風人 2014-11-30 06:00:58 |
通報 |
『ランクA病院の愉悦』に収録されている「被災地の空へ」で速水先生が死体検案書にサインをする時の気持ちは複雑だったでしょう。
救うべき命を救えず相手の魂はすでに天に返り肉体は死と化している。
だけど死者を看とりひとがが現世から還ったことを現実に示すこともひとつのおこない。
ただサインをするのではなく検案書を記すことでひとが生きていた証を本人やその遺族に届け伝わることにもなる。
『桜宮サーガ』シリーズではたびたびひとが亡くなる描写は少なくない。
患者を救えなかったことに後悔もある地方病院の医者の気持ち。
また虐待を見過ごさないために死者の声に耳を傾ける気持ちなど。
“死者に耳を傾けろ”は『桜宮サーガ』の一貫したテーマのひとつでもある。
死体検案書にサインを記すというのも救急医としては報われないし満足いかない行為ではあるだろうけど誰かがおこなわなくてはならない。
現実に東北が震災に遭った当時に速水先生のような気持ちを抱えた救急医がいたとも思われる。
だけどそれが無駄な行為でもない。命が失われるのは悲しいことだが誰かがサインし示さなくてはならない。
トピック検索 |