな」
たてつく者は殺す…って事か。警備隊なんてもんじゃない。時代劇でよく見る悪徳商人が雇ってる、用心棒と言う名前のチンピラじゃないか!まぁ、親玉が山賊じゃ当たり前なのかもしれないな。
ならどうして他の人が王座について、国を変えようとは思わないのだろうか。ああ、そうか。だから一年で三人も王様が変わったのか。それにしても、もう少しましなやつはいなかったのか?!これなら俺が王様になった方がマシじゃないか・・・。
俺はこの国の王について聞いてみた。
「王様ってどんな人なんです?」
「噂じゃ、かなりの高レベルなアサシンって話だ。闇の力が使えるくらいのな。
税収や賄賂をくれるやつには何もしないし、好き勝手にやらせてる。
だがな、高額な税金を払えないやつは酷い目にあってるらしいぜ。」
「酷い目?」
「そうさ。俺の知り合いで、年老いた両親を殺されたあげくに、子供をさらっていかれたんだが、王はどうもコッチ系らしい」
と言いながら、右手を左側の頬にあてて「オホホホ」的なポーズを取って見せる。直訳すると『オカマ』である。
『マジか・・・。』と、モリトはげんなりとした顔をした。
「さらっていくのは男のガキだけとは限らん。可愛ければ女のガキも連れて行くそうだ。
そのネーチャンみたいなのをな」
亭主はガハハハと笑いながら話していたが、モリトにしてみれば笑い事ではない。もしもユーリがさらわれたとしたら、さらった相手が無事なわけが無いからだ。下手をすれば城ごと吹っ飛ばすかもしれない。危険だ。
悪人がやられるのはまだいいが、無理やり連れて来られて働かされている人まで巻き添えにしてしまう可能性も、ユーリなら大いに考えられる。それだけは避けたい。
「ユーリ。ひとつだけ言っとく。知らない人には絶対に付いて行くなよ!」
「・・・・・。何よ急に・・・。子供じゃないんだからそれくらい分かってるわよ。もぅ。」
まだ不安要素は残ってはいるが、とりあえずはこの店を出て、王都があるアルムに行く事にしたのだった。
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