桜宮サーガ雑談

桜宮サーガ雑談

風人  2014-11-30 06:00:58 
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『チーム・バチスタの栄光』から始まる田口・白鳥シリーズに発端し架空都市桜宮市を中心に過去・現在・未来、東京霞ヶ関や北は北海道の極北市、ドイツのブリュッセルまで広大に広がる桜宮サーガを雑談し語る部屋

トピ主はまだ読んで一年と満たないですが桜宮サーガを語れる方がいてくれたら嬉しいです。男女年齢に関わらずお越しください。

『桜宮サーガ』のシリーズなら小説・映画・ドラマ・漫画などいずれでも話題は構いません

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  • No.366 by 風人  2016-11-10 10:21:14 

インフルエンザの注射は『ナニワ・モンスター』で触れられていたかな。
むかしは全国的に学校などで施行されていたけどいまはおこなわれていないという。
『桜宮サーガ』の物語を読むと現実とフィクションを通して現実にある思惑がみえ隠れする。
メタボやインフルエンザも国というよりは官僚にいいように操られる。
『ナニワ・モンスター』の徳衛医師みたいに国や官僚の思惑に疑問を持っても一市民は何も言えないのが現状。
だけどそこにメスを入れるのが彦根先生。
あの手この手の人脈を使い村雨府知事、検事鎌形、テレビメディアを使いインフルエンザウィルスキャメルのパニックから浪速府を救う。
『ナニワ・モンスター』においてはキャメルによる経済封鎖から国に無血クーデターを起こすであろう浪速府や他地方を救うことで物語は終わる。
だけど彦根先生は次に新たに処方される新薬をめぐっての利権争いが起こることを予見をしている。それが『スカラムーシュ・ムーン』にもなっているはず。
『ナニワ・モンスター』を基点に読むと『桜宮サーガ』が架空のシミュレーションに読めてしまう海堂尊先生の作風作品世界の見事さ。
『バチスタ』からの桜宮から日本地図へと広げてゆくスケールアップ。
『ブレイズメス』ではわずかながらほんの二章分ながらフランス・モンテカルロおよびモナコ公国が舞台になる。『イノセント・ゲリラの祝祭』でもわずかにドイツが描かれている。
あと『弾丸』で高階病院長がモデルガンにハマッていることからアメリカにいたことも断片的に書かれている。
これらのことから日本だけでなく世界に目を向けている節もある。
『肖像』のラストでAiセンターで小百合に破壊はされたが、Aiの理念や思想は世界に綿毛のように翔んでいく希望的思いからも伝わる。

  • No.367 by 風人  2016-11-13 06:14:46 

カジノ法案は現実の世界はようやく審議入り。
『桜宮サーガ』の世界では天城雪彦先生のなかでは確立されてはいるけど彼は政治家ではなく一医者。後に村雨府知事にカジノ構想は受け継がれる設定になっている。
現実の橋下徹府知事および市長時代の構想が『桜宮サーガ』にスピンオフされそれが医療にも繋がる形としてあらわれている。
『ブレイズメス』では“日本人は重い腰をなかなか上げない”みたいな台詞でカジノ構想が頓挫するのは外国人からそう見られている。
海堂尊先生の表現は先鋭的、だけど的確にとらえている一面もある。
とはいえ主人公側が相手側に勝ってハッピーエンドということもない。
ひとつの物語がそこで終わってないからでしょう。次へ次へとゆっくり大胆に人物や世界観を広げてゆく。
だけど必ずしもその物語にとっては過去のことでも風化させないようにあちこちの物語に散りばめられて存在している。
過去の事象は現代の世界や人物たちに影響を与え現代の人物たちの事象はほんの少し先の未来の世界や人物にまた影響させている。

  • No.368 by 風人  2016-11-13 15:25:00 

『輝天炎上』で別宮葉子はアグレッシヴに書かれているけど冷泉深雪は優等生ゆえにやや一部は融通が利かない。
ふたりの間に天馬くんはふたりの性格や内面に引っ張られるからある程度は柔軟にやってのける。
そのぶん異性に引っ張られて損をする。
甘いことを言ってもあるいは女難(?)をかわしてもまた別な形でやってくる。
異性にうかつなことは言えないやってはいけない、とつくづく感じながらも別宮葉子も冷泉深雪も天馬くんから離れない。
別宮葉子は天馬くんの“運”を変えた“幸運の女神”だからおそらく離れることはない。
なら冷泉深雪は?ということになる。
『輝天炎上』においては死因究明社会の問題をレポートの題材にし再び天馬くんはAi(画像診断)、解剖などを学ぶために東城医大内の各教室、浪速府、房総などをふたりしてすすむ。
冷泉深雪は立ち回りがそれなりにうまいけど融通が利かない、だけどそれは彼女の内のちいさな世界ということ。
物語が四部に移りAiセンター会議にオブザーバー参加の際には登場人物の誰とも深い因縁や過去がなかったためか彼女は自然な感想を述べている。
“素晴らしい会議だったけどどこか空虚”。
深読みしたらどこか存在感が空虚な人物があの場にいたことを示唆してたかあるいは犯人側の狙いを本質的にどこか感じていた女性の勘とも解釈できる。
『輝天炎上』ではまだその辺の能力?を自覚していないかもしれない。
西園寺すみれ(桜宮小百合)がどう彼女を見たかも作品内では語られていない。

  • No.369 by 風人  2016-11-14 07:55:18 

高階病院長は強欲であったのは否定できないでしょう。
佐伯前病院長時代は碧翠院と蜜月であったにも関わらずその関係を一方的に絶とうとした。
もちろん心情的に桜宮巌雄には個人的な尊敬もあったと思うがそれが裏腹になってしまった。
『ケルベロスの肖像』と『輝天炎上』を読めばまさにおもてとうらの存在。
小百合の憎しみ、小百合の憎しみは理解しながらもそれをとどめようするすみれ。
ここにも双子姉妹の表裏が書かれている。
本編においていえば田口先生と天馬大吉の出会い、対比もある。
『肖像』と『輝天炎上』はまさにいろいろな人物の表裏。
過去から引っ張られた因縁というのも物語の本質からいえば恐ろしいこと。
ただ高階病院長はブラックペアンを患者の体内に残したことも天城雪彦先生についても忘れてはならない過去として彼に残っている。
だけどそれがはたして公の場では通じないのが大人の社会でもある。
『肖像』から『モルフェウスの領域』などほんの少し先の未来で東城医大がどう経営難を越えたかはくわしくは謎。
いろいろ謎が含まれている。

  • No.370 by 風人  2016-11-14 11:50:35 

すみれは憎しみにとらわれているけど小百合は東城医大を憎む気持ちはあっても田口先生を憎む気持ちはさほどないみたい。
『輝天炎上』の二部三部それぞれすみれ、小百合の心情はわからなくはないけど彼女たちは医療の未来を見ていないのかもしれない。
小百合についていえば碧翠院で高原美智たち患者に働かせるトライアルをしてることで治療に励んでいたと言える。
患者に生きる希望や将来を与えようとしてた。
最後の患者となった高原美智、彼女にその思いは受け継がれ田口先生、天馬くんそれぞれに小百合の気持ちは託されたとみるべきでしょう。
だけど、小百合がひそかに生きていたのを知っていたのは兄であった城崎さんと天馬くんのふたりだけ。
田口先生は知ることもなく『肖像』は終わりを告げる。
天馬くんは小百合の生存を知っていて田口先生は知らないというニュアンス。
『田口白鳥シリーズ』は『肖像』で終わりを告げているけど東城医大の物語は終わっていない。
『領域』などにおいてなお続いている。
『肖像』から艱難辛苦あったであろう東城医大が如何なる再建の道のりだったか……。
『領域』でわずかながら語られているがそれとて全体の一端でしょうね。
その間にも高階病院長と飯沼さんとの裁判、白鳥さんが未来科学センター(コールドスリープセンター)を立ち上げるまであるいは加納警視正からの事件依頼などないとは限らない。無数ともいえる出来事はあったでしょう。
天馬くんや冷泉深雪たち医学生も一度は東城医大がなくなるかもしれないことで学生としては危機感をおぼえたかもしれない。彼らは情報網を意外なほど持っている(兵藤先生あたりが口を滑らしたりして(苦笑い))。
どちらにせよ再建まで茨の道は難くなかったと思われる。

  • No.371 by 風人  2016-11-17 07:38:18 

東城医大が災難に見舞われるのは碧翠院と対極にあった存在だから?
あるいは桜宮という土地時代がひとつの“結界”だからでしょうか。
主要人物である田口先生からさほど桜宮に縁がないはずの八神課長まで何かしら切っても切れない縁が薄くてもある。
『ナニワ・モンスター』では何故か八神課長は桜宮の名を思い出してもそこにあった縁はあたまから抜けていた。田口先生と彦根先生にしてやられた『イノセント・ゲリラ』、『ナニワ・モンスター』時点では『領域』の未来科学センターの話題はなかったと思うけど何かしら桜宮関係で苦渋を飲まされた可能性はある。たんに本人が忘れたか記憶からないだけで。
北は北海道極北市や雪見市、そして近畿は浪速府、彦根先生がいる房総など。
ありとあらやる都道府県に桜宮あるいは東城医大の人物が散らばっている。
海堂尊先生は意味なく人物を移動させることはしない。そこに意味を見出だす。
世良先生が極北に現れたのを桜宮小百合は過去の記憶から彼が東城医大の人間であるのを知っていた。
それを繋いだのはかつての天城雪彦先生。『ブレイズメス』で天城先生に連れられた世良先生は桜宮姉妹と出会っている。
現在に直接出会わなくても互いに(薄くても)縁は存在している。
これらが後々に意味がある場合も『桜宮サーガ』にはある。
浜田小夜にしても罪を償った後に『夢見る黄金地球儀』に出ている。
『夢見る黄金地球儀』以前に4Sエージェンシーにいかなる形で現れたかはまた謎でもあるが。
その辺の断片はパズルのピースのよう。
そういうところを探すのままたたのしみ。

  • No.372 by 風人  2016-11-17 16:27:29 

まだまだ物語内で語られていないところは多々ある。
バブル三部作以前をはたして海堂尊先生が書くかはわからないけど。
桜宮家からいつ城崎は出奔したかこれはある程度、『沈黙』あたりで彼の口を使って語られているけど具体的に詳細は不明。
田口先生が不定愁訴外来をつくるきっかけのひとつは『ブラックペアン』の渡海先生の言葉、『田口白鳥シリーズ』で不定愁訴外来の立ち上げのきっかけはたびたび語られているけどこれもまた細かな事柄は不明。
ドイツのクリフによるDMA(デジタルムービー・アナリシス)の開発の経緯。
渡海先生が日本を離れた具体的な理由。そしてノルガ共和国に身を置く真相←これは『領域』の涼子との触れあいで語られてたような雰囲気。
いくらでも謎は拾えるけど具体的に物語のなかで解決してる事例はあんがい少ないかもしれない。
読み落としして気づかぬ間に解決してたり作品内で時が過ぎてる場合もないとはいえない。
情報量が半端ないおもしろさ。
田口先生や白鳥さんをひとりひとり人物を取り上げても現実の人間とたいして変わらない奥深さ。

  • No.373 by 風人  2016-11-18 06:15:50 

田口先生がすみれたちと親しかった頃は彼が警察関係者と接触はなかったんでしょう。
まだ若かったし不定愁訴外来もなかったからでしょう。
せいぜい速水先生や島津先生の旧友、兵藤先生ら同僚などから警察関係の話題を耳にすることはあったと思われる。
だけど不定愁訴外来を設けリスクマネジメント委員会、Aiセンター会議などの委員をつとめることで徐々に人間関係が広がりを見せてゆく。
『沈黙』においては牧村瑞人という少年が容疑者の疑いがあっても大学病院のひとりとして警察署長に意見する姿勢を見せる。ちゃんと地元警察にも東城医大は協力の関係を示しながらいざという時には真っ向から立ち向かう(ような)姿勢を見せる。
おそらくかつてのすみれたちと親しかった頃はそんな姿勢を見せる人物ではなかったと思う。
だけど高階病院長はどこかで田口先生の人物像や器を見極めたんでしょう。
『田口白鳥シリーズ』を全般的に見ても田口先生がヘタレなところや失敗につまずくこともある。
だけどどこかでチャンスを見いだしたり他人に操られながらも意見する姿勢を見せる。
医師あるいは医者としての境界線を守りながら個人の意思をあらわす言葉や表現力を持っている。
バチスタ事件で遺族に頭を下げる機会を生かしてもいる。
不定愁訴外来という立場や職業からいろいろな人間を知っている利点もある。
不器用ながらも空気を適度に読んで院内の立場や地盤を本人でさえ気づかぬ間に築いている。
高階病院長、藤原看護師、黒崎教授この三人という重鎮あってのところもある。

  • No.374 by 風人  2016-11-18 10:46:44 

桜宮小百合は東城医大を憎んでも田口先生には憎しみは抱いてないだろう。
『輝天炎上』では4Sエージェンシーの兄の城崎に頼んである程度は東城医大の事情を知る。
だけど、Aiセンター長が誰かをとりあえず知らないままだったが盗聴機を通じて知ることになる。
『輝天炎上』の顛末を考えたら田口先生を危険な目に遭わせたくない一面をあったかもしれない。
ふつうに中年と化した田口先生が火の中に飛び込んで桜宮姉妹と再会したら事の真相を知らないままよりさらに悲惨な目に遭わなくもないし物語としては格好よくない。
『肖像』で事の真相を知らないままの方がしあわせだったといえる。
『輝天炎上』で天馬くんに真相を知ってもらうことで逆に田口先生に余韻を残す綺麗な終わり方と表現できる。
『輝天炎上』から『領域』など先の時をゆく物語はまだまだ語られてないパズルのピースやミッシング・リンクもあるからそこをどう海堂先生がどう描くのか。

  • No.375 by 風人  2016-11-18 14:43:16 

病院経営者が建設関係に疎いのは『ブレイズメス』で天城先生以外は疎いことに触れられ『肖像』『輝天炎上』で再度、触れられている。
だけどAiセンターにもしマリッツアが関わってなかったら事なきを得ただろうに。
本来ならスリジエハートセンターが建って芽が出て桜の樹がなってたら高階病院長や東城医大は桜宮家とマリッツアから怨恨を買うこともなかったということ。
だけどそれだけ天城雪彦への思いがマリッツアは深く桜宮姉妹(すみれ、小百合)にも通じるものはなにかしらあったとするべきか。
桜宮市あるいは桜宮の土地そのものがひとの思いを具現化し創っては壊しの歴史を繰り返す土地なのかもしれない。
桜宮のAiセンターは後世に語り継がれることもないまま紅蓮の炎に消えた。
浪速府の死後画像センターの決着は如何なるものになるのか……。
『玉村警部補の災難』でも物語内のGoogleはいまだ過去のままの画像になっているというのも興味ある事例かもしれない。

  • No.376 by 風人  2016-11-19 07:19:04 

斑鳩芳正と加納警視正がなぜふたりして桜宮にいるのかというのもまた謎。
玉村警部補みたいな平凡に近い刑事でさえ何かしらは感づいている。
警察が医療に主導権を握るための何かしらの案件があるということかもしくは何か異なる物事があるのか。
『肖像』では堂々と斑鳩は現れているけどこれは西園寺さやか(桜宮小百合)を隠すダミーであったと見るべき。
『肖像』『輝天炎上』には加納警視正は一切、登場していない。だけど、『ナニワ・モンスター』でのカマイタチ鎌形による検察のガサ入れがあったことは坂田局長や白鳥さんもある程度の警戒はしている。
鴨下局長の逮捕が厚労省全体を震わしているおそれがある。
斑鳩の人間関係が広い。加納警視正ともカマイタチ鎌形とも交流がある。そして霞ヶ関内にある非合法暴力的組織を束ねておりなおかつルーレットを用いて霞ヶ関にあるネタをマスコミに売ることでめくらましにもしている。
おそらく『桜宮サーガ』内の登場人物でもっとも権力を有している人物にちがいない。彼より上もいるとは示唆はされているけどおもてに出てきてはいない。

  • No.377 by 風人  2016-11-20 06:11:47 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』の城崎さんの活躍はまさに裏方。
『アリアドネの弾丸』でも裏方でしたが。
『肖像』と『輝天炎上』では城崎さんは桜宮すみれにこき使われながらも東城医大防衛に専念する。どこまでが本音かはわからない。
『弾丸』では白鳥さんを通じて再び東城医大あるいは田口先生と縁ができる。そして『肖像』『輝天炎上』で陰から活躍する。
彦根先生が『肖像』で活躍できたわけもうなずける。裏ですみれがあれこれ考えておもてで城崎さんが動くことで彼女は隠れた存在になる。
小百合の方がある意味、狡猾ではあるけど暗躍という意味では『輝天炎上』ではすみれの方が上回るかもしれない。

  • No.378 by 風人  2016-11-20 14:35:37 

『ナイチンゲールの沈黙』で小児科病棟で子どもの患者に不定愁訴外来を受けさせてみようかという案が持ち上がった際に子どもでも打算や競争があるみたいなことは書かれていた。
だけど『桜宮サーガ』のシリーズが進むたびに大人社会の打算は凄まじいものがある。
『ブラックペアン』では渡海先生が佐伯病院長の失態を露にしようとし、『ブレイズメス』では天城雪彦先生のやり方に高階先生以下誰もが反発を抱く。
『極北シリーズ』で今中先生の苦労を室町院長は鼻で笑い世良先生は台無しにしていく。
『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』はやや母性に溢れた作品だから打算そのものは少ない。このふたつの作品は母性を問いかけるニュアンスもある。また生まれてくる子どもにたいして。
東城医大もだけど白鳥さんらがいる霞ヶ関は伏魔殿、打算のカタマリとも表現できる。
『イノセント・ゲリラ』『ナニワ・モンスター』では如実に顕れている。
善悪はともかくとしてあの斑鳩室長にしても何かしらの信念はあるように見受けられる。彼は医療が主導権を持つことはままならないんだと思う。
『肖像』では桜宮小百合に活躍の場を譲っただけ。大人として分をわきまえた。それは『肖像』のエピローグで語っている。
大人も子どもも本質はもしかしたら変わらないのかもしれない。表現や方法が異なるだけ。
そんななかで田口先生や今中先生みたいに出世を求めない人物いれば白鳥さんや彦根先生みたいにギリギリ綱渡りしながら高みを目指す人物もいる。そのなかで己の目的や目標に辿り着こうとする。
斑鳩室長は本意がわからない人物。高階病院長の方がわかりやすいくらい。

  • No.379 by 風人  2016-11-20 16:42:16 

『ナニワ・モンスター』のカマイタチ鎌形さんみたいな人物が検事や検察にとっては国民の理想かもしれない。
二部の検事や検察の描写は医療が主題の『桜宮サーガ』からしたら異質にはじめは見える。だけど厚労省にガサ入れをして少しずつ事の真相が見えてくる。
『桜宮サーガ』によくあることのひとつだけど無関係な事象や事柄が後々、物語の種明かしになる。
検事や検察が鎌形みたいな人物なら汚職や賄賂などは必要悪程度にしか社会に残らないのかもしれない。社会を完全に清廉潔白にするのは現実的に不可能。
社会には必要悪は必要不可欠。
鎌形はそれをよく理解してる人物に思われる。だけどこの人物もまた彦根先生と因縁ある。
『ナニワ・モンスター』二部の霞ヶ関の描写は『イノセント・ゲリラ』とはまた様相がちがうのも興味深い。
活躍する鎌形たち、ルーレットする斑鳩たち、『イノセント・ゲリラ』がまだ社会のおもてに出ている一面とするなら『ナニワ・モンスター』二部は霞ヶ関の裏もしくは闇の一片でしかないかもしれない。
Aiセンターもしくは死後画像センター、正しくはどちらも同じ機能を施設ではあるが医療か警察主体で名称が変わることが示唆されている。
これらも霞ヶ関の国民が知らない一面かもしれない。フィクションではあるけど。

  • No.380 by 風人  2016-11-22 07:08:04 

『輝天炎上』のラストにおいてすみれは死なないと天馬くんに言い残しているから死んでない可能性もある。
だけど『ブレイズメス』『螺鈿迷宮』を経ての桜宮姉妹、双子のDNAもしくは遺伝子の因縁。
『輝天炎上』のすみれ視点の物語はまさに憎しみに満ちている。マリアクリニックの曽根崎理恵先生、茉莉亜先生も桜宮一族と血脈や因縁があるのも驚き。
だけど三枝先生が罪に追いやられたのは小百合からの因縁ともいえる。

反面、すみれは『輝天炎上』で一見こちらは空虚に書かれてるようで鶴岡師長との縁、兄である城崎との接点からかろうじて実存を得ている。
小百合もすみれも戸籍という現実からは亡くなっていて存在はしてないことは同じ。
同じだけど似て非なる。
小百合は憎しみにとらわれながら斑鳩や南雲父娘という社会組織にいる者たちのバックボーンが存在する。
たいしてすみれはやや社会から離れた鶴岡師長や兄城崎という社会の枠組みから離れた協力者や親しい者。
たぶんに愛情や人間的な面からしたらすみれに分がある。
権力組織を背景に持つ小百合はそこがやや欠けているかもしれない。
だけど、双子ゆえに鏡合わせかもしれない。
マリツィアも真実を知りながら小百合には多く語らない。

  • No.381 by 風人  2016-11-23 13:58:29 

『輝天炎上』での実存がないまま生きているすみれや小百合の気持ちはいかがなものか。
死亡届は出され戸籍は存在してないだろう。
だけど生身の身体を持ち生きてはいる。
その一方で東城医大に憎しみに駆られる思い。
『輝天炎上』で桜宮家を再興しようとする動きは皮肉なことにふたりにそれは見られない。
小百合は復讐に燃えすみれは阻止しようとする。
巌雄先生や華緒さんにしたら生きている道があるならしあわせに生きて欲しかったのではないでしょうか?
なにぶん巌雄先生は『螺鈿迷宮』で亡くなっているのでその真意は謎のまま。
巌雄先生はいずれ白鳥さんが“出る杭は打たれる”みたいな形である種の予見はしている。
誰が白鳥さんに刃を向けるかは『桜宮サーガ』は登場人物が多いためにわかりにくい。
もしもすみれや小百合が『輝天炎上』後に生きていたらその可能性はないとはいえない。
『桜宮サーガ』の世界では死者が生き返ることがあり得る世界であるかもしれないから。
ひとつひとつの本やシリーズ全体に謎や伏線が散らばっているからどこかでその線を辿って人物や物事が生きているあるいは息を吹き返すことがある。
だからすみれや小百合が『輝天炎上』で亡くなったという風に思えないのかもしれない。

  • No.382 by 風人  2016-11-23 15:06:10 

巌雄先生は「すみれが戻れば桜宮家は安泰だ」みたいな表現を残してもいましたね。
もしかしたらこれが桜宮家再興の言葉かもしれない。
ただあくまで亡くなる直前の言葉だから嘘はないと思われる。
それにすみれにしても『輝天炎上』に「わたしは死なないわ」と言葉を残している。
すみれの心から田口先生への気持ちが消えていないのは『輝天炎上』で彼がAiセンター長をつとめたことへの驚きから理解できる。
小百合は東城医大も田口先生もおなじにしか見えていない。
だけどすみれは東城医大と田口先生を組織とかつての恋人(?)ということかろうじて分けてみている。
『螺鈿迷宮』『輝天炎上』をとおして読むと小百合は憎しみにとらわれているけどすみれはいざとなると不器用なぶん人間らしくもあると思われる。
実際に過去の田口先生とのいきさつは物語のいくつかで田口先生をとおして邂逅として語られ『肖像』で彼は人知れずその過去に涙する。
『輝天炎上』でのすみれの驚きとはまた対照的ともとれる。
田口先生、桜宮すみれのつながりは『肖像』『輝天炎上』を読む限りは絶たれたようにも思えない。
この辺もいずれは回収されるのか。

  • No.383 by 風人  2016-11-24 16:34:19 

『輝天炎上』は基本的に天馬くん、冷泉深雪、桜宮小百合、桜宮すみれの視点で物語が語られる。
同時に『ケルベロスの肖像』の裏側でもあるため天馬大吉が事実上は物語の中心に位置する。
『肖像』『輝天炎上』共にクライマックスの場面では西園寺さやかに化けた桜宮小百合に一蹴されるもののすみれから託されたことを担う。
だけど『肖像』『輝天炎上』においてはいちおうの勝利をおさめたのは小百合自身の情念でしょう。
桜宮のAiセンターを崩壊させた事実。それは幽霊でも何でもないそこにある現実。
『肖像』においても斑鳩室長はそれを認める度量。だけど彦根先生はこれを敗北とする潔さもある。
高階病院長や田口先生は徒労に終わるむなしさ。
天馬くんは城崎さんを通じて知るすみれの生存とクライマックスの別れ。
これらがおそらくまた天馬くんの人生を左右することはあるでしょう。

  • No.384 by 風人  2016-11-26 12:16:27 

速水先生を一度は東城医大に復帰させようと『ケルベロスの肖像』でありこの時は高階病院長の判断で留意された。
時期尚早と判断された旨はあったよう。
しかし『モルフェウスの領域』でもまだ東城医大に戻っていなかった。
速水先生が東城医大に戻っていない意味はなんだろうか思う。
東城医大の倒産は免れたが『領域』においても経営が順調かは不透明。明らかにわかるのは医療が先細りしてる現状は『領域』でも伝わる。
おそらくその辺の懸念もあるんでしょう。
速水先生が“大人になる”のを高階病院長は見守りおそらく桃倉センター長や世良先生に彼の成長を見守らせているのかもしれない。
『極北ラプソディ』を速水先生の視点で読むととてもよそ者の雰囲気はしない。だけどある程度の境界線は保ちながらいずれは雪見市の救急センターを去るよそ者という自覚はあると思われる。
桃倉センター長や伊達先生たちに時ににらまれながらも地道に成長や反省の兆しはある。
桃倉センター長はともかくとしても若い伊達先生や五條さんたちにしたら速水先生は苦労の種でも救急センターに患者を呼ぶ存在。
花房さんと別れたことでもひとつの成長はあったと思われる。
だけどまだまだ東城医大に復帰させるにはまだ何か足りないものがあるんでしょう。
速水先生不在のなか佐藤先生や如月さんたちの成長を促す意味も当然あるでしょう。
桜宮に速水先生が復帰された時に何かが成されるのか?と考えるのは読者としては深読みでしょうね(苦笑い)。

  • No.385 by 風人  2016-11-27 05:56:33 

『スリジエセンター』は未読だけど『肖像』や『輝天炎上』の人物たちが天城雪彦を語る様子をかんがみたら彼が失意のもと亡くなった可能性を否めない。
そもそも20年以上の時が経ったうえでのタンピング。
陣内教授やマリッツアの語る天城先生への思いや邂逅。
高階先生側からしたら『肖像』で陣内教授から代理店のメアドを聞く描写はあったけど最終的にAiセンターが小百合により崩壊したために代理店を通してマリッツアまでたどりつくことをしたかは不明。
Aiセンターそのものが崩壊したことで建築家まで確かめようとする気持ちがあったかどうか。高階病院長の『肖像』のラストの様子ではその気持ちさえなかったようにも思う。

  • No.386 by 風人  2016-11-28 06:23:41 

シリーズ全体を通して斑鳩芳正室長は実体が見えないような存在。
登場人物の誰もが印象をはっきりさせないというのもひとつの印象。
だけど医療に対しての姿勢ははっきり敵意を示している。
『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』『ナニワ・モンスター』などどの作品にあらわれても不気味な存在。
なにかの作品で田口先生が自然の作る闇よりも人間が作る闇の方が怖いのでは?と示唆する思いがあったと思うけど斑鳩室長はまさにそれを具現化した人物かもしれない。
霞ヶ関の闇もしくは暗部と表現すべきか。

  • No.387 by 風人  2016-11-28 13:38:32 

『螺鈿迷宮』を読むたびに碧翠院つぶしは正しくなかったように思われる。
安楽死などの行為はたしかに犯罪だけど、桜宮の闇を一手に引き受けた存在でもあった。
天馬くんはすみれと小百合を通して碧翠院を学び巌雄先生から短い間ながらも医者として必要な心や信念を教わる。
だけど患者が次々に亡くなる碧翠院はホラーでありミステリー。
描写のいくつかが都市伝説ぽいところも相まって不気味。
読んでるとバブル三部作(『スリジエ』は未読)をのぞけば『螺鈿迷宮』は平成や21世紀の時代なのになぜか昭和の雰囲気を醸し出すシリーズ。
この時点の天馬くん若いけど続編『輝天炎上』でもまだまだ若さを残す。
『輝天炎上』の高原美智さんとの別れはちいさな一歩のように見えて実は大きな一歩であると思う。
『輝天炎上』ではAiと死因不明社会について彼と冷泉深雪がいろいろな先生方に出会い学ぶことで社会の見えない壁や問題に突き当たり向き合うというのがひとつの姿勢。
清川司郎先生はたしかに臆病なところはあるけどそうせざる得ない姿勢は社会もしくは組織に属する人間には本人の意思に関係なくあること。
妥協や臆病、あるいは他人に意思を委ねるのもやむを得ない。

  • No.388 by 風人  2016-11-29 06:45:29 

田口先生みたいにいっこうに女っ気がないのと天馬くんみたいにふたりの異性に挟まれるのはどちらがしあわせだろう。
田口先生とてスケベ心程度は備えているのは『ケルベロスの肖像』でようやく姫宮香織と会う口実ないし理由を利用してることから必ずしも女っ気を意識してないわけではない。
だけど職場たる不定愁訴外来には東城医大の生き字引がひとり藤原真琴看護師がいて目を光らせている。
『バチスタ』では大友看護師といい仲になりそうだったのを阻まれ『沈黙』では浜田小夜に知らないこととはいえ父親に重ねられたり『凱旋』では如月翔子と親しくはなるが恋愛関係には当然のようにいたらない。
田口先生が双子の桜宮姉妹とある一定の関係を絶ってから彼のまわりに際立った異性はいないみたい。
基本的に東城医大から出ることは少ない。

片や天馬くんは幼馴染みでも別宮葉子がなんだかんだで時に彼をこき使いねぎらいながらのつかず離れずの間柄。
『輝天炎上』での冷泉深雪との出逢い。落第留年生と優等生とこれまたラノベやアニメみたいなありえないシチュエーション。
死因不明社会とAiについての問題を東城医大、浪速府や房総とあちこちをふたりしてまわりながら距離が近くなる。
『輝天炎上』は『螺鈿迷宮』同様に天馬くんを主役に置いているから物語の内容が若く描写されてる。
医学生や留年落第生徒という天馬くんの立場や位置。一方では深く刻み込まれた桜宮家との因縁、一方では冷泉深雪との異性への恋心に近い感情や思い。
若いけどだからといって感情や気持ちのおもむくままに行動や発言はしない。多少の医療社会や田口先生をはじめとした大人たちへの感情はあるけど。
だけどそこから学び取れるなにかを得ている。
冷泉深雪という優等生な異性がいることで際立つ一面。
だけど恋愛関係として考えると三角関係はふつうに苦労ありそう。

  • No.389 by 風人  2016-12-02 13:44:36 

『外科医 須磨久善(ひさよし)』があった。
中古書店で280円。ちょっと安かった。
本来なら『スリジエセンター』や『スカラムーシュ・ムーン』から再び読むところだけどあいにくこの二冊は見当たらないorz。
著者である海堂尊先生もまたこの本の須磨久善もどちらも医者であり作家であるという共通点。
医者であり作家でもある海堂尊先生が同じ職業の実在の人物を書くという。
『伝説』で解説は読んだはずだけどいまはあたまから抜けているorz。
だけど『外科医 須磨久善』の冒頭とあとがきちらっと見たら海堂尊先生からの言葉、そして『ブレイズメス』で書かれた“公開手術”という言葉が真っ先に現れている衝撃。そしてあとがきには再び著者で海堂尊先生から、さらにドラマ『相棒』の杉下右京を長く演じている水谷豊からのあとがき。
『ブレイズメス』のあとがきでも作家西尾維新さんが書いてましたが『外科医 須磨久善』も劣らない雰囲気。
『ブレイズメス』で天城雪彦がおこなった公開手術を須磨久善先生なる人物は現実におこなったということか。
ノンフィクションということだから海堂尊先生を通した現実が伝わることになりそうな一冊。

  • No.390 by 風人  2016-12-02 15:39:10 

『外科医 須磨久善』ちょっとだけ読んだら須磨久善なる人物が『ブレイズメス』の天城雪彦先生のもとになった人物ぽい雰囲気を醸し出している。
“公開手術”そして海堂尊先生は須磨久善先生の公開手術をギャンブルと表現しているこのふたつ。
海堂尊先生の表現力などもあると思うけど。
だけど須磨久善先生が公開手術したのは1992年というこの年月の古さというのも衝撃な事実。
バブルがはじけた日本の時代。
ノンフィクションという本だから無意識に自分が生きた時代を重ねたかもしれない思い。
しかしみごとに海堂尊先生の『桜宮サーガ』の『ブレイズメス』とも重なる時代。
明らかに天城雪彦先生は現実の須磨久善先生からの思いやイメージから出てきた人物と考えた方が妥当だろうか。

  • No.391 by 風人  2016-12-03 06:25:16 

『外科医 須磨久善』を読むと海堂尊先生が須磨久善先生をもとに『桜宮サーガ』のいろいろな人物に投影させている雰囲気ある。
だけど医療社会の現在も書かれている。“日本人は新しいことに拒否反応を示す”のくだりは医療に限らずほぼすべての世界や分野にあることと思われる。
『ブレイズメス1990』の天城先生の公開手術とギャンブル、『田口白鳥シリーズ』の白鳥さんによるAi提唱、彦根先生の医翼宣言、医療庁など。いくつかはフィクションの物語を通しての現実への呼びかけであると思う。
『伝説』を読むと海堂尊先生が書かれたことのいくつかは現実に追いつかれているらしい。
架空の『桜宮サーガ』世界とこちらの現実世界が重なっているところもないわけではない。
もしかしたら『外科医 須磨久善』などいくつの本を通してあちらの世界とつなげているのかも(笑)。
だけど『桜宮サーガ』な世界でも田口先生たち登場人物たちは医療が誰のためなんのためにあるのか日々を悩み葛藤する。
答えを見出だそうとしながら答えは見つからない。
海堂尊先生の本を読むと医者が日々悩みながら病気や患者あるいは地域地元に接しているのが伝わる。

  • No.392 by 風人  2016-12-03 11:25:03 

『外科医 須磨久善』はノンフィクションだから海堂尊先生が須磨久善先生を取材したことを追っていってる点が架空の『桜宮サーガ』シリーズとは異なる。
過去からおそらく現在への須磨久善先生を追っていって書いてたはず。
1992年と冒頭に出てきた時にふつうに驚いた。90年代なんてつい最近までそんなむかしではないと思ったけど現実の自分が歳を取ったことへの現実も見えるから自分に重ねあわせたらむかしなんだということ。。
だけどそんな古い時代に公開手術という場を設けるだけでも本の中でも現実に例は少ない。
なおかつ衆人監視のもとで手術をしながら質問者に的確に答えあまつさえ当然、ミスは許されない。
この辺の描写はまんま『ブレイズメス』の天城雪彦先生を彷彿させる。だけど『ブレイズメス』は架空世界の出来事、『外科医 須磨久善』は現実にあった出来事。
読んでた『桜宮サーガ』の世界そのものが現実に一部であれ起きてたといいこと。
また須磨久善先生の奥さんが出てきたところも現実味ある。旦那さんの活躍を心配なさってたと思われる。
こういうところも『桜宮サーガ』の人物たちに重ならなくもない。
医療従事者の家族というのも『伝説』で医者ではないけど三船事務長を通して語られた場面があった。
いろいろ重なって読めるのはすごい一冊かもしれないと感じ始めているかもしれない。

  • No.393 by 風人  2016-12-06 05:37:51 

『外科医 須磨久善』を読むと須磨久善先生の半生はバラエティに富んでる。
バチスタ手術をOKした院長もさりげなく凄い。もしも失敗すればおこなった病院の信用にも関わることなのに須磨久善先生に承諾する。
だけど『外科医』にいくつか書かれている事柄、阪神大震災の出来事などや『プロジェクトX』に取り上げられたこととか現実の重みが伝わる。
須磨久善夫妻には子どもはいないけど犬を買っていたらしい。
だけど犬が病気になった時はいくら本人が医者であっても獣医ではないからうまく伝えられなかったり獣医とのコミュニケーションのむずかしさもあったよう。
おそらくそんなところも医者としてのコミュニケーションに考えたり役に立てようとしてた節もあったんじゃないでしょうか。
外国で安住の地を持っても飼い犬が道を示してくれたというのも運命的。
世の中にはなにかしら人間関係や天運に恵まれた人物がいるかもしれない。
人生に選択肢はあってもいちばんむずかしい選択することは大抵の人間はしない。
だけど須磨久善先生はそれができる人生のよう。

  • No.394 by 風人  2016-12-08 09:43:44 

『ブラックペアン1988』『ブレイズメス1990』あと未読の『スリジエセンター』が『桜宮サーガ』の世界ではバブル時代にあたる。
『ブラックペアン』には花房さんとデートする若き日の世良先生が「となりのトトロ」を見に行くという描写があったり『ブレイズメス』の時代には医療従事者たちが病院の食堂で食事をする場面があったり21世紀の今日(こんにち)からしたらあきらかにちがうのが伝わる。
バブル時代で浮かれる日本人の姿を海堂尊先生は医療については荒波の時代として書いてる節はあるかもしれない。
作品内の高階先生と天城先生の対比を見る世良先生が客観的にふたりを見つめることにも時代の息吹きがあるかもしれない。
またノンフィクションである『外科医 須磨久善』は冒頭からいきなりバブル時代の現実のなか須磨久善先生の活躍が語られる。
以前にも書いたけど『ブレイズメス』の天城先生と現実の須磨久善先生は重なる。
フィクションあるいは現実にせよ高度成長期とはちがう意味で日本人が輝いていた時代かもしれない。虚飾であった可能性も否めないが。

  • No.395 by 風人  2016-12-08 19:53:07 

『外科医 須磨久善』のあとがきになぜ水谷豊さんのあとがきがあったのか謎だったけど読んだらなぞでもなかった。
ドラマ『外科医 須磨久善』で須磨久善先生を演じられたようですね。
それにしても須磨久善先生の半生にしても人生の選択に迷うことはあるだろうしつまずきということもあるだろうけどすべてや完璧、完全というのは読んだら求めていない雰囲気。
失敗も成功もあるだろうけど大半が自分にとって前向きでありわがままを言わなければたいていはうまくいくみたいな感じ。
以前に読んだ『ゲゲゲの女房』の水木しげるさん武良布枝さんにも近いところはある雰囲気。
なにをしあわせとするか?というところは共通している。

  • No.396 by 風人  2016-12-15 16:01:47 

今年は『ブレイズメス1990』『ナニワ・モンスター』『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』『玉村警部補の災難』『モルフェウスの領域』『外科医須磨久善』と海堂作品を七冊読めた、例年にない本に出会えた年。

個人的に名作だったのは『ブレイズメス1990』『ナニワ・モンスター』『外科医須磨久善』の三冊。
『ブレイズメス』では謎の人物だった天城雪彦の鮮烈な魅力や人物像。
ギャンブルと人の命をおなじように扱ってみえるように誤解されがちだけど人生がかかっているとしたら全財産を投げ出すくらいの覚悟や手術も必要ではないだろうかと思う。
『外科医 須磨久善』を読むと天城雪彦先生のモチーフは現実の須磨久善先生なのが伝わる。生き方、思想、行動力、運などすべてではないだろうけど。天城雪彦先生にいくぶんフィクションとしての魅力はあるから。
天城雪彦先生も須磨久善先生も医療の現実や社会に立ち向かう姿勢は重なる。『ブレイズメス』『外科医』どちらも読めば伝わるはず。
『ナニワ・モンスター』はまさに日本国内の架空のウィルスに経済戦争シミュレーションモノ。
多くの物語のなかであれこれ謎の動きをしていた彦根新吾先生の謎が明らかになる。
『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』『極北ラプソディ』などで何をやってるんだと思いながら追いかけていたら浪速府村雨府知事と一緒になって地方独立を謳い浪速府に医療庁の創設をたくらんでいたとは。読んでて吹っ飛んだくらいに天城雪彦先生とは違う意味で衝撃あった。
来年は『スリジエセンター』と『スカラムーシュ・ムーン』は読んでみたい。

  • No.397 by 風人  2016-12-26 15:28:15 

『カレイドスコープの箱庭』を冒頭を少し読んだら相変わらずいろいろな人物が出てくるけど高階病院長と田口先生の立場の入れ替わりや妙に意気消沈な彦根先生など少しだけ時代は未来になってる。
『肖像』からほんの三ヶ月程度なのに。
彦根先生が落ち込んでおとなしいのは『スカラムーシュ・ムーン』で司法か斑鳩室長に負けたんでしょうか。『肖像』のラストでは意気があったのにまるで可愛い後輩のようにおとなしい。
だけど『肖像』からほんの三ヶ月しか経ってないから東城医大の経営や患者からの信頼がいささか頼りない印象があるようにも映る。
幾多の事件や難題を抱えていた病院なだけに現実ならなおさらと思う。
しかし藤堂文昭、この人はアメリカがよく似合う(笑)。
『桜宮サーガ』内ではノーベル賞に近い人物とされるだけにインパクトある。

  • No.398 by 風人  2016-12-27 16:25:29 

『カレイドスコープの箱庭』のアメリカの一場面。
よもや曽根崎伸一郎の登場もあったのは驚き。ネットだけでなく直に本人が足を運び議論するのは好感ある。
あの藤堂文昭を唸らせるのはたいした存在。
『箱庭』でのアメリカへのAi標準化国際会議は無駄足ではなかったのは明らか。『肖像』で桜宮のAiセンターは破壊はされたが、ひとの思想までは消せなかったとうかがえる。
『祝祭』においてもひととのつながりは広いようで狭いと表現されてたけど海堂作品はそういうの多々ある。人物たちがさほど自覚してないだけ。現実にも通じるところ。
田口先生は『バチスタ』以降、人脈を広げているのは事実。おそらく『箱庭』や『領域』などの経験が未来の東城医大ひいては桜宮に通じている雰囲気ある。
上昇志向がないのは変わらないけどさすが次期病院長に就くというのは難色を示す。
明らかに佐伯前病院長や高階病院長とタイプが異なるのもあるし田口先生が権威を振るうひとではない。
だけど『箱庭』『領域』ともに白鳥さんや如月翔子などは着実に田口先生を次期病院長に、という雰囲気もある。高階病院長に似てきたとあるし(苦笑)。
ある意味誉め言葉ある意味ちょっとした嫌みも含んで。

  • No.399 by 風人  2016-12-28 06:24:25 

田口先生は成長してないようで成長や進歩はあるでしょう。
物語の時系列がほんの三、四年程度ですからね(苦笑)。
『箱庭』での高階病院長とのやりとりを読むと『バチスタ』『凱旋』『沈黙』『弾丸』からとかなりちがう。のらりくらりとやり過ごそうとしてたのに比べたら『肖像』『箱庭』は意外なくらいにあっさり依頼を受けている。
不定愁訴外来だけやってるよりははるかにアクティブに動いているということ。院内業務としては不定愁訴外来、リスクマネジメント委員会、Aiセンター長。
Aiセンター長の肩書きはてっきり『肖像』でのAiセンター爆破事件からなくなったと思ったら存在したままなのは少し驚いた。
組織に属す限りは肩書きはかんたんに消えるものではないということか。
だけどもし『肖像』でもし病院が破綻してたら『箱庭』での同窓会はなかった可能性もある。
そういう意味では『肖像』のラストで高階病院長の言い分をひっくり返したのは田口先生たちにとってはプラスだったかもしれない。
桐生先生は一時は医者は廃業かと悩んでたのは気の毒だったけど子どもを助けたいという一心が『ブレイズメス』でもわずかに語られてたけど『バチスタ』から『箱庭』へとようやくつながる。
ある程度の登場人物への救いある措置はしてある。

  • No.400 by 風人  2016-12-31 04:32:00 

『相棒』シーズン6の白い声のノベライズを読んだけど海堂尊作品にそっくり。
だけど死体が画像診断は現実には数えるほどしかされてなく事件性がないまま扱われる。
海堂尊作品はそこに切り込んでいくことで作品を通して社会に問題提議をしてゆく姿勢。
『相棒』の「白い声」については犠牲となる人物が重たい。
死ぬ必要があって訴えるのはドラマだからかあるいはあえてテーマを伝えるためにやむない演出なのか。
さりげなく舞台が城南大学というのは『仮面ライダー』ぽい点は面白かった。

『桜宮サーガ』と『相棒』シリーズは違う。
『桜宮サーガ』はほとんどの作品は医療や医療従事者があってそこに日々の難題や事件あってなにかを訴える。
Aiを伝えるのは“死者に耳を傾けろ”と『バチスタ』から唱えたり訴える人物は作品により異なるけど一貫している。
だけど『極北クレイマー』の三枝先生みたいになまじAiをしてなかったばかりに証拠を不十分とされ逮捕に至ることもある。つねに世の中に悪意がどこかに潜んでいたり闇に手を伸ばす者もいる。
『相棒』シリーズも共通してるのはどんな地位ある人でも犯罪に手を染める者がいること。
なりゆきから犯罪に手を染める者たちもいるが中には加害者でもあり被害者もいる。
右京が許せないのは何者であっても犯罪行為に手を染める者に彼は憤る。

とはいえ『桜宮サーガ』の白鳥さんは『螺鈿迷宮』で桜宮巌雄先生から警告を受けている。
いずれは白鳥さんが誰かの標的にされる、と。
これは『相棒』における右京ら特命係が常に警察上層部から疎まれたりまたは別な第三者から狙われていることに似る。

  • No.401 by 風人  2017-01-02 07:53:52 

『チーム・バチスタの栄光』から『カレイドスコープの箱庭』までおおよそ三年経っているけど、電子カルテに嫌いを示す医療従事者もいるということ。
以前に母が地元の医療センターにお世話になった時も母を診たお医者さまが電子カルテよりは紙のカルテの方が書いているというようなことをおっしゃってたかな。
だけど時代やハイテクの流れがある。
『桜宮サーガ』のシリーズを読むとハイテクとローテクの両方が生きているところもある。
必ずしも最先端やアメリカ諸外国の医療が正しいと思うわけでもないという風潮やむかしながらの堅い意識を持つ医療従事者などもいる。
どこかでそういうのが時に時代の妨げにもなるしまた逆にむかしながらだから信頼あるというのもある。
どう何を受けとるかでそのものの印象は異なる。

  • No.402 by 風人  2017-01-04 18:55:38 

『カレイドスコープの箱庭』で速水先生と彦根先生の会話から察するに彦根先生は今中先生が極北市民病院に不在の時に訪れているような雰囲気。
実際、『極北ラプソディ』で今中先生と彦根先生は一切出会っていない。
今中先生を雪見市救命救急センターに派遣した時にも目に見えない日本三分構想やドクタージェット構想などを話し合ってた可能性はある。
だけど速水先生はどこで世良先生が彦根先生と会ってるのを耳にしたのか。
医療の人間関係は広いようでせまいとあるから何かしら風のうわさは流れてきたかもしれない。

  • No.403 by 風人  2017-01-05 09:00:03 

白鳥さんがなぜ官僚を志した(?)というのも興味あるところ。
『ナニワ・モンスター』での描写からかなりAiに早い時期からこだわっていたのがうかがえる。
基本的に東城医大が舞台になることが多くライバル帝華大についてはまだまだ語られていないのではない。
ある程度は各作品の描写や台詞から拾えるけどイコール具体的に語ってるわけでもないから読者にしたらいささかなぞになる。

  • No.404 by 風人  2017-01-06 16:14:03 

『カレイドスコープの箱庭』において田口先生ほど特異な存在な准教授は現実にはいないでしょう。
だけどいくつかの作品では海堂尊先生は論文ありきな医療界にある種の警鐘を鳴らしてもいる。
かといって論文警視ではないとも思う。『極北ラプソディ』で世良先生の口を借りて論文批判はするけど研究が滞っていた今中先生にひとつのチャンスを与えてもいる。
今中先生の方が平凡な医師として書かれている。田口先生が特殊なだけ(苦笑)。
論文は書いてもいないAiに理解はしてても放射線科医でもないのにAiセンター長を東城医大でつとめAi標準化会議に出席し出席者を束ねないとならない。
Aiの在り方を『箱庭』であらためて説いているともいえる。
もし高階病院長が本当に引退したら次期病院長は田口先生なんでしょうか。『箱庭』では田口先生と不定愁訴外来に口を出す者はいなくなってしまう現状。唯一は兵藤先生だけが犬のようにしっぽを振るだけ。
だけど『箱庭』で白鳥さんと兵藤先生がある程度どのような情報交換をしてるか明らかになったのもおもしろい。鬼の居ぬ間、というのをふたりは巧みに利用してたみたい。
だけど藤原看護師は不定愁訴外来に予期せぬ来客があるたびに出勤しては珈琲を淹れては先生たちの世話をするのも大変な労苦かもしれない一面もまたうかがえる。
大学病院の人間模様がうかがえるのも魅力。

  • No.405 by 風人  2017-01-07 09:21:24 

とりあえず文庫化になってる本から読んでいきたいけどもうかなり読んでるから実質は少ないはず。
『モルフェウスの領域』の続編『アクアマリンの神殿』からでしょうか。
『領域』はある意味SFであり複雑な恋愛モノとも取れる、やや視点が違った作品だった。
西野さんは嫌みな人ではあるけど決して不誠実ではないと思う。頭いいぶん嫌みさがおもてに出てしまうもしくは誤解を生む人物ともいえる。
仕事そのものについては『極北ラプソディ』や『領域』においても真剣そのものがうかがえる。ちゃんと己のテーマを具現化しさらに追求する。
恋愛するとやや厄介にも思える人物ではあるかもしれない。
西野さん涼子さんの関係が輪廻の輪のようになるのか。
『領域』のコールドスリーブ(冷凍睡眠)は人類の夢ではあるけど一方では被験者の人生や権利を奪うものでもある。
それを田口先生や如月翔子、高階病院長東城医大は守らないといけない側面もある。
医療が社会により成り立つ一面はあるけど逆に社会がその進歩を止めたり阻む一面も『桜宮サーガ』にある。

『極北シリーズ』はそのなかでも端的かつわかりやすく描写してた。
市民病院の破綻、地域地方の首長の政(まつりごと)しだいで町や市の運命が左右にふられる。

『領域』のようにコールドスリーブがもしも未来において日常的になれば問題は無数にあふれ出る可能性は否めない。
『桜宮サーガ』は過去、現在、未来の時間を紡いでいる。
無関係な事象はないということ。

  • No.406 by 風人  2017-01-09 05:46:41 

桜宮市に人物が来るのは土地や結界に招かれるからでしょうか。
田口先生をはじめ白鳥さん、桜宮姉妹、斑鳩芳正、加納警視正、幾多の人物が桜宮を訪れては難題や事件あったり。
不定愁訴外来を結界と呼んだのは田口先生、藤原看護師、加納警視正くらいでしょうか。
もとは田口先生が医学生時代にサボりの時にたまたま見つけた東城医大で設計ミスからできた物置部屋。
それを田口先生は自らの職場にして不定愁訴外来にした。

だけど桜宮市にはまだまだ結界がいくつも存在する。
碧翠院桜宮病院があった土地もそう。『輝天炎上』ですみれ・小百合姉妹が潜伏してた場所は殺人事件があったアパートとされる。
『伝説』の城東デパート火災も加納警視正たちによると桜宮の負の遺産。

これらが意味してるものは何なのか。
意味なんてないかもしれないけど。

  • No.407 by 風人  2017-01-10 14:49:00 

『ブレイズメス』で触れられていた富士見の診療所を舞台にした話も見てみたいもの。
不定愁訴外来ができる人は根気ある人やひとの話を聞くことをよろこびに変えないとできないと思われる。
『ブレイズメス』から『極北ラプソディ』の世良先生の患者の対応や接し方あるいは治療ということへの考え方など考えたらまるで別人。
『ラプソディ』では長々と話す患者のおばあちゃんに対して親身に接してはお土産を手にして感謝を示す。
『ブレイズメス』では手術や治療をしたいと意気込みはあるけど患者に向き合ってるかはいささか疑問の余地はあるように思われる。

不定愁訴外来で愚痴や不満を聞くのもひとつの治療行為。患者の精神的ケアは結果的には病院内の精神的ケアにもつながる。
『ナニワ・モンスター』でも浪速府のちいさな町の診療所でもいちおうの効果は示していることからもあらわれていた。

富士見の診療所はどんなところでどんなお医者さまがいて患者にどんな治療をしているのかというのか興味深い。
不定愁訴外来は『田口白鳥シリーズ』でさんざん書かれてるけど他のお医者さんの治療も見てみたい。白鳥さんが『螺鈿迷宮』で患者と話ながらおこない『極北クレイマー』でも姫宮香織も若干はしてたけど。
不定愁訴外来が必要な時代なんでしょうね。

  • No.408 by 風人  2017-01-11 06:55:38 

『カレイドスコープの箱庭』で桐生先生、彦根先生、速水先生のそれぞれの立場でAiをどうとらえエシックスとどう接するかで各々の考え方がわかるのもおもしろい。
彦根先生が年下なのもありある意味、わずかながら本来の性格が彼はあらわれてるみたいでもある。
対して速水先生は救急の立場から物事をとらえるあまりにスピードスターではあるけど世界観に欠けるというところでしょうか。
桐生先生ほどに医療の世界や現実を理解するにいたらない。
桐生先生は一度挫折してることもあるしある種の領域に達しているから語れる。挫折しないと学べないこともある体現者。
手術できない医者が哲学者になるという表現にひとつの挫折と苦労が感じられる。
まだまだ彦根先生や速水先生は島国の医者というとらえかたもできる。
『ブレイズメス』での発表会での帝華大の面々にかぶらなくもない。
いろいろ人物たちの意見に医療の在り方やAiの未来などが見えてくる。
ただ前向きな未来あれば医療の現実が狭くなっている現実も目の前にあるように迫る物事もある。
常に医療が誰のためにあるか、というのを医療従事者は問われ向かうのもひとつの姿勢。

高階病院長は『ケルベロスの肖像』で一度は病院長の地位から退いたものの田口先生にやりこめられ『箱庭』『領域』においても病院長の立場にいる。そして田口先生たちをはじめとしてイヤイヤながらも彼らを導く立場にいる。
『箱庭』においても市民の要望から東城医大がなくなるのを望まなかった市民たちがいるというのもひとつの展望。
だけどなぜ田口先生が次期病院長なのか?という謎は明らかではない。
佐伯前病院長や高階病院長のように手術畑でもないのに。
ひとつ言えるのは出世欲にまみれてないことや病院内をある程度、把握できる立場にいたということ。不定愁訴外来やリスクマネジメント委員会のポジションから適切だったとうかがえる。

  • No.409 by 風人  2017-01-11 07:44:25 

海堂尊先生、『伝説』の自身の半生でチャンスを得てもいるけど逃してもいるが『箱庭』の半生を綴っていますが逃してますね。
『笑っていいとも!』に出演できる機会があったのに逃してしまったというorz。
ただこの時期はテレビ出演を控えてたとあったから出演しなかったのは天啓ではなかったでしょうか。
『伝説』でもだったけどなにかを逃したらまた別なチャンスや機会はおとずれると思われる。
これらの経験は結果的に作品や作品内の表現に生かされているように思う。
田口先生はAiセンター自体は小百合により崩壊したはずなのにセンター長の肩書きは残るみたいになる(苦笑)。
それと似たり寄ったりに思う。

医療ミステリーとして『桜宮サーガ』は作品世界が構築されているから医療関係者や医療に興味ある読者が手にする作品。
注目の度合いがちがうと思われる。
だけどけっして日の目を見ないわけではない。
ちゃんと社会に根ざし問題提議をしてると思うし架空の『桜宮サーガ』世界とこちら側の現実がいくつか重なってると思う。

  • No.410 by 風人  2017-01-11 18:20:19 

加納警視正と玉村刑事のお遍路いくいかないのやり取りは海堂先生のお遍路ミステリーへの憧れでもあり布石みたいですね。
『玉村警部補の災難』に収録されている「エナメルの証言」でわずかに四国が数行書かれるだけで終わっている。
だけどお忙しい合間に日本各地で講演してるから四国にもお越しになってたんですね。
しかし遍路参りは短時間でそうまわれないのも切ないはなし。

  • No.411 by 風人  2017-01-12 05:43:16 

組織の上にひとを使うのと組織の中や下にあって使われる者。
『桜宮サーガ』では田口先生が物語では『バチスタ』から『肖像』までは前者であったけどやや『箱庭』では立場が異なる。
表向きな立場は高階病院長が上司であるが『肖像』のラストに引退を決めてたのに部下である田口先生に言い括られ結局、立場として変わらないまま。その心情は別として……。
だけど『箱庭』では田口先生が助言を求めたことから経験者としてそれなりに適切なアドバイスをせざる得ないし実際にアドバイスをしている。
『モルフェウスの領域』で被験者であるアツシ少年の人生を守るためやこれからの医療のためにも田口先生に論文を書きなさいと指示している。

心情としての立場は逆転していても病院長や以前の経験もあって高階病院長は部下たちをしっかり束ねている。
『肖像』や『箱庭』においては部下に一任するプレッシャーや責任の重さについてはやや吐露した心情から組織の上に立つ者の苦労がうかがえる。
だけど『箱庭』では田口先生から助言を求め『領域』ではこれからの医療のためやアツシ少年のために指示や示唆ができるおこなうのは人の上に立つ資質があったのではと思われる。
バブル三部作の過去の悔やみや省みたことのあらわれでしょう。
勝者なだけでは人の上に立てないことの具現ともいえる。
ただの腹黒タヌキではない。底が深い、と思う。

  • No.412 by 風人  2017-01-13 18:58:04 

『桜宮サーガ』シリーズはあらためて読むと謎が解けるところもあるけど謎が深まります。
『玉村警部補の災難』に収録されている「四兆七千億分の一」に出てくるネットゲームの話題で被疑者の馬場利一がバンバン、ヘンロは玉村警部補。
ユナちんはもしかしたら『極北クレイマー』に登場した布崎夕奈の可能性あり。モズクは不明。
ドミンゴは『箱庭』で名前だけ出たドミンゴ教授でしょうか?
海堂作品特有の符号や他作品への伏線はあると思う。

  • No.413 by 風人  2017-01-14 07:44:18 

『箱庭』で田口先生の肩書きにリスクマネジメント委員会はともかくAiセンター長と電子カルテ委員会の肩書きを残したのはいざという時のための措置なんでしょう。
もしその肩書きを必要とする難題や事件があった時のために慣れた人物が組織内で動きやすいのもあるし反感を持つ人物がいたとしても反発が少なくスムーズでもある。
肩書きを置いておくことで長く組織内の環境に抑止力にもなる利点があるともいえる。
新たに肩書きをもらった人だと事情を聞くのさえ厄介だろうし余計に手間がかかることもある。
『桜宮サーガ』はけっこう組織内に良くも悪くも組織ね利点と悪癖どちらも等しく描写されている。肩書きある人物はそれなりに本人が厄介に思えばこそまわりからも面倒だけど結果的には組織を守ることにもなる。

  • No.414 by 風人  2017-01-14 10:03:49 

組織において肩書きが必要不可欠は否めない。
Aiセンター長の肩書きを『肖像』の時点で消していたらまた一から行わなくてはいけない。あるいは引き継ぎにしても同様。
電子カルテ委員会の肩書きは『バチスタ』の時点では生きてたでしょうしほぼ電子カルテに移行した時点で役目自体はその時に一度は終えた。
だけどニ、三年の間に電子カルテの目に見えない問題が『箱庭』で浮き彫りにされた。
高階病院長が田口先生からその肩書きを消さなかったのもひとつのリスクマネジメントや組織の上に立つ者の判断。
不可避とされない事態への予見であり保険。

もうひとつは田口先生が肩書きによる権力を無駄に行使しない人物というのもある。
職権乱用にいたることはしない人物だからこそ肩書きを温存し生かすことができる人物ともいえる。白鳥さんがいることで悪評がついてしまうのはおまけみたいではあるが。

田口先生は兵藤先生が適任と思ってるらしいけど彼みたいに組織内を廊下トンビが如くうろうろされたら情報漏洩になるおそれもあると思う。
知らないですむ情報があるなら越したことはないしよけいな軋轢を生むことはない。
田口先生がAiセンターやリスクマネジメント委員会、電子カルテ委員会の長が適任なのは彼ひとりが背負うことで組織が安全に運営できる。
よけいなことを漏らさないだけそれは組織内にとっては信用に代わる大きなこと。目には見えてあらわれるわけではないけど地道に長い目ということでしょう。

  • No.415 by 風人  2017-01-16 14:50:54 

『バチスタ』以降、海堂尊先生の『桜宮サーガ』シリーズよく読むようになったけど医療の世界にもいろいろな事情があるということ。
個人的に勉強になったのは『イノセント・ゲリラの祝祭』の悪辣な官僚の骨抜き政策や案など。
『祝祭』では白鳥さんと彦根先生が打破しますけど(苦笑)。『祝祭』の霞ヶ関、厚労省の描写や八神課長と白鳥さんの駆け引きが面白い。
『祝祭』から『ナニワ・モンスター』へとつながる医療庁の旗揚げ、日本三分計画。『極北ラプソディ』にもつながるいろいろな伏線。
『ナニワ・モンスター』のインフルエンザウィルス“キャメル”による中央と地方の経済戦争。
『極北』シリーズ(『極北クレイマー』『極北ラプソディ』)は地域地方の市民病院の経営がいかに大変か伝わるシリーズ。一市民としては『極北シリーズ』がもっとも共感した作品。
バブル三部作のうち読めたのは『ブラックペアン』『ブレイズメス』だけど昭和と現在では医療の形態やニーズがちがうというのもある。
『極北ラプソディ』であったけど科学技術は未来にむけ飛躍的に進んでるけど実際に使う人間はさほど技術ほどに精神的に進歩していない寒々とした現実や現状。
医療という存在がせまくなっているかもしれない現実。
いちがいに“患者のため”という定義にしても医者も患者もそれぞれ求めるものはちがう。
不定愁訴外来みたいな存在はまた必要と思われる。

  • No.416 by 風人  2017-01-18 18:14:59 

『カレイドスコープの箱庭』の冒頭はいくつか触れられている。
かつての桐生先生に思いを巡らしまた『肖像』で失墜したはずの東城医大が市民の声という形の要望で存続していること。
桐生先生がドミンゴ教授の代理という形で一時的に来日というのも『田口白鳥シリーズ』が終わっていることの証し。
高階先生が引退したいというのも組織のトップの重責もあるでしょう。大学病院の職員八百名の人生を背負い病院という職業から患者の命は当然とし医療ミスから患者の遺族から訴えられる危険もある。
だけど前病院長である佐伯清剛から引き継いだ目に見えない理念や信念、教えなどあるでしょう。

しかし『肖像』のラストや『箱庭』での様子を見たら田口先生が病院長になると表向きはガラリと変わる雰囲気はありそう。だけど藤原看護師や黒崎教授などバブル三部作からの人生が引退しない限りはそう変わらないともいえる。
『箱庭』では論文をろくに書いてない田口先生を本来なら黒崎教授が叱るなりしないといけないけど『肖像』のラストで田口先生の背中を推したことで面と向かって言えなくなったのも悲喜劇。
結果的に論文を書くのは『モルフェウスの領域』までおあずけ。
大学病院の時代ごとの環境や人材不足などいろいろな要因があるというのも背景でしょうね。
田口先生みたいな人物は現実にはいないでしょうけど海堂先生は一部の本で論文ありきの在り方をまた批判もしている。

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