桜宮サーガ雑談

桜宮サーガ雑談

風人  2014-11-30 06:00:58 
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『チーム・バチスタの栄光』から始まる田口・白鳥シリーズに発端し架空都市桜宮市を中心に過去・現在・未来、東京霞ヶ関や北は北海道の極北市、ドイツのブリュッセルまで広大に広がる桜宮サーガを雑談し語る部屋

トピ主はまだ読んで一年と満たないですが桜宮サーガを語れる方がいてくれたら嬉しいです。男女年齢に関わらずお越しください。

『桜宮サーガ』のシリーズなら小説・映画・ドラマ・漫画などいずれでも話題は構いません

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  • No.216 by 風人  2016-06-02 09:40:18 

『極北ラプソディ』の世良先生と『ケルベロスの肖像』の高階病院長の言葉が天城雪彦という人物の存在で点と点が結びつきそうですね。
おそらく高階病院長は天城雪彦が植えようとした“さくらの樹”をなんらかの事情で取らざる得なくなり時が経った後に後悔の念が人知れずあり、また世良先生もその事が原因か否かわからないけど東城医大を去るきっかけかあるいは高階病院長か誰かに復讐の念があったということでしょうね。
『桜宮サーガ』は気をつけないと人同士の点と点の人間関係はわからなくなる。
新しく読もうとした時にようやく思い出す。もちろん物語一作品でも楽しめるつくりは納得するけど、ささいなところから物語が広がってる。

  • No.217 by 風人  2016-06-02 17:13:45 

『アリアドネの弾丸』や前後のシリーズを考えたら高階病院長と兵藤くん、そして藤原看護師は結託して田口先生を説得もしくは懐柔してるおもむきある雰囲気。
とりあえずまずは高階病院長から田口先生に旨を伝えながら優柔不断、出世に興味ない彼に後押しするために高階病院長はすぐさま兵藤くんに再び旨を伝えて彼から田口先生を懐柔、兵藤くんが失敗した場合は藤原看護師が控えてる二段構えだったのではと推察できる。
そもそも『アリアドネの弾丸』冒頭に至ってはほんの15分ほど前の話題がすぐに兵藤くんに伝わるだろうか?
考えたくはないけど病院長室の室内か側にいた可能性も考えてしまった(( ̄_|(笑)。
だけどそうでないと“廊下トンビ”の異名もないわけだし。
『モルフェウスの領域』でも如月翔子、桂奈、田口先生以外でアツシ少年の覚醒を知ることができたのは高階病院長、深読みしたとしても藤原看護師。
兵藤くんは高階病院長、藤原看護師からふたつの情報ネットワークがあってもふしぎではない。

  • No.218 by 風人  2016-06-03 06:00:42 

司法と医療の対立を『田口白鳥シリーズ』を軸に考えたら司法側がやり過ぎた印象を与えてる感じもある。
もちろん作品内では斑鳩室長の意向が目立つ。『アリアドネの弾丸』で彼が強く出れないのは加納警視正に貸しがあるから。もし賃借関係がなかったら高階病院長はこの時点で殺人犯として起訴された可能性は充分にあった。
田口先生の白鳥さんをはじめとする人間関係の良さが結果的に東城医大を救うことになる。
加納警視正がどの程度かは別にしても東城医大にシンパシーあるのも事実。
『桜宮サーガ』は相手の足元をすくったり転ばしたりの連続的な物語。医者、官僚、市民に関係なく。
けど『アリアドネの弾丸』で斑鳩室長は過激にしすぎたと思う。北山錠一郎、宇佐美警視というふたりを犠牲にしても東城医大は潰れなかった。
官僚的発想からしたらこの人物を危険視して後々、“ハシゴ外し”された可能性もあるんじゃないか思う。
『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』でこの人もまた表舞台に出たことで警察庁内部から不満の声がないとは思えない。ある程度は封殺されたかもしれないけど先読みしたら斑鳩室長がいることで封殺してもクーデターないし権力が時の流れで変わるとも言えない。
高階病院長を『アリアドネ』『ケルベロス』と二度に渡り苦しめたものの白鳥さんのコールドスリープ法案で未来科学センター設立で東城医大はなんとかやっていけてるよう。
『モルフェウスの領域』での霞ヶ関の人事が変わってる可能性もある。

  • No.219 by 風人  2016-06-04 09:46:38 

Aiの理念や理想、提言などは『ケルベロスの肖像』以前にある程度、綿毛となって世界に飛んでたともいえなくもない。
高階病院長、白鳥さん、田口先生にせよ大学病院や地域地方、国レベルでしか考えが至らなかったとも言える。人間は個人レベルを基準に思考し判断するからやむを得ない(--;)。
『アリアドネの弾丸』から『ケルベロスの肖像』までたいして時間が経ってないことから東城医大側が功を焦ったとも取れる。

どちらにせよ医療と司法の対立が『桜宮サーガ』世界には現実以上にあるかもしれない。
それによって日本地図だけでなく世界地図を変える壮大なスケールがあるかもしれない。

『極北シリーズ』も極北市や雪見市も桜宮市同様に一地域でしかない。
だけど、医療を変えようとする人材や日々、医療に携わりながらそこから医療改革を模索思考しようとする者たちはいる。

斑鳩室長が桜宮小百合、南雲忠義以外にも駒は控えてあるでしょう。
斑鳩室長は読むたびに闇が深い人物の印象を与える。
『アリアドネの弾丸』で東城医大が助かったのは加納警視正(と玉村警部補)がいたからこそ。
加納警視正自体が後々の歴史で官僚か医療寄りになるかでまた歴史も変わるんでしょうか。
白鳥さんたちの同期であるスカーレットこと小原なる人物も私が読んだ範囲では名前しか出てきてないけどどちら寄りの人物か興味ひく。

『モルフェウスの領域』などのほんの少し先の未来を描いた作品で霞ヶ関にたぶん動きがあったと前向きに思いたい。

  • No.220 by 風人  2016-06-05 09:16:26 

斑鳩室長ら官僚が『アリアドネの弾丸』で失敗したのはひとつは人選にあるかもしれない。
宇佐美警視は桜宮小百合に知らなかったから失礼な口を聞いてる。
桜宮署の人たちはもちろん玉村警部補など含めて存じてる。おそらく加納警視正も桜宮市に派遣されたことから桜宮巌夫や桜宮一族のことは熟知してたと思う。

だけど宇佐美警視は知らなかったとみえる。これは彼が警察官僚なのに知らなかったのは官僚として抜けてたのではないかと思う。
表現としてよくないけど官僚としては優秀ではなかったかもしれない。

『アリアドネの弾丸』でそれこそ桜宮市の医療を握る東城医大を陥れるなら桜宮市にも東城医大にも精通した人こそが適任だったと思われる。

もしもという可能性だけど加納警視正が敵に回ってたらたぶん白鳥さんでも手が出せなかったと思われる。そんな可能性もなかったとは言えない。

  • No.221 by 風人  2016-06-05 16:31:38 

『アリアドネの弾丸』で白鳥さんが普段、仕事をしてないように田口先生は思ってるみたいだけど『イノセント・ゲリラの祝祭』『ケルベロスの肖像』を読む限りは普段は公務員してる。
おそらく霞ヶ関のなかで上手にやってるんだと思われる。『イノセント・ゲリラの祝祭』『ケルベロスの肖像』でも坂田局長と姫宮香織を上手にコントロールしながら仕事してる雰囲気や描写ある(←雰囲気か)。
『ケルベロスの肖像』ではバックヤードに回りその描写あったらことでけっして不真面目とは思えない。
白鳥さんの家庭描写などないからそこはわからないけど。

  • No.222 by 風人  2016-06-06 03:31:34 

白鳥さんは官僚という範疇から外れた人物ではあるけど、斑鳩芳正室長も範疇から外れた人物と思う。
この辺『桜宮サーガシリーズ』の官僚の人事もおそらく一般社会からズレてると思う。
白鳥さんもたしかに危険な人物だけど、斑鳩室長も匹敵するかそれ以上に危険な人物と思う。

  • No.223 by 風人  2016-06-06 04:12:43 

『モルフェウスの領域』で未来科学センターが白鳥さん発案のものでなおかつ桜宮市に誘致され東城医大の手にある。
『モルフェウスの領域』だけを読んだら田口先生と白鳥さんが袂を分けた方に見えて早とちりしたけど『ケルベロスの肖像』を読む限りはそんなことはなかった。
『モルフェウスの領域』で白鳥さんの名前は出てこないから。
シリーズ全体を把握するにはほんと労力いる。
一見、関係なさそうな話が実は別の物語でメインを飾る伏線が『桜宮サーガ』はよくある。
それに関係ないように人物が動いてるように見えて実はこうだったというサスペンスのお決まりみたいなのもある。

白鳥さんは『モルフェウスの領域』においてもバックヤードにまわりながら東城医大や未来科学センターを手助けしたということだろうか。
八神課長を再びハシゴ外ししながら?
まだまだ物語に書かれてないことあるんでしょう。

  • No.224 by 風人  2016-06-06 06:31:00 

『アリアドネの弾丸』から察すると『極北クレイマー』での三枝先生逮捕で斑鳩室長らの策は何らかの形で失敗したんでしょう。
加納警視正から斑鳩室長に釘を刺されたような発言があったことから広崎広明の奥さんと赤子が亡くなった一件は清川先生、水沢教授たちによってあらためて検証されたとか?
その辺、具体的に『アリアドネの弾丸』では詳しく書かれてないため想像の域は出ない。
『極北ラプソディ』のなかでも三枝先生の一件は書かれて清川先生たちが働きかけしているとあった。
『極北ラプソディ』から『アリアドネの弾丸』まで間にも司法と医療の対立の物語があるんでしょうか。

  • No.225 by 風人  2016-06-06 09:24:13 

黒崎教授はたしかに高階病院長、田口先生、速水先生らを疎ましく思いながらも東城医大を守りたい志しや信念は秘めてるんでしょうね。
そうでないと個人的感情を越えたところで組織運営しないと医大そのものが崩壊しかねないだろう。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』では『伝説』による速水先生の所業(手腕)による鬱憤や鬱積ありながらも沼田先生をなだめ自らも言いたいことがあるであろうなか堪える姿勢。
『伝説』での城東デパート火災の一件で速水先生が“神に選ばれた”ことに納得はしないながらもあの場で自分が凡人と理解したのか。
けど東城医大を守るためには『アリアドネの弾丸』で院長代行の任に着く。そんななかでもちゃっかり作中ドラマ「霧のロミエッタ」にエキストラ出演してしまう名演ぶり。
おそらく東城医大のNo.2の座に甘んじながらも院内組織を保つために敵対しながらも高階病院長を内心は認め速水先生も東城医大からは離したくない思いも不器用ながらある。
たぶんわざと東城医大内では強面な姿勢やポジションと理解しながら医大を支えてるんだと思う。
高階病院長や田口先生たちからは院内ではあえて意見対立としてのポジションでいることもNo.2の器と思う。

黒崎教授みたいな立場だとあえて憎まれ役をしなくてはならないから高階病院長とはちがう立場や気持ちで気苦労が絶えないと思う。

  • No.226 by 風人  2016-06-06 13:49:31 

『桜宮サーガ』シリーズは基本的に書き手である海堂尊先生がもと医者であるから医療従事者側が主体ではある。
もしくは患者、あるいは我々一般市民。

だけど、斑鳩室長たち司法側にもある種の彼らなりの信念や正義はあるんでしょう。
だけど、そのために『アリアドネの弾丸』では一技術者である友野くん、癌患者であった北山錠一郎そして宇佐美壮一警視が犠牲になってる。
友野くんはたまたま『アリアドネの弾丸』でその場に居合わせた不幸な人物ではあったけど北山錠一郎、宇佐美壮一警視ふたりを犠牲にするほどだろうか考えさせられる。

“北の発動”では訴えた広崎広明も逮捕された三枝先生、どちらも被害者に思えてならない。
広崎広明は賠償金や慰謝料というお金を求めてたわけではなく“真実”を知りたかった一市民。
一市民であるが故に西園寺さやか(桜宮小百合)につけ入られる隙があった。
『ケルベロスの肖像』の飯沼さんもまた同様。
物語内に限ったことと思うが、斑鳩室長や桜宮小百合の手段は情に訴えながらもやり方はなりふり構わない印象もまたある。

  • No.227 by 風人  2016-06-07 03:59:34 

『極北ラプソディ』で広崎広明はほんのわずかしか出てこない。
三枝先生逮捕の原因でありながらまた自らも極北市民病院の実情を変えてしまったことを内心、悔やんでるのではないかと思う。
生者は診ないで死者はみるという世良先生の意向で変わってしまった市民病院。
『極北クレイマー』で広崎広明自身が知りたかったのは“真実”だったけどそれがパンドラの箱にも匹敵するとは思いもよらなかったと思う。

『極北ラプソディ』で世良先生により極北市民病院がつぶされるかもしれない今中先生の心情。
けど世良先生がなぜ医療債権者という変わり種になったのもまた謎。
訴えたいものがあるというのは伝わる。だけど方法が間違ってたのでは?と神威島の久世先生から諭される。
世の中が寛容であるのを久世先生は知ってる人物。
『極北ラプソディ』自体は極北市民病院が変わるのではという未来への兆しを持ったまま物語が終わりを迎える。
作品中で今中先生が思いきった手術ができるというのも一端でありもしかしたらそれが未来の極北市民病院を救う経験になるとも言える。

  • No.228 by 風人  2016-06-07 04:45:20 

『ブラックペアン1988』から『ケルベロスの肖像』まで高階病院長が患者の体内にペアンを残したことを悔やむのは相当悔やみ葛藤あったと思う。
だけど『ブラックペアン1988』を読んだ限りでは患者を救うためにペアンを残すしか判断をはなかった。
これを“医療ミス”と呼ぶかどうかがひとつのテーマでもあったと思う。
もちろん患者や患者の家族から医療ミスと呼んで当然かもしれない。

だけど体内からペアンを取り除く技術は『ケルベロスの肖像』の時代になってもおそらくなかったという高階病院長の言葉。
患者が生を全うしたことが唯一の救いではあったと思われるのに過去を掘り返した桜宮小百合。
『ケルベロスの肖像』で小百合がしたことは患者の家族の傷を戻すようなものであったようにも思われる。

『桜宮サーガ』は“生老病死”をどの立場や考え方で読む方で変わってしまう。それは現実にも言えること。
『ケルベロスの肖像』で過去の一件から批判を受け止めるしかない高階病院長。
よかれと思った過去の手術が現代に批判としてよみがえってしまう。

『極北クレイマー』の三枝先生のように逮捕とまで至らないまでも東城医大そのもの存在を揺るがすほどの一件。
共通してるのはよかれと思ったことが医療従事者や患者や患者の家族を苦しめ、そして市民を救うための病院が危機的状況に追いやられること。

『桜宮サーガ』の各作品を読むと“医療が誰のためにあるか”というのを考えさせられる。

  • No.229 by 風人  2016-06-07 05:40:18 

『マドンナ・ヴェルデ』でもヒロインの母親こそが実のヒロインだったと言える。
彼女は代理出産で生まれてくる赤子の立場や将来を考えて彼女は物語の中を動きまわる。
代理出産は時おりニュースになるけど責任の所在はわかりにくい。
立ち会った産婦人科の医者、あるいは代理出産を求めて子どもを欲しがる人たち、また代理出産に協力する人たちなどいろいろな立場や境遇ある。
『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』を読んだ限りではいちがいに割りきれるものではない。

なにより男性の立場からは見守って共に歩くか最悪逃げてしまうこともある。

『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』は表現が同じ海堂尊先生が書いてるはずなのに描写が実に女性的。
『伝説』にもあったけどほぼ登場人物は女性がメイン。清川先生など一部は男性出てくるけど。

代理出産もまたわかりにくい問題。

  • No.230 by 風人  2016-06-07 06:29:05 

医療の進歩と人間の精神は必ずしも比例しない。
癌は常にあるものだしコールドスリープ(冷凍睡眠)もまた医療のひとつの未来の担い手。
だけど何かをしたら何かで足を引っ張る。それが法律だったり人間の心や気持ちだったり無数にあると思う。

『極北シリーズ』は市民感覚だなと思う。だから好きなシリーズ。
市民病院だけでなく劇中の会話程度ではあるけど診療所などにも触れられてる。
市民の足元を市民病院や診療所あって助かってる一面もある。
だけど予算がつかないと救急医療に対応できない現状ある。
『極北ラプソディ』で世良先生は黒字にしても結局、それはなかなか実を結ばない現実。そこは市役所の対応如何で左右される社会のむずかしさ。

見えない駆け引きや交渉がないとも言えない。世良先生は直接マスコミに訴えるよりネットを通して訴えるのもひとつの方法。

だけどおそらく久世先生は後藤先生と共に(ネットを通して)それをたぶん見てたんではないでしょうか。世良先生に悲壮感がありすぎことを感じてたから諭したんでしょう。

  • No.231 by 風人  2016-06-07 12:44:28 

『輝天炎上』をようやく見つけた。
『ケルベロスの肖像』で天馬大吉くんがいくぶん大人じみてたからミッシング・リンクとなったところがようやく読める。

だけど海堂尊作品はたまにあとがきを気にしてしまうようになった。
本好きな人たちがあとがきから読むというニュアンスもわかる。

海堂尊作品は物語のわかりにくいところなどがあとがきでほどよくわかりやすくなってるからあとがきもおもしろい(笑)。

  • No.232 by 風人  2016-06-07 14:02:54 

『桜宮サーガシリーズ』にはところどころ海堂尊先生が『ゴジラ』『ガメラ』『ウルトラマン』のリアルタイム世代なのかたまに医療の現実と未来を登場人物たちが悩み考える心情描写のなかでそれらの空想作品の名が時々出てくる。

70年代に空想として描かれてたことが徐々に現実に追いついてきてる現実もある。

田口先生や今中先生が思うことは医療に携わる者たちの気持ちそのままでしょう。

  • No.233 by 風人  2016-06-07 16:18:23 

『輝天炎上』相変わらず天馬くんのモテぶりは変わらないし冷泉深雪さんのキャラはおもしろい。
冒頭から清川司郎が出てきて『ひかりの剣』から何年も経ってるのが伝わる。彼が教授になってその後、笹井先生と島津先生のお馴染みな面々の登場。
笹井先生のお話だと解剖医が忙しいか否かはそのひとの人柄や個性な感じする。読んでると天馬くんたち医学生の気持ちにちょっとなれる(笑)。
解剖医で西郷綱吉みたいに面倒な会議の時は参加しないがらも多数が選ぶ出世街道ではなく少数が選ぶ出世街道を目指す人もいる。
南雲忠義先生も解剖医だけどこの人物もわからない人物。

天馬大吉くんはさりげなく田口先生の存在を意識しながら避けてる描写ある。
だけど恋愛面では恵まれてるだけマシな感じ。別宮葉子さんに冷泉深雪さん。両手に花。

『桜宮サーガ』で花房師長は何年も速水先生を追いかけてたり田口先生や今中先生が恋愛に縁が少ないことを考えたら天馬大吉くんは恵まれてる方だ。

  • No.234 by 風人  2016-06-07 16:23:25 

訂正、花房師長が追いかけていたのは世良先生(『極北ラプソディ』から)

  • No.235 by 風人  2016-06-07 19:23:18 

『輝天炎上』を読むと天馬大吉くん達医学生の若さ溢れる気持ちや心情を書きながら『ケルベロスの肖像』のもうひとつの一面が記されてる。
“死因不明社会”という問題を課題にしながら天馬くんと冷泉深雪さんはそれぞれふたり一緒に各先生たちにアプローチしてゆく。
彦根くんや陣内教授などに出会いながら解剖医の実態やAiが在るべきところはどこか彼らなりに考えてゆく。
そして田口先生との出会い。はじめは舐めてかかってたら田口先生は思わぬところからパンチを放つ。Aiセンター会議には出席を取りつけるものの田口先生に言い負かされてしまう印象。
だけど『ケルベロスの肖像』の田口先生側、『輝天炎上』の天馬大吉くん側、読んだ感じだと双方引き分けという感じもする。
ただ高原美智さんのことについては医学生である天馬大吉くんより医者である田口先生の方が配慮ある。
延命治療という言葉も出てきた。それは患者が心から望むかどうかによると思う。

そして西園寺さやかこと桜宮小百合、こちらも『極北クレイマー』で書かれなかった裏側が書かれてた。
小百合は桜宮一族の怨念を背負って生きてるとしたら哀しい生き方に思える。

  • No.236 by 風人  2016-06-08 04:09:27 

『輝天炎上』をざっと読んだら『ケルベロスの肖像』の裏側。
実は……だったいうことが多く、かつての碧翠院もしくはAiセンターが桜宮一族と東城医大を中心に長年の憎悪や感情などすべてのひとの気持ちが一点に集められた感じ。
実は生きていたすみれ先生、『ケルベロスの肖像』のラストで天馬くんがなにも語らなかったのもわからなくもない。
だけど東城医大側がこれでは何も知らなかったことが多いと思う反面、知らないこと特に田口先生にとってはすみれ先生がもし生きてたと知ったらと思うと“知らないまま”であった方がいいようにも思う。

そして『ケルベロスの肖像』で利益造反と田口先生の依頼を断った城崎さん、この人も桜宮一族だったとは。
小百合の怨念たるや凄まじいけどそれを防ごうとするすみれ。

桜宮小百合は徹底して東城医大だけでなく遠い身内とはいえ三枝茉莉亜先生や三枝先生たちまで巻き込むのは真に恐ろしいのは女性の情念。
まるで怪談話でも見てるかのようにそこまで憎みきれるものか感じる。

桜宮小百合は死者の名前を騙り生者を巻き込む。
小百合が騙ってた“西園寺さやか”もかつて亡くなった人物とは。

東城医大と桜宮一族の因縁は桜宮市だけでなく遠く北海道にまで実は及んでた……。
いやもしかしたら世界中にまで小百合は怨念を広げるかもしれないと天馬くんは懸念してた。

『輝天炎上』はあまりにあれやこれや情報がありすぎる。

  • No.237 by 風人  2016-06-08 05:25:11 

東城医大ひいては田口先生にとっては知らない方がしあわせとも言える。

『輝天炎上』を読む限りでは読者にとっては衝撃が大きい。

天馬大吉、桜宮小百合、桜宮すみれ、と『ケルベロスの肖像』だけでは東城医大 vs 桜宮小百合に見えた関係が実は隠れた三すくみな関係だったとは……。

医療と司法の対立のように見えながら実は桜宮市に長く続く怨念や怨恨が人々を呼び過去をさらけ出した。
だけどそれは高階病院長だけでなく桜宮すみれと小百合でもあった。

天馬くんが別宮葉子さんと冷泉深雪さんと待ち合わせした場所が桜宮三姉妹像の前だったというのも情景描写ではなく伏線だったとも思われる。

因縁が恐ろしいくらいに絡み合いAiセンターに収束してゆく。

盗聴機を仕掛ける描写は妙に生々しい。

  • No.238 by 風人  2016-06-08 11:18:58 

『ケルベロスの肖像』の田口先生、『輝天炎上』の天馬くん。
ふたりはある意味、表裏一体に書かれてたかもしれないですね。
『ケルベロスの肖像』では田口先生は自分ももしかしたらサボッてた学生時代を過ごしてた天馬くんみたいに留年したり放校が近いとか言われたりする学生になったかもしれないと思っていたり、対して天馬くんは田口先生を避けながらも評判を耳にしながらいざ相対するとはじめは大人を舐めた態度をして序盤から中盤にかけては優勢なものの、ある一言でグッとこらえなくてはならない。
見方を変えればこの駆け引きは高階病院長と田口先生みたいなものにも相似する。
ただ田口先生ははじめから相手に自らの要求を口出すほど腹黒くない(と思う)。
天馬くんは物語の後半でそう決めつけてたけど。

『桜宮サーガ』では現実と同じで自己と他人の評価は必ずしも重ならない。

たぶんこれは桜宮すみれ小百合姉妹にも言えると思うけど、このふたりには自分を客観視する環境がなかったのではと思える。
碧翠院の閉ざされた環境や施設、あるいは桜宮市以外のことを知ってても北海道の南雲監察医務院、東京のマリアクリニック。
東京自体を人が多いところと他人事そのままに感じる小百合。
ドライなところもある。

ひかりに生きてる東城医大にしてもバチスタ・スキャンダルに限らず多くのひとやモノを背負ってると思う。

  • No.239 by 風人  2016-06-08 13:43:50 

田口先生が人としても医者としてもまっとうなのはシリーズ全般(個人的に読んだ範囲ですが)出世欲や上昇志向がなく凡人に近いところと思う。
凡人に近いがゆえに白鳥さんみたいな変人官僚や速水先生みたいに天才肌な人とも付き合え、後輩で生意気であるけど彦根くんとも付き合える。

それは院内の人間関係や患者についても同じようなことが言えると思う。
不定愁訴外来、別名愚痴外来とも呼ばれる本来の職場。
心の治療に近いところがあり患者さんから愚痴を聞いて最適な治療に導く。
救急対応や直接的な治療はすることはないものの患者の心のケアをモットーとする。

これを田口先生の人柄や経験、人間関係などを踏まえたら東城医大には必要不可欠な人材たる素質はある。
速水先生みたいに“神”に選ばれたわけでもなく世良先生みたく流浪でもなく一見、なんの才能がないように見える(東城医大での評価も変わらない)。

だけど凡人的な立場や資質、聞き上手であるがためにリスクマネジメント委員会や厚労省の会議などでは場の空気が読め適切な方向へ導ける。
中間管理職的でありながら操り操られが無意識(無自覚?)にできてる節もある。

『輝天炎上』で現役医学生である天馬くんからしたら目上だから高階病院長の懐刀や大人としての接し方から嫌な人に見えてもそれは社会での人間付き合いだからしかたない。

凡庸であるからこそ物事を分け隔てなく見れる目を備えてる。
バチスタ・スキャンダルから始まる幾多の事件や難題も常識を常に持ってることから意見できる。

本人がおそらくは自分が持ってるであろう秘められた能力や才能に無自覚だからこそ生き抜いてるといえる。
仮に自覚しても田口先生の人格なら自惚れることはないと思いたい。

  • No.240 by 風人  2016-06-08 17:28:33 

彦根くんとシオンさんは『ケルベロスの肖像』で生きる道がちがったでしょうか。
恋愛関係ではなかったふたりだけど、Ai関係や医療を志すなにかで気持ちは一緒だったように思われる。
西園寺さやか=桜宮小百合によってシオンさんにしたら自立を促された前向きな解釈もできる。
真実を隠すことは画像診断に関わる者として見逃すことができなかったでしょう。

  • No.241 by 風人  2016-06-09 05:43:02 

『ケルベロスの肖像』で彦根くんを操ってたのは城崎さん。
だけど城崎さんから依頼を本当に受けてたのは桜宮すみれ。
すみれは小百合の復讐を止めたかった。だけどAiセンターは破壊された。

田口先生がどれかの作品であったけど医療の世界は広いようで狭い。

これは『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』の表裏にも言える。
物語のからくりを知ればそれはたいしたことはない。
だけど、実際の人間関係は感情や怨恨、利害などで複雑に絡み合っている。桜宮市に集約され収束されてゆく。

Aiセンター破壊で真実に近かったのは桜宮小百合すみれ姉妹、天馬大吉。
田口先生がいつか真実を知ることがあるのだろうか思う。
小百合はともかくすみれが生きていたのを未来に彼が知ることがあるのか。

天馬くんは若いわりに口はそれなりに堅いからおいそれと田口先生に伝えないでしょう。
彼もまた桜宮姉妹に心をとらわれたひとりだから。

とはいえ天馬くんの恋愛関係は順当なら別宮葉子さん冷泉深雪さんでしょうね(笑)。

  • No.242 by 風人  2016-06-09 06:42:56 

『桜宮サーガ』で医学生である天馬くん、あるいは医学生だった時代に思いを馳せる田口先生や今中先生の描写は海堂先生の実体験によるところがあるんでしょうね。
麻雀ばかりしてたり適当にサボッたり論文を途中で書き留めたりなかなか認められなかったりと『伝説』にある自身の史実と医学生、外科医、大学院など順風満帆ではなかった印象。

田口先生も天馬くんも適度に不真面目さは兼ね備えてる。
今中先生は凡庸ではあるけど凡人であるがゆえに物事を素直に見れて答えを“心”に秘めてる。それを速水先生に見抜かれてた。

ある意味、田口先生も今中先生もふつうの人に近いけどそんな人物を“主役”に据えるのは才能と思う。

  • No.243 by 風人  2016-06-09 07:09:50 

田口先生は自分をはじめは自分を客観視できてないけど幾多の事件や難題のなか東城医大で自分がどう見られてるか少しずつわかってくる。
ただし読者ほどではなくほんの少し自覚したというほど。

黒崎教授や神田技師などの関係は比較的に明確に見える。

『アリアドネの弾丸』での対マスコミ対策会議では不本意ながらも田口白鳥組に協力してる姿勢、神田技師も登場当初は失礼な態度ではあったけどしだいに頭を下げる態度は見せる。

院内対立は組織を保つために“必要悪”として必要なんでしょうね。

高階病院長は病院長ではあるけどワンマン体制にはしてない。
田口先生速水先生島津先生らを巧みに操りながらも黒崎教授や沼田先生たち一派にも配慮はしてると思われる。

黒崎教授は長年の付き合いだから疎ましく思いながらも院内のバランスを取るために減らず口を向けながら沼田先生らを押さえコントロールしてると思う。No.2のポジションだからか。

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』を読んだら組織や世界に生きる表裏な人たちがそれぞれ見えてくる感じはある。

田口先生が天馬くんたち医学生にどう見えてくるかというのも将来の起点なんでしょうね(苦笑)。将来、いまの高階病院長みたいに腹黒タヌキみたいなあだ名をつけられそう。

  • No.244 by 風人  2016-06-09 18:23:54 

『輝天炎上』で桜宮小百合が宇佐見警視の存在を思い出すのは女性としての心や感性からかあるいは悪意からか。
読むと悪意の方が強く思える。
小百合は負の力を背負いすぎてるのが読んでいたたまれない。

  • No.245 by 風人  2016-06-10 09:47:03 

高原美智はなぜ死の間際に天馬くんのそばですみれの名を出したんだろう?

単に死ぬ間際に見た幻ならそれは美徳だけど、もしももしかしたらすみれが生きてることを密かに知っていた(知らされていた?)あるいは生きてるなかでの第6感みたいなものがあったとか。

『輝天炎上』のなかですみれ側から書かれた物語にも東城医大に入った描写はない。

なぜ美智さんはすみれが生きてるのを知ってんだろうか?
人間の“生老病死”にはまだまだわからないことあるんだろうか。

  • No.246 by 風人  2016-06-10 12:15:40 

桜宮小百合すみれ姉妹はおそろしいくらいに行動が似てるのが『輝天炎上』で浮き彫りにされてる。
似たような時期に同じアパート流星荘にいながら微妙に異なる。
すみれは小百合から東城医大破壊を阻止したいと思いながら自ら破壊したいと願う。
女性の情念はおそろしい。

清川吾朗・志郎兄弟はそれぞれちがう道を歩んでるみたいなのに。

生き方がちがう兄弟もいれば似てしまう姉妹もいるということか。

  • No.247 by 風人  2016-06-10 17:40:25 

4Sエージェンシーの城崎さんが東城医大の敵となることもあるんだろうか……。
彼は自由に生きてる存在として書かれてるようだから。
一方ではしがらみがない存在。自分の血筋以外については。

『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』では東城医大を守ってくれた。
しかし未来はわからない。

桜宮小百合すみれ姉妹がいる限り狙われないとは言えない。
『輝天炎上』では城崎さんはすみれ側についてなおかつ彼女からの要望で彦根くんを操った。

すみれがひとつ有利な点は城崎さんを通じて東城医大側の人物を操れる可能性は秘めてる。
『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』では結果的に東城医大を守ったことになる。

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』を読むと未来はわからない。光も闇も秘めてる。
必ずしも希望の輝きだけではないと理解する。

  • No.248 by 風人  2016-06-11 06:24:32 

『ケルベロスの肖像』が光としたら『輝天炎上』は闇でしょうか。
いちがいにそうとも言えないけど。

桜宮小百合が三枝茉莉亜や理恵先生と相対する場面はまさに光と闇の対決ともいえる。
三枝先生を罪に追いやったのは小百合ということを茉莉亜先生は気づいてた。
三枝先生は『極北クレイマー』の舞台極北市民病院で唯一の人徳者。
だけど、西園寺さやかに化けた小百合により広崎宏明を操り罪に追いやられた。

北に南に斑鳩室長、桜宮小百合の手はまるで蜘蛛の巣のように広がってるようにも見える。

だけどそれと戦う者たちもいる。三枝茉莉亜先生の命はいずれは亡くなったでしょうけどその志は誰かに受け継がれるはず。
東城医大の佐伯前病院長から高階病院長、そして田口先生へのように……。極北市民病院も室町病院長から一時的とはいえ今中先生、彼から世良先生へと……。

時代や形はちがえても受け継がれるものはあるはず。

『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』の舞台マリア・クリニックもまたつぶれゆく病院。
だけど未来はわからない。誰かが継ぐかもしれない。

『イノセント・ゲリラの祝祭』で白鳥さんが知ってたことから気にはしてたかもしれない。

  • No.249 by 風人  2016-06-11 08:41:47 

すみれはよく流星荘で小百合の隣に住めたもの。
ふたりとも公には死人扱いになってるとはいえ互いに姉妹。
ちょっとでも挙動があったら気づかれたかもしれないのに。
小百合が生きてる限りすみれはずっと生き続けるんだろうか。
誰にも気づかれないまま。

姉妹の争いのたびに桜宮家に関わった田口先生、白鳥さん、姫宮さん、天馬大吉くんなども事の真相を知る知らないに関わるんでしょうか。

  • No.250 by 風人  2016-06-11 09:31:27 

『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』の理恵先生とユミさんはわずかとはいえ桜宮小百合と出逢った。
このわずかな出逢いもマリア・クリニックにいる人たちに影響を及ぼすのだろうか。

少なくても『マドンナ・ヴェルデ』においては理恵先生は実のお母さんや茉莉亜先生に説得されたことで子どもを利用しないと誓ったけど、妊娠中の理恵先生は小百合に怨念と共にに抱かれた。

短い場面だけど、ぞくっとする怖さしか感じなかった。

  • No.251 by 風人  2016-06-11 13:00:41 

『輝天炎上』はヒロインが多いこと。
冷泉深雪、別宮葉子、桜宮小百合、桜宮すみれ、姫宮香織、桧山シオン、出番は少ないけど国見淳子教授。あと小百合についてる南雲杏子。
マリア・クリニックの三枝茉莉亜、曽根崎理恵、ユミさん。
これだけ舞台の表裏に女性たちが出てるのになぜ肝心の会議の場で島津先生を連れてくるのか笑えて泣けてくる。

あらためて読むとAiセンターひとつをつくるにしても意見はさまざま、解剖医は基本的に乗り気ではないか否定派。
様々な意見があるのはいいけど閉鎖的になるというのはどこの社会や世界にある。
むずかしいところ。

  • No.252 by 風人  2016-06-11 17:17:31 

『輝天炎上』をあらためて読むとAiセンターが何故、碧翠院に酷似した姿かもわかる。
高階病院長たちが外部業者に丸投げしたとすればいささか無頓着すぎる。見方を変えれば特定の業者と癒着してない清廉さもあるけど。

『ケルベロスの肖像』で強固に見えた姿勢が『輝天炎上』ではむしろ穴だらけという。

東城医大側にしたら守ることに専念すればよかったんだろうけどせめて会議に参加した人たちの身元調査くらいはできたと思うのに。
そしたら西園寺さやかの正体は白日のもとに晒せたはず。
白鳥さんがバックヤードに下がったのも要因。
脅迫状だけでは白鳥さんの関心が低かったのか。あるいは白鳥さんは事件が起きてからでないと動けないのか。

  • No.253 by 風人  2016-06-11 20:49:12 

田口先生がもし本当にヘタレな医者だったらバチスタ・スキャンダルに始まる東城医大を取り巻く事件や難題は解決に至らなかったと思う。
ちゃんと秘めてるんだと思う。
速水先生みたいに救急に迅速な“神”みたいな救急対応は不可能だろうけど、交渉や会議などに田口先生の能力は発揮される。
引くところは引きながら旧友や会議の進行においては出すべき駒を引き出す思いきりのよさ。

ありきたりの会議そのものは曳地さんとの会議みたいなものという解釈がされてるからある意味、場馴れをしてる。

また不定愁訴外来(愚痴外来)でひとの話を聞くことに慣れて長けてる。

もし本当にヘタレだったらバチスタ・スキャンダルから始まる難題はクリアーされてない。
『ケルベロスの肖像』においては白鳥さんがバックヤードにまわったことでコンビの真価が発揮されないままだったと思う。←そう書くと白鳥さんに依存ないし共存みたいだけど(苦笑)。

田口先生をヘタレと思ってること自体、未来において桜宮小百合とすみれは足元をすくわれるのでは?と思わなくもない。

『ケルベロスの肖像』のラストでは高階病院長にようやく勝てたんだから。

  • No.254 by 風人  2016-06-12 08:28:31 

『輝天炎上』で田口先生島津先生があらわれる前の会議前でもいろいろな人間模様や伏線あった。
『極北ラプソディ』の世良先生と今中先生との話題に出てきた日本三分計画。
やはり彦根先生が黒幕みたい。医師ストライキしたことであちこちから敵をつくってるにも関わらず飄々としてる。
ドクタージェット構想と日本三分計画は連動してると考えた方が素直でしょうか。
白鳥さんから国家転覆してると言われるのもどうだろう?白鳥さんだって官僚としては規格外なんだから(苦笑)。
彦根くんも白鳥さんもけっして上昇志向ではない。田口先生もだけど。
速水先生や島津先生にしても出世は二の次。
それゆえに田口先生島津先生速水先生それぞれある程度、高階病院長から被害を被っている。
島津先生はさほど被害はないように思われるけど物語の外では田口先生と同様な目に遭っててもふしぎではない。
本来ならAiセンター長は島津先生がなるべきと天馬くんは評してたけどそれは外からの評価であって内部の、高階病院長の評価ではない。

外部者と組織の内部にいる者では評価がちがうというのも本人の思いとのズレもある。

  • No.255 by 風人  2016-06-12 09:36:55 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』で物語はひとつの終わりを迎えているとすれば、新たな出発点となる物語はあるんでしょうか。
『モルフェウスの領域』で東城医大が潰されず変わらず田口先生佐藤先生如月翔子、そして高階病院長の姿がある。
白鳥さんの協力あって再び桜宮市民に愛される東城医大があったはず。

病院の再建がかんたんにいかないのは『極北ラプソディ』で書かれてるけど似たような経緯があったかもしれない。
だけど世良先生は極北市民病院で根を張ると仰って『極北ラプソディ』はラストを終える。
世良先生が東城医大か高階病院長あたりに関心がないと桜宮市を訪ねることはなさそう。

少しずつ再び信頼を取り戻していったと考えるか想像した方が無難。

  • No.256 by 風人  2016-06-12 19:39:07 

『輝天炎上』で田口先生、兵藤くんが講師として活躍してる姿も見れるのもおもしろいところ。
留年生の天馬大吉くん、優等生の冷泉深雪さんのある意味凸凹コンビそれぞれがちがう受け取り方をしてるのもひとつ。
田口先生はしっかり医者が命を見届けることは高原美智という患者を通して教えたと思う。
対して兵藤くんは講師であっても医学生からやや小馬鹿にされてる。これは不定愁訴外来(愚痴外来)での田口先生の評と近いところある。

  • No.257 by 風人  2016-06-14 06:41:47 

医者や医師が講師として立つ場面は新鮮。
天馬くんが『螺鈿迷宮』で不まじめだったけど『輝天炎上』では比較的、まじめになってる。本質はそう変わらないみたいだけど。
『輝天炎上』で清川司郎をはじめとしていろいろな先生方に出会い田口先生とも出会う。
ただ田口先生を見くびってたのは純粋な若さからと思う。ひねくれた若さだったらのびしろがない。
それだけ天馬くんには厳雄先生の“言葉”がしみついてるんだと思う。
事件の真相を知るのは天馬くん、桜宮すみれ、桜宮小百合、城崎さん。
すみれや小百合の二重螺旋は永遠に桜宮を取り巻くんでしょうか。

Ai自体の理念や理想は綿毛になって世界に飛んでるだろうから斑鳩室長がいかような手段をこうじても無理な気がする。
斑鳩室長が連れてた秘書は本田と名乗ってた。
おそらくまた別作品で活躍する人物でしょうね。

  • No.258 by 風人  2016-06-14 07:59:42 

冷泉深雪は優等生なキャラクターで頭よく美人、洞察力行動力ある。
反面、ちょっと天然なとこもわずかにある。なにより若いからお酒に弱い。
『輝天炎上』では別宮陽子と共に天馬くんのサポート兼三角関係のちいさい火種というとこも微笑ましい。

藤原看護師、如月翔子、浜田小夜、桜宮姉妹、『極北シリーズ』の梢、五條看護師などとはタイプが違う。
優等生なところは浜田小夜にやや近いけど若いから物事をありのままに見れるのは長所。
ちょっと天馬くんにやきもきしてるのは学生らしい一面。自分に近しい異性になにかしら思うのはいいところ(笑)。

天馬くんが別宮陽子、冷泉深雪というヒロインをふたり持ってる?のに田口先生や今中先生が不遇……。

いずれ田口先生や今中先生の恋愛を海堂尊先生に書いてほしい。

  • No.259 by 風人  2016-06-14 13:06:49 

『輝天炎上』は桜宮すみれや桜宮すみれ視点の物語は表現が女性的になってる。
小百合がマリア・クリニックを訪ねた場面は『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』の舞台だからよけい女性的に想起される。
小百合、すみれの物語は天馬くん視点がメインとしたら全体からは浮いてる感じあるけど小百合やすみれもまたメインヒロイン。
『ケルベロスの肖像』で出た謎は解けたけどまた新たな予感を感じさせる。

  • No.260 by 風人  2016-06-14 16:03:51 

いくら医療においても形骸化してる点があっても腐敗してる人たちいれば改革する人たちもいる。それが少数や意見が少なくても。
大学病院や医療センターなどないと地元の人たちがなにより不便になるし医者を志す若者が勉強する場もなくなる。
『桜宮サーガ』は架空の東城医大、極北市民病院、マリア・クリニックなどを舞台にしながら海堂尊先生は訴えてる。
読むたびにメッセージが大きいの伝わる。

『ブラックペアン1988』の若き日の田口先生たちと『輝天炎上』の天馬くんたちは時代はちがうけど何かしら学ぶべきところは重なると思う。
医療も先人たちの経験や血脈がないと続かない。

桜宮すみれや小百合がもしも東城医大を潰してたらそんな若い世代が医療や医学を勉強し学ぶ場が桜宮から消えてたんだろうか。

  • No.261 by 風人  2016-06-15 04:17:20 

なぜ建設業者を丸投げしてしまうのか東城医大は……。
なんとも最大の盲点と思うんだが。それだけ医療従事者が自分たちが新たに建てる施設の業者には無関心なのか思わざる得ない。

マリッツアと桜宮小百合の人間関係が想像できないのも盲点だけどそこは致し方ない。人間関係は当事者にはなかなか把握できない。お互いに。

だけどAiセンターが破壊されるためにつくられたいうのもほんとどうかと思う。

医療の世界が閉鎖的というのも『桜宮サーガ』の各作品読むというのもわかる。
解剖医はAiに興味を示さなくむしろ反対的。患者のためになるという大義があっても首を縦に振らない。
『輝天炎上』で解剖医が儲かるのか儲からないのかというのもひとつの視点や考え方。“儲かる”ということに主軸を置くのも日本人の悪いところだけど(苦笑)。

『輝天炎上』では天馬くん視点でいまの時代の医学生の考え方や現代的な視点だと思う。
『ブラックペアン1988』で田口先生島津先生速水先生それぞれが論文の中に後の運命を決定づけてる場面がある。

田口先生は渡海先生の言葉があったから血をあまり見ることのない不定愁訴外来(愚痴外来)をつくることになる。

  • No.262 by 風人  2016-06-15 07:41:00 

高階病院長と彦根くんは『ケルベロスの肖像』で互いに初対面だったいうのも意外な話。

彦根くんが田口先生たちより後輩だったから面識なかったんでしょうか。

医大に講師や生徒として在籍しても接点のない人物はいるでしょうね。
たまたま時期がズレてたり講習を受けなかったりとかあってもふしぎではない。

高階病院長の東城医大の『ケルベロスの肖像』後の未来においての構想のなかに彦根くんが関わることあるんだろうか?

けど『極北シリーズ』には速水先生という東城医大の血脈あり世良先生もまた同じ。
別系統で三枝久宏先生から清川吾郎につながる帝華大、帝華大は白鳥さんの血脈でもある。

東城医大と帝華大はライバル関係にあるけど医療社会に出ると人間関係で協力関係があるのも興味深い。

白鳥さんの帝華大時代がどんなのだったのかも気になる。
なぜ、医者ではなく官僚になったのか。その物語は見てみたい。

  • No.263 by 風人  2016-06-16 05:04:12 

百人いれば百通りの真実がある。
まさに『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』の田口先生、天馬大吉がそれぞれ合わせ鏡なように田口先生は事の真相をほとんど知らないまま、逆に天馬大吉くんは事件の真相にもっとも近いところにいた。

これは『極北クレイマー』の三枝先生、三枝先生を訴えた広崎広明にも似たようなことが言える。
三枝先生と広崎広明は母子が亡くなったことで広崎広明は西園寺さやか(桜宮小百合)に言われるがまま訴える形になった。
広崎広明にとっては母子が亡くなったことの真相を知りたかったのに三枝先生を逮捕するきっかけをつくり極北市民病院を窮地に陥れた形になった。

三枝先生にしても極北市民病院にはAiがなかったためかあるいは本人の人柄によるものか広崎広明に強く訴えることはしなかった。

『輝天炎上』で三枝茉莉亜先生は遠くにいながら事の真相は感じてたんでしょう。
桜宮小百合がマリア・クリニックを訪ねたことで桜宮市に起こることを予期してたのかもしれない。

  • No.264 by 風人  2016-06-17 09:53:35 

天城雪彦、この人物は何者なんでしょうね。
まだ読んでない作品に出てる人物でしょうから興味ある。高階病院長が胸の内に気にしながら清川司郎もまた気にしてる。
だけど去就については語らずというのがまた謎や魅力を深めている雰囲気。

たまにググっては他の方のブログレビューなどは参考程度に見るけどやはり読まないとわからない。

  • No.265 by 風人  2016-06-17 13:01:41 

『極北クレイマー』の三枝久広先生はほんと魅力的な人物。
極北市民病院のなかで数少ない人格者。
不良医者でもあった後藤先生でさえも慕い、ろくでもない院長ではあったが室町病院長や仲たがいしてる病院内のグループでも三枝久広先生を庇う姿勢は共通して見せてる。
それが西園寺さやか(桜宮小百合)の手によって司法に委ねられるのがなんとも悲しい結末。
三枝久広先生はバチスタ・スキャンダルを遠くで見ながら自らもまた司法の手で裁かれるこてに複雑な表情を見せていた。

三枝久広先生のその後の去就もどうなっているのか……。

  • No.266 by 風人  2016-06-17 15:10:15 

彦根くんと斑鳩室長の戦いは桜宮市から大阪浪速市に移る。
『桜宮サーガ』はいろいろな人間関係がある。医療の世界が広いのか狭いのか(笑)。
『田口白鳥シリーズ』だけでなく『極北シリーズ』『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』など各作品ごとに派生してるからいろいろな読み方ができるし考えさせられる(--;)。

  • No.267 by 風人  2016-06-18 08:08:13 

『螺鈿迷宮』をもう一度出して読みたいところ。
ぐうたら天馬くんが生まれ変わるきっかけの物語。
海堂尊先生の『伝説』によるとありとあらゆる“死を封じた”物語でしたっけ。
『螺鈿迷宮』はドラマ版も凄かったけど小説は妙に昭和の背景が色濃かった印象。
桜宮市の戦前戦中戦後と巌雄先生の言葉を借りて語られる。

  • No.268 by 風人  2016-06-18 14:21:42 

桜宮小百合すみれをくらべるとすみれはさほど田口先生を嫌ってる雰囲気はないと思う。
すみれはあくまで『輝天炎上』では“田口先生”と呼んでいる。憎いという気持ちが個人的心情まで至ってないと思う。
もし憎かったら小百合みたいに面と向かって言葉や表現に出てると思う。
この辺もまた女心の微妙なところでしょうか。

その田口先生にしても天馬くんからAiセンター長としてと神経外科の講師、あるいは愚痴外来の先生としてのイメージと実像の乖離がある。
天馬くんは比較的、勘がいい方に書かれてるからでしょうね。

  • No.269 by 風人  2016-06-18 15:13:33 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』は同じ時系列同じ物語だけど、田口先生と天馬大吉側それぞれが同じ言葉を受け取りながらもまた違う感銘を受けてるのもおもしろいところ。
田口先生も正確にいえば東城医大が心からは好きではないけど不定愁訴外来をはじめ居場所や学生時代の思い出がある。幾多の事件や難題に関わるうちに愛着を持ったと思う。
対して天馬くんはたしかに東城医大に共感するところは少ないと思う。ちがう言い方したら碧翠院の件に関わるまでは不真面目でもあった。
だけど碧翠院の一件で変わるきっかけになったのもまた事実。
『輝天炎上』の物語が彼に何らかの影響をもたらしたのもあると思う。
田口先生を“恋敵”というのも起因してるはず。

田口先生たちが未来の東城医大を支えるのは確定的としてその時に天馬くんや冷泉深雪さんがどうなるかというのも未来への鍵なんでしょう。

  • No.270 by 風人  2016-06-19 05:27:53 

『螺鈿迷宮』の冒頭では天馬くんはいかにも不良医学生。
『輝天炎上』では留年生ではあるけど授業に真面目に出て成績をおさめてる様子はある。
だけど、本質(の一部)は変わらない様子もある。
天馬くんの背景が『螺鈿迷宮』の時は亡きご両親に甘えているのがある。それをうまい具合に別宮葉子に突かれてる。

  • No.271 by 風人  2016-06-19 06:11:08 

桜宮小百合はたしかに表立っては出てこれないだろうし“西園寺さやか”としてもおそらくは出てこれないと思う。
だけどAiセンターの会議に斑鳩室長、南雲忠義と共に現れてるのは小百合の剛胆や思いきったところと思う。
堂々とかつて見知った田口先生や天馬大吉の前に現れるなんてふつうはできない。

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』では東城医大側も本来なら黒幕として座るべき高階病院長が自ら前面に出たのも大いなる敗因のひとつ。
それは桜宮小百合もまた同様。天馬くんがいてもいなくても小百合は正体をあらわしたと思うけど。

すみれが田口先生をどう想っているのかも気がかり。東城医大は憎しと思うけど田口先生に憎しみは抱いてはないと思いたい。
田口先生がかつて恋した相手はすみれと考えた方が無難な感じ。そちらの方がしあわせな思い出と思う。

  • No.272 by 風人  2016-06-19 10:22:10 

『螺鈿迷宮』を再読してると元気だった頃の高原美智が出てきてちょっと重く複雑な気分。
同時に天馬くんと結城さんが禁忌の地に足を踏み入れるのはふつうに怖さある。

  • No.273 by 風人  2016-06-19 11:24:16 

『螺鈿迷宮』も先にドラマのイメージあると再び実感。
桜宮巌雄先生は柳葉敏郎さんだわ(笑)。小百合が水野美紀さん、すみれが栗山千明さん。
ドラマでは桜宮姉妹は双子設定ではなかったと思うけど。
けど『螺鈿迷宮』は怖い物語に思える。“死”を司る碧翠院。
ひとり、またひとりと消えてゆく病院。

けど、小百合やすみれはともかく小説内では南雲杏子が生き残ってるから彼女からアシがつきそうな感じもするけどどうなのだろう。
彼女はなんとなくドジを踏みそうなイメージある(苦笑)。
碧翠院の生き残りはすみれと小百合、高原美智、南雲杏子。だけど美智さんは『輝天炎上』で亡くなった。
すみれが白鳥さんに情報をリークする線もありそう。

  • No.274 by 風人  2016-06-19 12:03:07 

すみれが水野美紀さん、小百合が栗山千明さん。意外に忘れてる。

  • No.275 by 風人  2016-06-19 14:37:21 

姫宮香織はどの作品でも目を惹く存在。
『螺鈿迷宮』『極北クレイマー』『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』、個人的には『極北クレイマー』の雪ダルマもしくはスノープリンセスが笑えて印象に残る。
見た目が背が高い高すぎる女性、それだけでもある意味、マンガ的。
けど能力においては霞ヶ関の若き官僚たちが一目置いて側にほしいほど。

『螺鈿迷宮』では天馬くんを怪我に怪我にと導く(苦笑)。
けど『螺鈿迷宮』執筆の10年前にすでに姫宮香織らしいキャラクターの構想はあったらしいから凄いもの。

  • No.276 by 風人  2016-06-19 16:40:54 

『桜宮サーガ』全般に言えるかもしれないけど(まだまだ読めてない作品あるけど)、敵が見えてるうちは敵味方互いに双方出方がはっきりしてる。
だけどどちらかが姿をはっきりさせないうちは敵の出方を待つか防戦にまわるしかない。
『螺鈿迷宮』では当初、天馬大吉くんの目を通して碧翠院の表裏が見えてくる。そこに正しい正しくない一面が見える。
ドジな姫宮香織が厚労省の役人とは誰もが思わない。『極北クレイマー』前半ラストにも似たような大どんでん返しある(笑)。

  • No.277 by 風人  2016-06-20 05:41:05 

『螺鈿迷宮』を再読してると、あっさり登場人物のひとりが気づかない間に消えているミステリー。
フッと現れただけなのにすでに物語から消えている。
碧翠院の未知なるこわさ。しかも謎は解けてないからこわさが際立つ。

だけど、一方では東城大と碧翠院の関係も明らかになる。
前半は碧翠院側に感情が揺らぐ気持ちもある。後にすみれが復讐したがる気持ちも理解しないではない。

  • No.278 by 風人  2016-06-20 06:20:14 

『螺鈿迷宮』では誰もが白鳥さんと姫宮を厚労省の人間とは思わない。
役人らしくないのもあるけど。とかくどの作品に登場しても役人らしくない(苦笑)。
姫宮香織も『極北クレイマー』に登場した時も『螺鈿迷宮』の白鳥さん同様に身分を伏せながら業務しながら極北市民病院をうかがって役目を果たしたら自然と姿を消している。
だけど『螺鈿迷宮』では桜宮一族は白鳥さんに潰される運命にある。
あらためて読むと碧翠院側にも感情移入するところはある。

  • No.279 by 風人  2016-06-20 07:22:39 

『螺鈿迷宮』で天馬くんが潜入してからわずか二日でひとがふたり亡くなるというこわい話。
白鳥さんが登場すると物語がやや加速度的になる。
天馬くんなりに謎解きをしながら一方では二重スパイの任を託される。
不良医学生ではあるけど物事を見たり考える視点は純粋。物語が進むにつれ医学生としての一面が浮き彫りにされていってる。これは以前に気づかなかったところ。
再読すると違う一面が見える。

  • No.280 by 風人  2016-06-20 12:20:15 

あらためて『螺鈿迷宮』を読むとはじめの頃が読んだ時は東城医大側か正しいように見えたけど、再読すると東城医大が利権利益のために碧翠院をつぶしたように読めてしまう。
何度か読みなおすと立場逆転なる。
碧翠院に闇がある。だけど闇に光を射すことで光をもたらす。
しかし光も闇も一緒にすることはできないのでは?と矛盾が生ずる。

『螺鈿迷宮』で碧翠院をつぶしたことは東城医大、そして桜宮市が医療でつぶれる一端としたら『螺鈿迷宮』で起きたことはとんでもなく大きく重かったことに気づかされる。

  • No.281 by 風人  2016-06-20 14:03:51 

『螺鈿迷宮』は桜宮市の怖い話も物語に加わってるからなおさら怪奇めいたのもある。
だけど、天馬くんはそれを含めてひとつずつ解いていく。桜宮の童歌と共に……。

読んだ当初は東城医大側に感情が向いたけどあらためて読むと碧翠院が滅んでいいのか疑問符がある。
たしかに東城医大の経営の傾きは懸念すべきこと。だけどそれで他人の畑を荒らしていいかと言えばちがう。

天馬くんほどかは別にして碧翠院の方に共感に近い気持ちは胸に宿る感じする。

  • No.282 by 風人  2016-06-21 04:34:09 

『螺鈿迷宮』の桜宮すみれの邂逅を聞くとかつて恋した相手は田口先生みたいな感じ。
各作品でも田口先生は誰かに想いを寄せていた。それがすみれ先生なら納得いかなくもない。

田口先生が腰抜けや意気地無しだったかわからないけど何か結ばれない事情があったかもしれない。

だけど田口先生は東城医大から碧翠院の患者治療を見守ってた。

田口先生とすみれ先生の間に敵視する感情は見られない感じ。
むしろ小百合先生の方が敵意をむき出しなのが『螺鈿迷宮』からもひしひしと伝わる。

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』で一応の決着は迎えたにせよ水面下では未来において続いてないともいえないのがこわい。

  • No.283 by 風人  2016-06-21 06:51:30 

一見、古い病院でもAi(オートプシー・イメージング)はあるかもしれない。
だけど『螺鈿迷宮』の碧翠院、『極北ラプソディ』の神威島の診療所では用途がちがってる。
けど、桜宮巌雄院長や久世院長にしても歳を取ってるにも関わらず最新の医療機器に目をつけるのは経験や勘からか。あるいは自らの地をちゃんと永らえさせるためか。

『螺鈿迷宮』で悪役であるはずの巌雄先生にも医療には信念はある。また小百合先生について一部ではあったにせよ白鳥さんは共感すべきところはあった。

だけど碧翠院はやり過ぎた。なぜ死者が一日二日と続けて存在するのか。
行方不明になった人たちはどうなったのか。
見逃せない事態が立て続けに存在した。

でもあらためて読むと碧翠院に闇はあるけど東城医大は“闇”を吸収どころかえってマイナスになったのではと思えてしまう。

桜宮すみれ小百合姉妹が復讐するのもまた理解してしまいそうでこわい物語と思えてしまう。

  • No.284 by 風人  2016-06-21 07:16:15 

碧翠院、あるいはAiセンターがあったあの地はどうなったのか疑問が生じる。
二度も医療施設が(意図した)火災で崩壊し現実的に考えたら“いわく付きの地”になるんじゃないだろうか?
三度も医療施設が建つことは考えにくい。

  • No.285 by 風人  2016-06-21 08:58:02 

『螺鈿迷宮』のラストでコートで身を隠す女性、はじめは小百合かと思ったけどすみれにも取れる。どちらにも見える描写してる……。
この辺もまた海堂作品がミステリーなのは間違いない。

  • No.286 by 風人  2016-06-21 19:22:52 

『螺鈿迷宮』『輝天炎上』で数少なく生き残った高原美智。
彼女はほんと病気と戦い寿命をまっとうした人物と思う。
『輝天炎上』でたしかに一度は命尽きかけ天馬くんの心臓マッサージで一度は息を吹き返した。
だけど二度目はなかった。
よくドラマで見るシチュエーションだけど小説でも見られるのもまた意外だった。
美智さんは田口先生の言葉によると天馬くんに別れが言いたかったから一度は戻ってこれた。
碧翠院の忘れ形見の美智さんにしたら天馬くんは孫そのもののような存在だったでしょう。

延命処置や治療は本人が望まない限りは医者は手出しできない現実もある。
『輝天炎上』の美智の場面は短いけど考えさせられるものはいくつもある。

  • No.287 by 風人  2016-06-22 06:25:28 

『ケルベロスの肖像』での田口先生側、『輝天炎上』での天馬大吉側からの高原美智への描写や心情は異なる。
田口先生は神経外科の医者としてあるいは医療に従事する者として、天馬くんは一青年や一学生として、海堂尊先生は表現が豊かと思う。
おそらく医学生、研修医、医者としての経験を経てるからそれだけ書けるんだと思う。
学生の頃は命に対して真正面から受け止められても医者としては目の前で命が失われることには割りきることも必要とされる。
命が失われる描写は他作品でも見られる。それに対して医者としてどう向き合うかというテーマもあると思う。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』での後半クライマックスの展開は救急搬送される患者が誰もが救える救えないという振るいにかけられる場面は割りきって描写されてる。

  • No.288 by 風人  2016-06-22 07:00:27 

『螺鈿迷宮』で結城さんが桜宮巌雄先生に殺されなかったのはギリギリ天馬くんの運があったからでしょうね。
ふつうならそれまでの被害者同様に殺されてもふしぎではない。
天馬くんが麻薬中毒寸前まで侵されながらも姫宮香織の機転がなかったら彼も助からなかっただろうし。

けど“死を司る”翠碧院がなくなったことは桜宮市に闇をもたらすことになったのか。

『夢見る黄金地球儀』で翠碧院があった地(Aiセンターがあった地でもある)は結局なにもないままだったんじゃないかな?

気づけば故郷の街の風景が変わったものになってるのは現実と変わらない。

なんとなくだけど地元の大学病院や医療センター、あるいは町の診療所などにも見えない事情は無数にあるものと実感してくる。

  • No.289 by 風人  2016-06-22 08:48:30 

『輝天炎上』の天馬くん視点の物語は新鮮。
同時に医学生から見た東城医大の現状。正しくはAiについてのそれぞれの認識ともいえる。
教授方は権力あっても逆に権力に締め付けられる閉鎖的方向もひとつ。『極北ラプソディ』でも論文ありきというのまたひとつの現実。

まじめになった天馬くんからでも医療からの大人社会のいびつさはなんともし難い。
Aiひとつ解剖医は懸念を示すあらわれ。
だけど『螺鈿迷宮』の時は白鳥さんに軽くあしらわれた天馬くんだけど『輝天炎上』では一学生もしくは個人として白鳥さん意思を向ける。
そこは彼が芯が通ったことのように思える。白鳥さんみたいなペーパードクターに好きにやられたら別な意味で医療がこわされかねないのもまた事実。

天馬くんが将来、東城医大ひいては厚労省もしくは白鳥さんにとって敵味方どちらになるのか。

けど医療においては不定愁訴外来(愚痴外来)みたいなところもまた必要不可欠と思う。
心と身体の治療を健康にしていくこと。

『螺鈿迷宮』での白鳥さんが取った“見せながら治療”は『極北クレイマー』でも姫宮香織が実践してた。
『アリアドネの弾丸』では白鳥さんの口八丁でとある患者さんは納得してた一例もあるから。
患者が納得するのがいちばんの治療法。

  • No.290 by 風人  2016-06-23 07:58:40 

『螺鈿迷宮』後の白鳥さんが型破りな官僚として力を振るってるところもあるけど官僚としての制約や縛りもある。
巌雄先生が伝えたようにところどころでは白鳥さんに異を唱える者たちもいるだろう。
出る杭は打たれるのは世の常。
『モルフェウスの領域』や『夢見る黄金地球儀』など未来の時代の作品を読めてないからその辺はなおさら不明瞭。

未来科学センター(コールドスリープセンター)で東城医大が健在なからくりはわかったけど。

『モルフェウスの領域』では白鳥さん一切出てこなく代わりに八神課長が煮え湯を飲まされるのが気の毒。

医療が真実、誰のためにあるのかというのが『桜宮サーガ』全体のテーマでしょうけど海堂尊先生は答えを見いだせるんでしょうか……。

  • No.291 by 風人  2016-06-23 09:19:48 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』で高原美智は生をまっとうしたと思う。
『螺鈿迷宮』のエピローグからと考えても短く長く太く生きたのではないかと思う。
田口先生が忙しい合間も週三回は話を聞きに来てたのも労力ではあるけど美智にしたら救いや癒し、過去の邂逅の時だったかもしれない。
不定愁訴外来(愚痴外来)には決まった薬や処置はない。
田口先生によると極楽病棟にいる看護師たちがいちばん労力したと思うけど。
薬や毎日の処置が効かずあるのは日々を生きる生命力だけ。
桜宮巌雄先生でさえタメ口を聞く患者。
高原美智さんは死ぬことを求めず生に生きたのは正しい姿だったと言える。
極楽病棟で彼女の世話をした看護師たちも物語では明確にされなかったけど報われた点もあると思う。
田口先生が記したカルテがその一端と思われる。

  • No.292 by 風人  2016-06-23 13:02:44 

医療施設も税金で作られてる背景はある。
いまウチの地元の医療センターを通ると新施設らしい建造物を組み立ててる途中みたい。
『イノセント・ゲリラの祝祭』から『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』あたりまで東城医大は新施設をつくろうとしてたけど『アリアドネの弾丸』の事件が響いたのか中止になったんだろうか?
医療もいい意味で税金をいい方向に使ってもらいたいもの。

  • No.293 by 風人  2016-06-24 08:52:17 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』でもし東城医大が潰されてたら斑鳩・南雲主導で新たな病院や施設をつくるつもりだったんだろうか。
Ai主導ではなく解剖医主導という形で。
もし仮にそうだとしても東城医大にいる医者や看護師、患者、医学生などがあふれることになる。
当然、新たな施設をつくるにしても三年や五年はかかるだろうし。
その間、患者や医学生などはいくところがなくなる。
『極北ラプソディ』で破綻した極北市民病院のように入院患者さえいなくなる病院のようになる。

もしも地元に大学病院や医療施設がなくなったら患者も医学生は行き場を失う。
斑鳩や南雲はAi主導が気にくわない、また小百合は東城医大が憎いにしても第三者の市民たちを考えてないのではないだろうか?
現実に置き換えたらとてつもなく大変な事態ではないだろうか。

  • No.294 by 風人  2016-08-07 15:21:41 

『ナニワ・モンスター』ようやく読めたけど町の診療所、浪速の検察、浪速の村雨府知事と三部構成になってる。
外国からの未知のウィルスを空港で水際防御してもウィルスはいつの間にか侵入してる恐怖。
またウィルス早期発見キットも全国に均等に配分されてるわけでもなく偏った配分されてるところにもお役所の仕事が見える。
二部の主人公の鎌形さんはいままでにないタイプの感じした。
自身も役人なのに堂々と霞ヶ関にガサ入れして切り込んでゆく。白鳥さんとはまた別なタイプとおもう。
けど相変わらず斑鳩室長、この人物はどの作品に出ても存在感が異質なのは変わらない。『弾丸』で北山、宇佐見警視を犠牲にしても平然としている。
三部においての村雨府知事は全盛期の橋下徹を彷彿させる。
『極北ラプソディ』でほのめかされた日本三分計画も明らかになる。
彦根くんの行動の謎もいくぶん明らかになってすっきりした。
『ナニワ・モンスター』のあとがきで舎人町の大河内が『白い巨塔』の大河内なる人物のオマージュではないかというのあったけど真相はどうなんでしょう。

  • No.295 by 風人  2016-08-07 17:20:53 

『ナニワ・モンスター』を読むと浪速にウィルスが侵攻したのは浪速を経済的孤立させるための中央からの攻撃だったとも読み取れる節がある。
ウィルスを媒介させることで他県から人を呼び寄せないようにして観光地など疲弊させてゆく。
そうさせること地方政治や地方経済に打撃を与える。
『ナニワ・モンスター』はそんな一面も持つ作品と言えなくもない。
中央と地方の戦争にウィルスが使われる(かもしれないニュアンス)。
『桜宮サーガ』は医療と司法の戦いでもある。

  • No.296 by 風人  2016-08-08 05:53:43 

『桜宮サーガ』シリーズを読むと医療を通して社会のいろいろな側面が見えてくる。
もちろんフィクションもあるけど(苦笑)。
海堂尊先生はいろいろな視点を据えて書いてるから角度が変われば思考や思想、価値観など変わってくる。いちがいにどれが正しいかは言えない。
おそらく斑鳩室長にも彼なりの正しい視点や正義があるはず。だけど底が見えない人物として書かれてる節がある。
医者、看護師、厚労省官僚、事務方、患者、患者や遺族の家族、警察関係者など数を挙げたらきりがない。
無数の人生が『桜宮サーガ』には書かれてる。
たとえば『伝説』の短編で三船事務長は厚労省からの事務方として書かれ速水先生にいいように振り回されてる人物だけど彼とてひとの子。ひとりの人間として書かれている。奥さんや子どもがいるひとりの人間。
ただでさえ赤字続きの救命救急病棟に予算が出せなくなおかつそこにドクターヘリ配備などは無理なのはあたりまえ。
役人として杓子定規の一面あれば旦那さんや父親としての姿を垣間見せる。
東城医大で事務方として高階病院長に理解を求めながらもなかなか思うようにいかない。
そんななか自分の奥さんが事故に遭うなか速水先生たち救命救急のスタッフの真の姿を見て少しずつ考えが変わり医療従事者でない自分が奥さんを含めた救急患者にできることを最大限にする。
物語は怪我を治療し終えた奥さんと共にタクシーに揺られながら病院や医者について会話しながら終わる。

  • No.297 by 風人  2016-08-10 07:17:20 

天馬大吉くん視点の『螺鈿迷宮』や『輝天炎上』だと海堂尊先生は若き日を思い出し自らの経験からか学生ぽい感覚が表現にあらわれてる。
田口先生や白鳥さんだとちょっと歳いった中年感覚とはまたちがう。
田口先生たちも天馬くんも麻雀というのがひとつの共通点になってる。
『螺鈿迷宮』では賭け麻雀しながらダメ学生として書かれ、『輝天炎上』では優等生で美人の冷泉深雪が麻雀をしてるひとの感想にあれこれ内心ツッコミしたりモラトリアムは卒業したようだけど大人になりかけながら同世代の女性に翻弄される姿はかわいらしいもの。
『伝説』での海堂尊先生の半生や経歴が記されてるけど必ずしもまじめでなかったり挫折あったりと悩んでたよう。
『螺鈿迷宮』の構想は執筆か発刊かわかりませんが10年前にはあったようだし。
どの登場人物も海堂先生の“分身”に思える。

  • No.298 by 風人  2016-09-05 08:53:21 

『玉村警部補の災難』、ようやく手にいれたけど短編集だけど従来の医療従事者目線ではなく加納警視正と玉村警部補の警察モノに医療関係が加わる形になってる。
加納警視正の無理やりな捜査に田口先生が捜査にやむなく協力する。
少し斑鳩室長と加納警視正の関係も書かれている。
けど、作品内でネットゲームが話題に出ている。
しかも玉村警部補、しっかりゲームにハマッている。けど独身かと思ったら妻子はいるみたい。
妻子が田舎に帰っている間、有給休暇をとってネットゲームをやろうとしたら加納警視正につかまる。
だけど加納警視正も捜査の間に関係のない時間ならやってもいいと意外にまるくなってる。
『東京都二十三区内外殺人事件』は警察の管轄や所轄で死体の扱いが異なるというお話。
解剖至上もあり監察医の仕事の問題点などに別な形に書かれてある。
『青空迷宮』でテレビ番組の収録に起きた殺人事件を加納警視正と玉村警部補が飛び込む。そこにおなじみデジタル・ムービーアナリシスと今回はグーグルアースが絡む。
あとの二つもまた医療が絡む。
田口先生と玉村警部補の苦労がいつになったら終わるのか共感と同情を感じずにいられない。

  • No.299 by 風人  2016-09-10 09:18:31 

『ナニワ・モンスター』この本もまた読みごたえあった作品。
市井の町医者から物語が始まり、医者徳衛先生とその息子がインフルエンザウィルス「キャメル」が海外に渡航歴がない患者が発症したことに治療と疑問を持つ町
またキャメルを見分ける発症キットがなぜ浪速以外にもまばらな地域に配布されたという疑問にあたる。
第二部になると物語は検察に舞台を移すという一見、医療とは無関係にありながら実は医療と深い結びつきがあるという。
浪速検察から中央、国の在り方そして斑鳩室長が各省庁の負い目やスキャンダルを握る闇の一面。
白鳥さんと同期の八神課長はここで煮え湯を呑まされる。
霞ヶ関内部をフィクションの物語ならではでえぐった描写をしている。
二部の主人公で鎌形さん、カマイタチの異名がありながらこの人物もまた彦根先生と縁ある人物。
このことも含めて『ナニワ・モンスター』のラストが意味深いものになる。
三部は村雨弘殼府知事っ彦根先生を主人公に据えながら解剖率100パーセントという舎人町(とねりまち)から医療裁判がゼロという町の種明かし。
おそらく社会問題としての医療をどうしたら解決できるかという見本を提示してゆく。
そして『極北ラプソディ』などいくつかの物語で語られた日本三分計画が明らかになる。
各地域各地方のGDPをもってすれば東京や関東に匹敵する事実。
彦根先生は関東、西日本連合、東日本連合に分けるという壮大な計画。道州制よりさらにおすすめた計画といえる。
だけど、村雨弘殼府知事はラストに悩む。浪速府にできる死後画像センターを司法か医療に委ねるかで悩む。
斑鳩室長の影を鎌形さんに見てしまう。彦根先生が恐れるくらいの斑鳩室長の影がラストに府知事を悩むところで物語は終わる。

  • No.300 by 風人  2016-09-12 05:40:05 

医療と司法の対決は『田口白鳥シリーズ』でも見られたけど『ナニワ・モンスター』から始まるシリーズはまた別角度からということでしょう。
浪速府を舞台に医療と司法がぶつかり合う。
『ナニワ・モンスター』において怖いのはインフルエンザウィルスを用いての中央(?)から地方への攻撃、そして経済的孤立という一種の戦争であるというシミュレーション的にも読めること。
町医者、検察、そして府知事という異なる三者の視点から物語の角度も異なり切り口もちがう。
町医者徳衛先生はほぼ我々一般人と視点が変わらない市井からの感情や気持ち。
検察、カマイタチ鎌形はややクセがある人物ながら彼なりに独特の思想や信念がある。
そして村雨弘殻府知事、あとがきにも書かれていますが全盛期の頃の橋下徹府知事を彷彿させる。
村雨府知事と出逢いを意図したものにする彦根先生は相変わらずしたたか。
インフルエンザウィルスを用いて経済的孤立を促しなおかつメディアを使い煽りながらインフルエンザウィルス・キャメルが弱毒性というの伝えない中央からのメディア攻撃。
異なる三者の視点で物語で書かれなおかつ中央からの意図が見え隠れする姑息な方法。
いちおう物語は完結するけど少し余韻を残す。
『ナニワ・モンスター』は仮想シミュレーションとしての意味もあると思う。

  • No.301 by 風人  2016-09-12 08:58:14 

医療裁判がゼロという『ナニワ・モンスター』の舎人町(とねりまち)。
だけど医療がお金を生む仕事なのもまた実情と思う。
厚労省の天下り団体しかり(『極北クレイマー)、現実において医療裁判を生業としてる検事や弁護士などもいるでしょう。
医療はボランティアではないにせよ、善意と思ってしまい傲ってしまう市民もまたいる。
『桜宮サーガ』のシリーズを読むと医療の在り方や見方は変わる。
昭和と平成のふたつの時代でも医療は目まぐるしく変わる。
『チーム・バチスタの栄光』にあったとおもうけど教授になれたのに身に覚えのない前時代的からあった負債やマイナス面をいまいる教授たちが背負うという不遇な在り方。
各々の作品で書かれていることの共通点に医療の世界が閉鎖的なのも一因してるとおもう。
論文ありきで経験を実地で積めないのもあり、また教授になっても閉鎖的な環境や人手不足などがあり遅々として進まず権力があるように見えながら実体はさほどない。
『イノセント・ゲリラの祝祭』の西郷教授みたいにあえて競争率の割合が少ないところで教授になろうとする者もいるでしょう。
だけど、小児科医療の不備や大学そのもの移転など大学がない地域地方は過疎になるだけ。
仮に出世したり教授になれたとしても生徒がついていかないと根本的な意味は成さない。
医大の存在ひとつを取っても地域や地方にとっては死活問題。
『ナイチンゲールの沈黙』の小児科医療の在り方、『極北シリーズ』における医大を手放してしまった市、『ナニワ・モンスター』で大学を手放さない地方自治、それぞれ異なる問題に一見みえるけど実は未来を次世代への提議と未来への在り方。
それぞれを読むとすべての面では重ならないけど、重なっている点はある。

  • No.302 by 風人  2016-09-12 18:15:54 

『極北クレイマー』『極北ラプソディ』で大学を手放してしまった極北市、対して『輝天炎上』『ナニワ・モンスター』で書かれている浪速府。
大学が地元にあるとないとでは人の流れがちがうという現状。
大学がないと人材が企業に流れないというのもある長いものの見方をしたら定住者確保にもなる。
極北市は誤った判断をして浪速府は頑として大学を手放さないという姿勢。こういう一見、些細なことで地方自治の首長の姿勢如何によるということ。

  • No.303 by 風人  2016-09-13 03:45:36 

高階病院長は腹黒で部下に仕事を丸投げすることもあるけどちゃんと足元を見ながら未来への水平線を見てたと思う。
『ブラックペアン1988』で患者の体内にペアンを残したことを病院長になってからもずっと胸に残っていたのは悔恨の意志があったからでしょう。
どういう因縁か私がたぶん未読なところに天城雪彦なる人物との因縁。
病院長として大学病院のトップではあるけどそれを理解してくれるのはたぶんに藤原真琴看護師、黒崎教授くらいのかつての若き日を共に過ごした同僚でしょう。
だけど、佐伯前病院長は去り渡海先生も去って世良先生も東城医大から姿を消した。
彼らが去ったことで得るものより失ったものが大きかったかもしれない。
失ったものが大きいぶん次代を田口先生、島津先生そして速水先生たちに託している部分もあったでしょう。

  • No.304 by 風人  2016-09-22 05:32:45 

『ブレイズメス1990』をようやく読めた。
謎の人物天城雪彦、彼に関わるマリッツア。
『輝天炎上』への因縁が紡がれてゆくのわかる。
天城雪彦が登場するだけで作品の雰囲気が変わる。まるで『ルパン三世』みたい。
けど『ブレイズメス1990』ではやや高階先生が失速された感じ。
そこは少し残念な感じ。

  • No.305 by 風人  2016-09-22 06:19:33 

『ブレイズメス1990』はある意味、おすすめな一冊。
『桜宮サーガ』の主な因縁が紡がれてゆくはじまりと思える。
天城雪彦の人物が強烈。
この一語に尽きるかないまのところ。
世良先生が『極北ラプソディ』の回想でなぜ“ジュノ”と誰かに呼ばれているかやっとわかった。

  • No.306 by 風人  2016-09-22 09:05:15 

佐伯病院長は渡海先生にも高階先生にもそして天城雪彦先生にも何かを託したい思いはあったんでしょう。
だけど、何かしら理想を誰かが何かが阻む。
『ブラックペアン1988』『ブレイズメス1990』このふたつの物語だけでもかなり鮮烈な印象。
世良先生がまだまだぺーぺーの若手なのがこれもまた新鮮。
『ブレイズメス1990』の冒頭から外国の学会への描写が『ルパン三世』みたい。
読んでていまままでの作品と雰囲気が異なる。

  • No.307 by 風人  2016-09-22 19:11:02 

『ブレイズメス1999』の天城先生のハーレー、『極北ラプソディ』の世良先生のハーレーはおそらく同じものなんでしょう。
世良先生は『ブラックペアン1988』から渡海先生から教わったこと、『ブレイズメス1999』で天城先生から多くのことを教わり悩んでいる。スリジエセンターの成否が天城先生や世良先生の運命を左右したんでしょうね。
なぜ世良先生が医療債権請負人となったのか『ブレイズメス1999』の次で語られてると思う。

  • No.308 by 風人  2016-09-23 05:13:02 

碧翠院桜宮病院に悪意を感じる者もいれば感じない者もいる。
過去、現在を通じて同じ存在を見てもそれぞれ違う感じ方をしている者たち。
だけど、天城雪彦が東城医大に在籍していた頃は佐伯清剛病院長と桜宮巌雄病院長は通じ合っていたようにも思える。それがたぶん事実。
だけど、時代が変わり東城医大は高階病院長の代になりあのバチスタ・スキャンダルで経営難を余儀なくされる。
それがきっかけで『螺鈿迷宮』につながる。

  • No.309 by 風人  2016-09-24 05:29:53 

『ブレイズメス1990』の一章と二章の舞台はフランスそして世界に二番目に小さい国のモナコ公国。
このくだりを読んでるだけで気分は『ルパン三世』。
三章からは従来通りの海堂作品の様相ながら天城雪彦、この人物は高階先生たち東城医大の先生や講師らに一石を投じ波紋を呼ぶ。
読んでいくと生前の桜宮葵がよもや出てくるとは思わなかったけどバブル三部作は過去にあたるから出てきてもふしぎはないけど驚いた。

  • No.310 by 風人  2016-09-24 07:04:45 

『ブレイズメス1990』と『極北ラプソディ』の世良先生はまるで別人。年月が人を変えた表現があてはまるかもしれないけど『ブレイズメス』の頃は血気さかんで手術したがりなのに『極北ラプソディ』では年配の患者さんの他愛ない世間話に飽きるまで付き合っている。
登場人物の変化や成長というのも『桜宮サーガ』のひとつの楽しみではある。
『極北ラプソディ』の後半で天城雪彦とさくら、スリジエハートセンターについて世良先生はわずかに語るのみ。
『ブレイズメス1990』で天城雪彦の人となりはわかったけどまだ謎は残るのが気がかり。

  • No.311 by 風人  2016-09-28 05:34:23 

『ブレイズメス1990』での差益清剛病院長を見ると、大学病院内に天城雪彦という存在を入れることであえて火中の栗を手にしようとしている感じもある。
世良先生は黒崎助教授、垣谷先生、高階先生が未来の東城医大を担う医師たちとわかっている。だけど、世良先生は今作では天城雪彦のお目付け役でもあるという。
天城雪彦にとってギャンブルとお金はある種の美徳のようでもある。ギャンブルのない日本に魅力を感じないのも納得はする。
ギャンブルとカジノ構想、これは『ナニワ・モンスター』でもちらりと触れらている。
秘書時代の村雨弘殻府知事、この人物もまた少なからず天城雪彦に影響を受けている。

  • No.312 by 風人  2016-09-28 06:11:02 

『桜宮サーガ』のなかで不気味な人物は斑鳩芳正でしょう。
読んでてもただ不気味な印象しかない。
斑鳩室長が守りたいのは司法主導の医療ということでしょうか。『弾丸』で彼がラストに白鳥さんを糾弾するのは司法の担い手でもあるからだろうと思う。
だけど、明確な背景は語られていない雰囲気。『ナニワ・モンスター』ではカマイタチ鎌形さんとも親交ある。それにより鎌形さんから村雨府知事に死後画像センターに計らいをしてほしいと伝える。
明確な背景は見えないけど彼なりに司法としての正義はあるのかもしれない。

  • No.313 by 風人  2016-09-30 09:05:49 

若き日の世良先生と『田口白鳥シリーズ』の田口先生もまた対照的に書かれている。
世良先生は佐伯病院長に忠誠心あり気概にあふれる若者、対して田口先生は大学病院の隅っこで細々と不定愁訴外来をしながら幾多の難題や事件に関わるうちに内面に、大学病院にある一定の親しみや愛着があることに気がつく。やめてやろう、と思いながらも物語のなかではしっかりと知らずに守っていたことに気づく。
バブル三部作の世良先生、『田口白鳥シリーズ』の田口先生は互いに描かれ方は異なるものの気持ちは同じように重なる。
そのなかには失意や悔やみもあると思うけど。
『極北ラプソディ』で大人になった世良先生は『田口白鳥シリーズ』の東城医大をどう眺めているのか。高階病院長を憎い気持ちがあるのか。
渡海先生や速水先生にはある種の思いはあるでしょう。
てっきり『極北クレイマー』のラストに世良先生が登場した時は佐伯前病院長か渡海先生を探しているかと思ったら、実は安住の地を求めていたのはほっとしないでもなかった。
『ブレイズメス1990』に名前だけ出てくる富士見市の病院、『極北ラプソディ』の神威島これはおそらく田舎や離島だから病院でやるやれることはそう多くないんでしょう。
検診や検査を毎日することで患者さんの病気を見逃さないようにして目に見えて悪ければ都会や本土の病院で治療し連携する。
富士見市の病院も舞台に書いてほしいです。

  • No.314 by 風人  2016-10-01 05:36:41 

『ブレイズメス1990』の高階先生は患者のことを第一に考えるために結果的には医学教室が分脈しまたルールに縛られてしまった。
そういう意味では帝華大の阿修羅はむしろ凡庸な医師になってしまった。
佐伯病院長はそれを危惧した可能性もある。
天城雪彦が作品内で語っている通り医療にはお金は必要。
天城雪彦は作品内でスピードが誰よりも速いかもしれない。
型にはまってしまった高階先生では敵わないのもある。
現実に置き換えたら多くの医師たちは思考停止した現状だから結果的には未来が先細る、これは『桜宮サーガ』内でも論文ありきなことでも語られている。
だけど『田口白鳥シリーズ』では病院長となった高階先生は挫折を胸に秘めながらも田口先生をリスクマネジメント委員会に指名しAiセンター長に任命し厚労省の坂田局長や白鳥さん姫宮さんに力を借りている。
形はちがえと医療のためにお金を求めていることはかわりない。
Aiセンターにかけた思いはかつてスリジエハートセンターという“さくらの樹”の苗を潰した後悔からでしょう。

  • No.315 by 風人  2016-10-01 06:08:28 

医療の未来が先細るのは『田口白鳥シリーズ』のオレンジ病棟の経済破綻、『極北シリーズ』の極北市民病院、『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』のマリアクリニックと作品内で書かれている。
どれも経済的に経営がたち行かなくなる。
天城雪彦が『ブレイズメス1990』で出した問題提議は後々、各作品内で問われている。
『極北ラプソディ』で世良先生が徹底的に無駄をなくしてゆくのは天城先生の理念を受け継いだから。医療債権請負人として。
世良先生の変わりようがそしたらある程度は納得できる。天城先生みたいな手術は世良先生はできないだろうけど医療債権請負人として病院や地域への治療をできると考えたのではないだろうか。
おそらくスリジエハートセンターが高階先生たちによって潰され失意だった世良先生は何らかの経緯で神威島にたどり着いた。そしてそこで救われた。
そして医療債権請負人として全国を渡り歩いた。
だけどうまくいくわけもなく常に前へ前へ前に向きすぎるあまりなにか大切なものを失った。
だけど、花房さんはずっと待っていた。いつかは自分のもとに戻ってくるのではと彼女は信じてたのはないでしょうか。
東城医大の血脈の内には天城先生や世良先生の理念や信念を受け継ぐ速水先生やオレンジ病棟のスタッフがいる。
絶望しないでほしいと心の内で花房さんは世良先生に願ってたんじゃないでしょうか。
女心ならたぶんそうだと思いたい。

  • No.316 by 風人  2016-10-02 06:02:13 

高階病院長へのお金の集め方は坂田局長や厚労省に協力を求めにいくこと。
天城雪彦みたいにフランス王族マリッツアの協力や企業の著名な人物が自分に手術を求めてくるわけではないから厚労省に協力を求めるのは当然なやり方に思える。
天城雪彦みたいな人物は現実にはなかなかいないと思える。
医療従事者が製薬会社と癒着みたいな関係なのは『ブラックペアン1998』や『凱旋』でも触れらている。
だけどそれは昭和時代やその名残りくらいでしょう、たぶん。いまの時代は厳しいから。
医療がお金を求めない結果が先細りになり患者に医療負担を強いているという暗示もあるかもしれない。

  • No.317 by 風人  2016-10-02 08:51:11 

垣谷先生は人間としても医師としても真面目と思う。『バチスタ』では白鳥さんにやられましたけど、ある意味こういう人物がいないとルールや規則を病院内で逸脱してしまう。
杓子定規ではあるけど、ある一定の線を引くことで病院の規律が保たれる一面があると思う。
『ブレイズメス』でもそこはかとなくそんな役割の人物と思う。ちょっと空気になってしまい活躍の場面が少ないけど。

  • No.318 by 風人  2016-10-03 10:27:21 

『ナニワ・モンスター』はインフルエンザウィルスによる経済封鎖による戦争シミュレーションですね。
町医者、検察官、府知事と異なる立場の人物たちがそれぞれの立場や観点から疑問を持ったり中央に戦いを挑んだり。
徳衛先生は一介の町医者だからたいした力はなくても保健所などには文句を言うことはできる。患者や町を救うため。
さりげなく息子の祥一くんが大学病院や会社に顔が利く人脈を築いているのも助けになる。
検察の鎌形雅史は中央に戦いを挑んで日本を綺麗にしてゆく。村雨府知事と人脈ができることで物語が動く。
村雨府知事もまたフィクサー、彦根先生に操られながら(?)自分の望む浪速や日本にしてゆく気概がある。
中盤に検察の視点が入ることで中央の闇が見えて『田口白鳥シリーズ』の接点が白鳥さんや八神課長から見える。
三部目で村雨府知事の視点をしながら医療に足りないものが露になりながら改革をしてる地もある。だけど彦根先生にとっては再生と破滅は同義語かもしれないと示唆される。
そして彦根先生と村雨府知事は因縁の地の桜宮で互いに邂逅しながら彦根先生にとって最大の強敵、斑鳩芳正とすれちがう。ここで『弾丸』や『肖像』へと繋がる。
村雨府知事は『ブレイズメス1990』での場面に繋がる。
最後は浪速府は彦根先生の戦略と村雨府知事の会見で浪速府は経済封鎖から救われる。
『ナニワ・モンスター』は町医者の視点から検察、そして府知事へと視点が変わりながら物語を浮き彫りにさせそこにあるのがインフルエンザウィルスによる戦争(シミュレーション)というのが伝わる面白さがある。

  • No.319 by 風人  2016-10-04 17:33:31 

彦根先生はある意味『桜宮サーガ』の主要人物のひとりではあるけど、反面東城医大の麻雀四天王のなかではある意味幼さを残している人物でもある。
『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』の活躍においては時に脇役、時に主役となり厚労省もしくは霞ヶ関に反旗を翻すように医療庁を提唱する。
だけど、これは白鳥さんとの茶番であくまで“言いましたよ”くらいの寸止めないしブレーキがかかり『祝祭』は幕を閉じる。
でも、霞ヶ関の面々からは警戒されることになる。
『弾丸』においては桜宮Aiセンターの旗揚げに協力はしながら桧山シオン先生を白鳥さんと田口先生に紹介し東城医大の危機に力を貸す。
『肖像』においては斑鳩室長と桜宮小百合の手により桜宮Aiセンター破壊という苦渋を飲まされるが、これが『ナニワ・モンスター』の続編へと繋がるらしい。
彦根先生は敵も作るし味方も作る。虚実なことは表裏一体、再生と破壊はほぼ彼には同義語。
だけど、彦根先生自体がおそらくおもてに出る“英雄型”ではなく“黒幕型”と思われる。
だけど『祝祭』や『肖像』のようにおもてに出る時はちゃんと出る。
けっして誰かの背中に隠れるだけの行動行為はしないしある程度の筋は通す、真っ直ぐさはある人物。

  • No.320 by 風人  2016-10-05 04:33:59 

彦根先生は先輩の田口先生であろうが府知事の村雨弘殻であろうが、何らかの形で操ることに長けている。
だけど先にも書いたけど“黒幕型”ではあるけどおもてに立たないタイプではない。
人物の趣向としてはまわりの人物からは誤解を招き漁夫の利を得て先をいくタイプではあるけど、ひとより先の道を進めばそれがまた危険なことを理解はしているようにも思われる。
ひとより先の道を歩けばそこに危険や困難があることをそれとなく自覚や示唆もされている。
だからかもしれないけど、警察庁の斑鳩室長はマークし浪速府検察庁のカマイタチ鎌形さんも過去に一度は面識はあるよう。この辺の彦根先生への霞ヶ関の警戒のしかたがややふつうではないと思う。
白鳥さんは『輝天炎上』では冗談めいて彦根先生が国家転覆をたくらむ反乱分子云々と言ってたと思うけど、警察庁と検察庁のキレる人物がふたりもマークしてることから彦根先生が只者ではないのが伝わる。

  • No.321 by 風人  2016-10-05 12:43:35 

『ブレイズメス1990』と『極北ラプソディ』の世良先生の違いが凄い。
年月はひとを変えるというが、『ブレイズメス』の頃はまっすぐかつ血気盛ん手術したがり。だけど医者であることの意味を何かしら掴みとろうと悩む姿が実にいい。
『極北ラプソディ』では手術にほとんど触れることなくラストのクライマックスで今中先生を補助する時だけ。
反面、今中先生や他の事務員が勝手に院内のことをマスコミにしゃべらないよう釘を刺したりちゃんとお金を支払う患者さんの不定愁訴(愚痴)に長々とつきあったり黒字にするために節約やできることをしたりまるで別人。
『極北シリーズ』は今中先生を通して語られる物語だから。
今中先生の立場からしたら世良先生に市民病院が本当につぶされるかもと懸念したり自分や市民病院はどうなるのかある程度、先を考えないとならない。
『ラプソディ』で救命救急センターでの経験は何かしら考えること医者であることの意味を桃倉センター長や速水先生たちから悟らせられるともいえる。
『極北ラプソディ』では問題が解決しないまま物語が終わる、というのが逆に印象的。
問題は解決しないけど世良先生、花房さん、速水先生の関係に決着がつく終焉。
世良先生は神威島での経験も興味あるところ。『ラプソディ』内では語られるだけで詳細はちょっとぼかされてる。
世良先生の背景に花房さんをはじめ高階先生天城先生垣谷先生らがみえるようになる。

  • No.322 by 風人  2016-10-06 08:05:09 

田口先生の若い頃は『田口白鳥シリーズ』などの回想や邂逅などの場面や『ブラックペアン1988』で少しだけ出てくる。
だけど白鳥さんの若い頃については全体を通してもさほど語られていない。もちろんある程度、物語を通しての台詞や場面はわずかにはある。
映画『ケルベロスの肖像』では高階病院長に代わりブラックペアンを残した術者として桜宮小百合につるし上げはされる。
これを踏まえたとしても白鳥さんがいつ官僚になろうと思い決断したかは大部分は謎。
東城医大にAiセンターをつくろうとしたきっかけは彼も何かしら天城雪彦先生のスリジエハートセンターの失敗や挫折を直接ないし間接的に知ってたみたいに思える。

  • No.323 by 風人  2016-10-07 05:01:01 

選択肢が増えるのは良き可能性と悪い可能性も同時に秘めている。
天城雪彦は『ブレイズメス1990』では当初は頑なに日本行きを拒む。自分にとって不本意な選択をすることもあるからと世良先生に言う。
やや達観した視点を持っているのも天城雪彦の特徴のひとつ。
バブル三部作は近くて遠くにある未来の水平線とより近くて現実にある足下のふたつを描く視点がある。足下さえ見てない人間が未来を語る資質や資格がないと読者がいる“現実”に警鐘として伝える趣旨もあるかのように……。
『桜宮サーガ』の世界でもバブル時代は遠い出来事ではあるかもしれないけど『田口白鳥シリーズ』を含めた他シリーズにも何らかの影響は伝わっている。
高階病院長、藤原看護師、黒崎教授、世良先生たちは少なくともその時代を生きたから何かしら田口先生や今中先生に伝えたいものがあるのかもしれない。
黒崎教授の『凱旋』での速水先生への葛藤、本心の打ち明け、『弾丸』のコメディリリーフな役割などは80年代後半から90年代前半などいまのドラマにも通じる二枚目半(もしくは三枚目?)的なリアクションはそういう時代を彷彿させなくもない。
当初、黒崎教授は悪役かなとも思ったけど“必要悪”の側面を持つ対立軸を院内に持たせる人物でもあった。高階病院長や速水先生への複雑な思いや確執はあるだろうけど必要以上には悪役には徹しない潔さが黒崎教授にはある。
それもまた内に秘めた格好よさであり愛される人物。

  • No.324 by 風人  2016-10-07 06:28:00 

『ブレイズメス1900』では明らかに目を引くのは天城雪彦だけど、それとは対照的なのが薩摩大から東城医大へやってくる駒井という人物。
どう見ても医者よりは観光ガイドに向いている(笑)。
はじめは赴任したばかりの天城雪彦に反発を当然のように持ちながら調子のよさはあれど空気が読めない人物なのは読むたびに可愛らしくもある。
はじめのうちは調子はいいんだけどところどころで空回りしてしまう。
『桜宮サーガ』では田口先生は空気を読む人物、白鳥さんや彦根先生は雰囲気や空気をわざと破壊して進むタイプ。正確には相手や敵への牽制もあるからいちがいにすべてが悪意ではないとフォローする。
だけど、駒井という人物は本当に空気が読めない人物なのは気の毒。医学以外にもそれなりに知識が豊富なのが実にもったいなく笑いを誘う。
必ずしも『桜宮サーガ』の世界の登場人物は才能や人物評価などは比例しなくデフォルメされる。
黒崎教授などは二枚目半もしくは三枚目に書かれながら東城医大にとっては必要不可欠な悪役でありコメディリリーフ。
駒井もまたそこに通じる人物。
調子がいいのと知識が豊富なのは長所だけどおそらくそれが彼の半生のなかでは生きていない(苦笑)。

  • No.325 by 風人  2016-10-07 17:50:02 

本当にスリジエハートセンター創設は医療から“こころ”を奪う存在なのか。
『ブレイズメス』だけではわかりにくい。
だけど、天城雪彦先生の言葉には嘘偽りもまたない。
医療がカネ稼ぎや経済を優先することがいけないのか、というのもひとつのテーマになっているし後々の作品にもつながっているところ。
『田口白鳥シリーズ』ではオレンジ病棟が破綻、『極北シリーズ』で極北市民病院が一度は経営破綻し世良先生が医療債権請負人として経費を削れるところは可能な限り削り黒字を出しているも報われない。
『極北ラプソディ』の世良先生のやり方は全然ちがうように見えながらもどこか天城雪彦先生の経営理念に近く似てるところもないわけではない。
多少は“こころ”を世良先生が自覚しないままどこかで忘れていたようでもある。
まだまだどちらにせよ『桜宮サーガ』は欠けたパズルのピースがある。

  • No.326 by 風人  2016-10-08 08:52:31 

『ブレイズメス1990』で公開手術を行った天城雪彦先生だけど、見方を変えたらいまの時代のカメラやモニター技術、通信技術の発達で遠方からでも手術が行えたり指示ができたりあるいはある程度、患者や患者の家族も見ることできる。
『ブレイズメス』の公開手術はその走りとも言えなくもない側面もある。
“サーカス”という表現は思考の余地はあるだろうけど、患者や患者の家族にしたら手術の経過を知りたいのもある。
天城雪彦先生の公開手術は医療のひとつの透明化とも考えられる。
だけど、まだまだ時代が許さなかった一面がある。
天城雪彦が戦わなければならないの旧態然とした医療体制はもとよりもっと奥にある社会背景でもあるのだろうか。
深読みしすぎだろうか。

  • No.327 by 風人  2016-10-09 07:08:48 

『桜宮サーガ』内で不定愁訴外来はそれなりに有名なよう。
医療裁判をなくすには患者の不満をなくすことが大切なことと言える。
ちょっとした不満やささやかな誤解から医療裁判が生まれることもあるから。
『ナニワ・モンスター』の舎人町(とねりまち)では医療裁判はゼロという。
町の人たちの身体をつねに診療所が診て気遣う配慮がなされている。
解剖率も当初は100%と謳いながらも現実は80%になりながらも高い数字を保っている。
これらは彦根先生が大河内先生に提唱し実現し得たことのひとつ。
だけど彦根先生がやろうとしていることは創造と再生は表裏。
『ナニワ・モンスター』のラストも村雨府知事が“なにかをやろうとすればいつもひとりだ”みたいな邂逅に似る。
彦根先生と村雨府知事の進むベクトルは似てるようで違い最終的には交わらないとも示唆されている。
司法と医療の分離は海堂尊先生が架空の『桜宮サーガ』世界を通じて目指すところのひとつ。
医療庁は霞ヶ関ではなく浪速府にと彦根先生は願っている。
すでにその医療庁旗揚げへの資料は彦根先生と村雨府知事の手元にある。
彦根先生は局長の逮捕ではなく厚労省が持つ資料にあったという。
これらがいろいろな布石にまたなっているんだろう。

  • No.328 by 風人  2016-10-09 12:05:15 

今朝の報道2001で都心のドクターヘリが話題になってたけど明らかに病院の立地条件がヘリの発着には向かない。
『極北ラプソディ』でドクターヘリの活躍が事細かに書かれてたけど臨時にスーパーの駐車場を使うことも書かれてた。
だけどヘリ全般の弱点は送電線と書かれていた。
だけど役所の人間にはわからないんでしょうか。
市街地から少し外れたところにドクターヘリ発着の救命救急センターに必然的に都会はなると思う。私の地元でもドクターヘリがある医療センターは中心部から外れた少し郊外にある。
最近の東京は豊洲移転も含めて病院やドクターヘリなどいろいろ巻き込んでいる雰囲気。

  • No.329 by 風人  2016-10-10 05:15:20 

『桜宮サーガ』の物語の中心は桜宮、北海道は極北市や雪見市、関西は浪速府、東北は『ナニワ・モンスター』で少し舞台になっている。
名称においてのみだけど東北大、薩摩大が出てきている。
だけど、なぜか四国だけは玉村警部補や加納警視正の間でお遍路が話題になるけど警察捜査の手さえおよばないよう。
桜宮や東城医大、碧翠院および碧翠院跡地などと同様に四国に何かしら結界があるようにも書かれている。
『玉村警部補の災難』に収録されている「エナメルの証言」は四国がラスト舞台になりそうなところで終わりを迎えまんまと犯人の一味は逃げおおせる。
加納警視正が強権発動してたらおそらく四国が舞台になったか数行とはいえ事件解決の顛末がまたあったでしょう(苦笑)。

  • No.330 by 風人  2016-10-11 05:06:13 

『ナニワ・モンスター』にもそれぞれの人脈から物語の中心である桜宮に収束されるところもある。
冒頭、菊間徳衛先生が息子の祥一先生の助言により診療所に不定愁訴外来を儲けて、二部の検察鎌形さんを主人公に据える物語においては八神課長が桜宮という名前に嫌な思いを思い出すも具体的な内容はなぜか思い出せず斑鳩室長が桜宮で公報室長という立場を兼任しながら赴任。
白鳥さんは彦根先生と連絡が取れないのをぼやきながら国見淳子先生に霞ヶ関の内情とAiについてのレクチャーをしながら桜宮にもAiセンターを立ち上げることを伝えている。
そして三部目において彦根先生、村雨府知事をそれぞれ結びつけたのが天城雪彦先生であるのを示唆している。同時にふたりの前に立ちはだかる斑鳩室長。
“桜宮”がひとつの大きな結界を持っている可能性もあるしそこに人物たちを引き寄せる何かがあるのかもしれない。
田口先生の不定愁訴外来でさえひとつの“結界”と加納警視正は示唆している。
だけど四国だけは特別な結界なのかあるいは別の何かなのかはいまのところ不明。
北海道の南雲監察所も何かの結界だったと考えられる。だけど世良先生、彦根先生の手によって破壊された。
機能していない監察所は彼らからあるいは社会から不要と言わんばかりに。
“結界”の表現が今後どのような意味を持つのか。

  • No.331 by 風人  2016-10-11 07:58:46 

『極北ラプソディ』で世良先生がお金を払わない患者を一見すると見捨てているように見えながらも、なんとか地方行政にお金を捻出する方法を示唆をしているようにもみえる。
これが後々に『ナニワ・モンスター』の日本三分計画にもつながっているのがわかる。
世良先生がお金にこだわる姿勢は天城雪彦先生につながる思想と合致する。
医療債権請負人になった過去はわからないけど経済観念をちゃんと医療に痛みを伴いながらでも浸透させようとしているかもしれない。
世良先生自体も自らがその地域にとっては痛みを伴う存在と自覚はしている。最終的にその地域の病院が潰れる経験をしてきたからでもある。
極北市にちゃんとした医療の経済観念を伝える。そのためには患者であった人間が死んでしまうのはやむを得ないと思いながらも医者としては何かしら他人にはわからない葛藤があると思う。
助けられる命であっても助けられない時や場合もある。
『桜宮サーガシリーズ』はどの立場で読み考えるかで思考や感想はまるで違う一冊になる。
『バチスタの栄光』で氷室先生を変えたのは実験動物として扱われるモルモットたちを醒めた目で彼は見ていたから……。
『沈黙』においては本来なら早めに自首をしておけばことは大事にならずに済んだ可能性を秘めていた。
『凱旋』では速水先生は自らの立場より目の前に毎日いる救急患者。だけど速水先生のあたまには経済観念がない。
これがきっかけで速水先生は雪見市に飛ばされる。
だけど、見方を変えたらこの一件は雪見市救命救急センターには御の字でもある。速水先生が患者を呼ぶ体質で市民から批判されることはなくまた先輩である世良先生の要望にも応える形になってあらわれている。
『凱旋』の一件がなければ速水先生は北海道に来ることはなかった。
まあ現実にこんな都合のいいことは少ないけどそこは架空だから。

  • No.332 by 風人  2016-10-12 12:47:39 

『極北ラプソディ』の冒頭や後半で患者が先生に患者する描写が二度ほどあるけど読むうちになんとなくわかってくる。
お医者さまがいなかったら病気から救ってもらえない。
お年寄りや年配の人たちがお医者さんに感謝する気持ちはあたりまえなことだけどあたりまえなことを切実に受け止める気持ちは大切。
そこにどうしても経済事情や観念があるのは現代社会ではあたりまえなところ。
それが結果的には市民病院の破綻や救命救急の縮小などになってしまう。
『極北シリーズ』は全般的に市民や医者からの日常から医療問題を取り上げ掘り下げていきながら物語が進む。
けっしてハデさはないけど主人公である今中先生を通して伝わる物語。
お医者さまに感謝する気持ちが病院を支えている。
ムダを省きながら病院が安泰になっていけたら理想的だけど現実はむずかしい。

  • No.333 by 風人  2016-10-13 06:27:04 

天城雪彦先生の考え方はおそらくいまの時代でも受け入れはむずかしいと思うけどバブル時代ならなおさらだろう。
だけど登場人物たちに影響はかなり残していると思われる。
高階先生は病院長になりバチスタスキャンダルなど苦難や難題を抱えながらもスリジエハートセンターを何らかの形で潰してしまったことを悔やみながらAiセンターに託す思いがあり厚労省や坂田局長、白鳥さんらに協力を求める姿勢はギャンブルができないしない姿勢の反動や裏返し、あるいは日本的な姿勢ともいえる。
なかなか人間は己の思考や姿勢を変えるのはむずかしい。なら自分なりの方法に落ち着いたかもしれない。
それは世良先生にも同じことがいえるかもしれない。
医療債権請負人として地域地方の病院を立て直そうとしながら失敗挫折を幾度も経験したであろうは『極北ラプソディ』で語られている。
だけど無駄を削ぎおとしちゃんとお金を払う患者には快く対応しお金を払わない患者は拒否する。
医者がボランティアではない、のは『桜宮サーガ』内でも語られている。
世良先生が徹底した姿勢で黒字を出しながらも黒字倒産してしまう可能性もまた示唆している。
市が医療に予算が取れないのもあるせいで。
『極北ラプソディ』で極北市民病院および市が疲弊してるのは描写から伝わる。
市長や市職員が不真面目ではないこともつけ加える。彼らとて自らが招いた事態なのは自覚している。
『極北ラプソディ』は物語内で問題が解決しないまま終わる問題。
他シリーズはある程度、解決したり解決への兆しや希望を示唆する終わり方する。だけど『極北ラプソディ』はそれがない。
むしろ世良先生の長い旅が終わりを告げる物語。

  • No.334 by 風人  2016-10-14 06:04:54 

雪見市救命救急センターには桃倉センター長を中心にふたつの指揮系統がある。
伊達先生を中心とした空飛ぶ指揮系統、そして速水先生を中心とした飛ばない指揮系統。
速水先生はドクターヘリがあれば患者がすぐに自分のもとにやってくるから自分は乗らないという。おそらく東城医大にドクターヘリがもしも導入されてもおなじことを言ったでしょう。
今中先生が雪見市救命救急センターで半月働いてる時に興味深いことがひとつある。
よそ者である速水先生に世良先生のやり方を問う場面。
今中先生は結果的に雪見市救命救急センターに出向したことで自分の立場を見つめなおしまた他病院や他の市の意向などを目にする視野を持てたことで疑問を持てた。
速水先生はぞんざいな接し方やちょっと備品を無駄遣いすることはあっても救急医として優秀。
多少、雪見市救命救急センターでよそ者扱いされてても“将軍(ジェネラル)“は健在。
破綻のない意見を今中先生に伝える。
世良先生ができない事態を考慮し彼ができないのであれば自分がおこなうという。
ただそれだけ。
たんに先輩後輩の間柄でないのを匂わす。『伝説』でほんの少し触れられていた。

  • No.335 by 風人  2016-10-15 04:32:03 

日本ではお金の話題はデリケートというのはむかしもいまもある。
それこそカジノ構想などは猥雑な印象を与える。『ブレイズメス』でも天城先生と高階先生たち東城医大側に経済思想や観念に解離がある。
いまの時代でも天城先生の考えは浸透しにくいと思われる。
バブル三部作は若き日の世良先生を主人公に据えて彼の視点を通して物語が動く。
『田口白鳥シリーズ』の田口先生が消極的なのに対して世良先生は悩みながらも積極的に動くあるいは動かざる得ない。
バブル時代といまの時代のちがいもあるしいろいろな読み方ができる。
高階先生にしたら過去の失敗や悔恨があるからなにかしら田口先生や島津先生、速水先生たちに何かを伝えたい思いがあると思う。
世良先生、田口先生、そして天馬大吉とそれぞれの世代のちがいが読むたびにちがう。
天馬くんが将来、東城医大にとってどんな存在や役割なのかもわからない。

  • No.336 by 風人  2016-10-15 09:55:37 

組織の上に立つ人物は佐伯清剛病院長、高階権太病院長、室町病院長、そして『極北ラプソディ』で病院長の座についた世良雅史。
室町病院長はややコミカルに書かれ人望がない人物ではあったけど今中先生を巧みにあやつることはしてた。
佐伯清剛病院長は東城医大に高階先生や天城雪彦先生という人物を入れることで火種をいれそこに刺激を生みおそらくいまに痛みがあっても未来への改革をなそうとする意志を感じられる。
渡海先生を失った痛みもあるからなおさらかもしれない。
病院長となった高階先生時代の変遷もあるだろうから佐伯前病院長とはまたちがう。
大学病院の片隅にいた田口先生を次期後継者にするという考え、バチスタ・スキャンダルをはじめとした難題や事件を白鳥さんと共にではあるが解決し少しずつ大学病院の在り方や少し先の東城医大についても考えてきている。
高階病院長がいつ田口先生を次期後継者にしようとしたかは謎。
『チーム・バチスタの栄光』のラストで田口先生が試験をすっぽかしながらも卒業をしたことがふたりの間の賃借関係ではあったけど『弾丸』以降はほぼ互いに口に出していない。
島津先生は画像診断に長け速水先生は救命救急手術に長けているが経済観念はなし。
沼田先生は自分のテリトリーからは出ない。
『田口白鳥シリーズ』において論文を書いて実績をおさめている先生は他にもいるだろうけど高階病院長から未来の東城医大、ひいては桜宮の未来をまかせる人材がそんなにはいなかったと考えられる。
田口先生は不定愁訴外来、リスクマネジメント委員会、Aiセンター長などを経験したことで視野や思考は広がっている。
一見、優柔不断にみえながらも決断や行動ができるということ。難題や事件解決時は白鳥さんのサポートはありましたけど。

  • No.337 by 風人  2016-10-16 05:01:08 

『極北ラプソディ』全般の世良先生の発言や行動は一見すると合点がいかないことが多い。
だけどある程度の背景を理解したら納得いく。
東城医大の血脈や過去の背景などを通していったら大方は筋が通っている。
だけど三枝先生への支援については東城医大、極北大、帝華大などライバル関係にある各大学が枠を越えて(?)連携をしているように思われる。
この辺りはまた謎。
三枝先生の一件は他作品では司法の暴走などみたいに揶揄されまた失敗に終わるみたいなことからも何らかの形で解決へ道筋がたどったと思われる。

  • No.338 by 風人  2016-10-17 05:13:13 

バブル三部作で分化してしまった教室が後の『田口白鳥シリーズ』での院内勢力分化にもなり各教室の教授の権威にもなったともいえる。
権威はあってもバブルがはじけた時代以降は生徒がつかない教室もいる。
佐伯前病院長から引き継いだ高階病院長はこれらは自らが招いた事態ではあったけどどうしようもできないんでしょう。
リスクマネジメント委員会や沼田先生のエシックスコミュニティなど時代に合わせた組織形態の変化などもある。
大学病院という白い巨塔の内にはいろいろな人々の思惑もあれば権威の低下、医学生の教育など目に見えないいろいろなものが存在する。
地方の医大も人材不足もあってぎりぎりのなかおこなっている。
小児科医療、大学を手放してしまった市あるいは断固として手放さない地元。
小児科医療がないと親は子どもを預けることもできないし大学がないと地元の人間がどんどん他地域他地方にいってしまう人材流出につながる。
一見、つながりがないことが実は地元に直結していることと気づきにくい。
大学病院の教室分化もあれやこれや手を出して分化してしまえば特化的な教育になるかもしれないけど結局、現場では関係ないことのようでありながら実は関係あることを再び実地で学ばないとならないことになる。
医療の世界には難題に終わりがないかもしれない。

  • No.339 by 風人  2016-10-17 06:19:35 

世良先生が天城雪彦先生から受け継いだものは医療改革の精神ではなくなにか別なものだったかもしれない。
世界中を敵にまわしてもあとになにも残らない虚しさ。
速水先生に花房さんをあずけたかふったかわからないけど彼女は長い時を経て自分のもとに戻ってきた。
『ブラックペアン』では「となりのトトロ」をふたりして見て『ブレイズメス』では花房さんは世良先生の奥さんに勘違いされてそれとなく伏線は張られているけど『スリジエセンター』でおそらく挫折し東城医大を離れ別れたんでしょう。
医療債権請負人になぜ世良先生がなったのか。神威島に来るまでの間に全国を放浪し神威島で久世先生に救われ医療債権請負人になる決意をしたのか。
市民病院を安住の地とした世良先生は東城医大をどう見つめているのか……。

  • No.340 by 風人  2016-10-17 13:56:00 

『ナニワ・モンスター』を基点としながら海堂尊他作品を読むと日本全国の架空のシミュレーションにもなってるおもむき。
『極北ラプソディ』の監察病院つぶしもそのうちのひとつでしょう。
益村市長と世良先生は彦根先生つながりどつながりがある。
おそらく世良先生は極北市民病院の病院長になる前後と市長選挙の前後でつながりを持ち世良先生は彦根先生の存在を彼に紹介した。
おそらく彦根先生の戦略でしょう。
『ナニワ・モンスター』の三部目で益村市長が顔を見せてたことから明らか。
『イノセント・ゲリラの祝祭』で医療庁という花火、そして医翼という存在を知らしめる。だけどこれは霞ヶ関と官僚に示唆をしただけではあるけど彼らに目をつけられることになる。
そして浪速共和国独立を打ち立てる村雨府知事。そして道州制を掲げる各知事たちとの連携。
『ナニワ・モンスター』でのインフルエンザウィルス・キャメルの発症が中央からの火花が地方に向けられる意味合い。
無関係に見える思えることが実は経済封鎖という中央対地方の戦争という事実。
日本三分計画、ドクタージェット構想の大部分は見えている。
都道府県単位では予算は少ないけど北海道、東北、四国、九州などの道州制の単位にすればヨーロッパの国々に匹敵する予算というのも『ナニワ・モンスター』を読んでて感激したところのひとつ。
考え方が海堂尊先生は二歩三歩と前を向いている。

  • No.341 by 風人  2016-10-17 18:33:55 

『極北ラプソディ』をあらためて読むと世良先生の心境が最初と最後でぜんぜん変わってることに気づく。
はじめは医療債権人として以前とおなじようにやってただろうけど最低限、今中先生を将来に傷をつけまいと救命救急センターに派遣する。
だけど今中先生はほんの半月ほどで市民病院に戻ってくる。将来ある若者の将来を救う意思はある。
しかし市民病院を救うという意思はあってもできることは限られる。たぶんそれゆえに極北市に来るまでの間にいくつかの地方病院がつぶれて挫折を味わったと思う。
だから極北市にはじめて来た時もそれまでと変わらないだろうというあきらめが本心がどこかにあったんでしょう。
だけど今中先生は戻ってきてしまった。
そしてドクタージェット構想のトライアルの際に運命の悪戯かかつての恋人であった花房さんとの再会してしまった。
花房さんとの過去をおそらく捨てたけど彼女は速水先生とは結局うまくいかず北海道でマスコミ通したり講演会を通して世良先生と出会う。
今中先生は戻ってきたし花房さんも極北市民病院付けの看護師になってしまう。
これではおそらく市民病院がつぶれるわけにはいかないと覚悟したんでしょう。

  • No.342 by 風人  2016-10-18 06:44:41 

『極北ラプソディ』の世良先生の対マスコミ戦略、対市役所戦略はやり方はともかく理にかなっていることもある。
マスコミが移り気なのは他作品でもたいがいは語られている。
東城医大は事件でたびたび作品世界で報道されているけどちゃんと誠意ある対応をマスコミや市民についておこなえばさらされることはない。
それは『極北ラプソディ』でもおなじ。ただし世良先生は新聞各社ではなくネットを通した訴え。
これもいまの時代の在り方。
市役所に対しては必要以外なことは口に出さないだけ。
黒字経営しても再び病院が破綻する原因が病院ではなく市役所の対応にあるということ。予算がなければ人員はおろか薬も買えない。レントゲン検査ができない。
だけど神威島の久世先生はいう。“世の中そんなに悲観したものではない“と。
世良先生のやり方が悲壮感あるものに久世先生にはマスコミを通してそう見えたんでしょう。
『極北ラプソディ』で彼なりに光りを見つけた世良先生、花房さんが一緒にいるからたぶんだいじょうぶと思う。
だけど今中先生は恋愛の要素がない。これは『田口白鳥シリーズ』の田口先生もだけど。
いつこのふたりが恋愛をしてくれるか気になるところだ。

  • No.343 by 風人  2016-10-18 08:55:10 

日本三分計画をたてる彦根先生、霞ヶ関の闇を掌握している斑鳩芳正。
どちらが悪人かといえばどちらも悪人でしょう。
彦根先生は巧みにひとを利用し操ることに長けて逃げることもうまい。
斑鳩芳正は不要となった人間はたとえ味方や内部の者でもその命さえ利用する。
彦根先生はひとの心や気持ちを多少は踏みにじることもある。だけど命はおそらく奪わない。
斑鳩芳正は命を奪う。
ある意味、このふたりも鏡のように表裏一体なようにも映らなくもない。
『輝天炎上』での彦根先生と斑鳩芳正の対比、これが『ナニワ・モンスター』そして続編『スカラムーシュ・ムーン』(未読)につながる。
『ナニワ・モンスター』で互いの目的が明らか、浪速府につくるであろうAiセンターの存在がふたりの勝敗を決するであろう。
その鍵は村雨府知事。臥竜たる彼が大きく左右するかもしれない。

  • No.344 by 風人  2016-10-19 09:27:29 

村雨府知事はどうしても橋下徹さんにかぶる。
浪速共和国、西日本連合これらは壮大。
だけど現実に置き換えたら無理そう。
天城雪彦に『桜宮サーガ』の人物たち何人かは影響を受けている。
高階病院長、黒崎教授、世良先生、垣谷先生、彦根先生、村雨府知事、『バチスタ』の桐生恭一先生、マリッツィアを通しての桜宮姉妹など。
天城雪彦、バブル三部作のなかで光彩を放つ。
『ブレイズメス』においてはまだスリジエハートセンターの前のセレモニーだから物語が中途になっている。
だけど天城先生を守れるのは世良先生だけと気になる一言。
後々の物語において天城先生を誰もが語りたがらない。
高階病院長は田口先生に、世良先生は今中先生に伝えている。
それぞれの形であまりいい形に終わらなかったと想像はできる。藤原看護師でさえ語らないのはスリジエハートセンターがつぶされなくなったのは当時の東城医大、あるいは桜宮市に大きな悔恨を残したと思われる。

  • No.345 by 風人  2016-10-20 05:50:22 

『桜宮サーガシリーズ』に時おり『ウルトラマン』『ゴジラ』『ガメラ』『ゲゲゲの鬼太郎』など他作品の名前が出てくることある。
おそらくウルトラシリーズなど未来が希望溢れる時代だった過去と21世紀をすぎてもフィクションに科学技術が追いついても人間(の中身)が意外にも技術発達をいいことに生かせないあるいは何かしらの虚しさが田口先生や今中先生を通して宿っている。
あるいは書き手である海堂尊先生の内にそんな思いが現実と離れたところにあるのかもしれない。
あえて他作品の名前を出すことフィクションの科学技術を通して医療に訴える何かがあるのかもしれない。虚しさも含めて。
『モルフェウスの領域』のコールドスリープ(冷凍睡眠)はまだまだ現実に出来ても海外でもたぶん法整備さえ追いついてないと思う。
実際におこなったら『モルフェウスの領域』同様にいろいろ法律の壁が被験者や医療従事者、あるいは被験者の保護者などを阻むでしょう。
そういえば世良先生と西野さんはいつ知り合ったのか?『極北ラプソディ』ではすでに互いを知ってたようだけど。
西野さんは一見するとややイヤな男性だけど、涼子さんについてはひとつの思いはあると思う。不眠症や少し屈折した部分はあると思うけど。
涼子さんや西野さんは孤独を知り理解している人物。その対比に如月翔子がいる。
そういう風にも『モルフェウスの領域』は読める作品。

  • No.346 by 風人  2016-10-20 07:23:22 

速水先生は孤独と表現するより孤高。
東城医大にいても雪見市救命救急センターにいても。
だけど『ケルベロスの肖像』のボーナストラックで直接は出てこないけど如月翔子が医大で待ってくれている。
速水先生は患者を救うためなら経済観念はないしヘリパイロットのルールさえ無視させる。ある意味、子どもではある。
だけど“ジェネラル(将軍)”には基本だれも逆らえない。そういうルールを東城医大でも雪見市救命救急センターでもつくってしまった。
したがう人たちは大変だけど命を救うために間違ったことをしてるわけではない。だけど、社会や会社にはある一定のルールがある。
それに逆らっている限りは速水先生は孤高なまま。
いずれ東城医大に帰った時に如月翔子さんが受け止めてくれるでしょう。その時に“大人”になってるかどうか(苦笑)。

  • No.347 by 匿名  2016-10-21 11:55:55 

本来なら『極北クレイマー』のラストで市民病院が破綻した時点で今中先生は大学に戻るのが現実の姿勢と思う。
だけど物語内の今中先生はあえて残った。出世が目的でもなく市民病院や市民病院に来る患者のためあるいは自身のためか。
『極北クレイマー』のラストは世良先生の登場で希望になったはずが、『極北ラプソディ』の冒頭では希望さえ潰えたような印象さえ与える。この落差は読んでて驚いた点。
だけど後半にほんの少しだけ黒字経営という兆しはみえる。兆しがあっても全体として微々たるもの。
ちゃんとお金を支払う患者には薬を減らす治療をして愚痴や世間話に耳を傾け不定愁訴外来をして患者を心身ともに治療してゆく。
そういうあたりまえなことをしていけば黒字にもなる。
だけど極北市にはそれが根づいてなかったし室町病院長や先々代の病院長が現代に残した負の遺産。
だけど一度は破綻した病院に残る姿勢の今中先生を描くのはフィクションならではだけど現実にそうあってほしいというのも海堂尊先生の願いのひとつと思われる。
ある程度、『極北ラプソディ』でも世良先生は今中先生を救命救急センターに派遣する形で彼の将来を傷つけまいと救済措置をぶっきらぼうながらにしている。
おそらく現実の医者に対しては“こういう判断もありうるんだ”と伝えてもいるかもしれない。

  • No.348 by 風人  2016-10-22 05:49:29 

『スリジエセンター』が未読だからわからないけどそこで世良先生は挫折したんでしょう。
本来なら桜宮に根ざすはずが挫折を経験し佐伯外科のキャリアを捨て放浪した。そして神威島と久世先生に救われた。
その後、何らかの経緯があって医療債権請負人になった。
佐伯外科のキャリアを捨てる覚悟ができるまで医療債権請負人になった後もおそらく苦い経験ばかりだったでしょう。
地域地方の病院が救えなかったから。世良先生は自然と世界を敵に回すような生き方しかできなくなった。
ひょっとしたら医療債権請負人という第二の生き方でさえもどこかで絶望や悲観があったと思われる。
花房さんと別れてまでというのも天城雪彦先生とスリジエハートセンターの存在はそれほど大きかった。
だけど花房さんは長い時を経ても世良先生を待っていた。女性にしたら十数年はさほどでもないのかわからないけど。

  • No.349 by 風人  2016-10-22 12:43:12 

『極北ラプソディ』の戸田整備士は目立つ人物ではないけどドクターヘリ側においては欠かせない。
越川さんほどではないけど作品内でドクターヘリについて説明したり越川さんや大月さんのフォローを影からしてくれる。
ほんの少し大月さんと五條さんのラブフライトを応援してくれる。
速水先生の活躍に目がいきがちだけど戸田整備士がいないとドクターヘリもまた飛べない。

  • No.350 by 風人  2016-10-23 10:57:56 

『輝天炎上』を読むと天馬大吉、冷泉深雪は平成生まれの世代の雰囲気。
昭和世代の田口先生たち大人とはやや世代の壁や境界があるともいえる。
それは大学病院という箱の中の世界も時代ごとにちがうのかもしれない。
天馬大吉をいちがいに不真面目とは思わない。彼なりに桜宮巌雄から託されたものは内にいきている。
ただ別宮葉子や冷泉深雪と異性に振り回され若い時間を謳歌し悩んでもいる。
基本的に『桜宮サーガ』は田口先生に対する白鳥さんのようにだいたい“対”で書かれている。
『輝天炎上』の天馬大吉の対は冷泉深雪ともいえる。かたや留年生、かたや優等生という対もあるけどそれ以外の意味も物語内に含まれている。
冷泉深雪のまっすぐさは『桜宮サーガ』の物語全体を考えたら『輝天炎上』においてはまだまだ彼女にとってはスタートでしかないと思われる。
医学生としてあるいはその先にあるのは前へと進む道かもしくは他の人物のように苦い挫折をするのか。それはわからない。
だけど天馬大吉という存在によって医療が必ずしも輝ける未来ではないという一面はおそらく理解はしてる。しかしそれを受け入れるかどうかでまたちがう歩みもあると思われる。
その辺ももしかしたら未来の東城医大、桜宮を左右することもあるかもしれない。

  • No.351 by 風人  2016-10-30 04:48:57 

医師が目の前の患者を救うことに必死になるというのはおそらく大半の医師がそうしているあるいはそうせざる得ない状況だからと思う。
日本的な思考としてはそこに経済観念もしくは金儲けの思想を持ち込むことは“医は仁術”の思想に反するから従来からタブーとされてたと思う。
だけど『ブレイズメス』の天城雪彦なる人物を海堂尊先生は生み出したのか。
そこにひとつの答えがあるように思われる。
現代の時代が医療破綻したことへの答えがバブル時代にあるのか天城雪彦にあるのか。
後々の『桜宮サーガ』の時代においては東城医大オレンジ病棟、極北市民病院が一時的に破綻、マリアクリニックも未来においては不透明。
この三例をとっても経営が行き届かなくなる。
だけど過疎である離島の神威島は高度な治療や手術はできなくても病気の早期発見はできまた患者を毎日診ることで医者と患者が共存している。
神威島に似た例は『ナニワ・モンスター』の舎人町(とねり)。
患者が何を求めているかということにある種の集約はされる。
東城医大においても病院長室よりもファミリーレストランが階上にあるというのも時代や病院の象徴と思う。
すべてに行き届いた治療やサービスは現実においてもまだまだと思う。
だけど東城医大に限らず日本の医療が破綻するのを『ブレイズメス』内で天城雪彦先生は予見をしている。
だけど彼は先鋭的にやり過ぎたんでしょうか。
海堂尊先生の書く人物は人となりがシャープかつ二歩三歩先をゆく人物が目立つ。
だけど反面敵をつくりやすい状況もつくる。
『ブレイズメス』においても高階先生はラストに天城雪彦先生のやり方は受け入れられない姿勢を見せる。

  • No.352 by 風人  2016-11-01 09:48:34 

『桜宮サーガ』のシリーズを読むとある程度、医療関係のニュースに耳を傾けることある。
いつもではありませんけど。
地元の医療センターがおそらく新棟を建てているみたいだし『桜宮サーガ』劇中の物語に重なる。
またドクターヘリや厚労省関係のニュースもなんとなくは気になる。
あと過疎地域の診療所の話題など。
医療が身近に思える。
それでもまだまだ読めてない作品が多々あるから作品世界は謎だらけ。
いまの医療従事者たちは経済観念に悩み苦しみながらあえいでいるんでしょうか。
『ブレイズメス』から他のシリーズから波及を考えたら現実に伝わることから多くあるように思われる。

  • No.353 by 風人  2016-11-02 04:14:39 

新装版の『螺鈿迷宮』を中古で買ったけど刷行のところを見たら第3刷だった。
海堂尊先生の作品は新装版になっても読まれているのが伝わる。
海堂作品は上下に分かれてるのが常だけど新装版になって出るのは読みやすくもたのしい。
『螺鈿迷宮』そのものに関しては時代は平成時代と同じ時の流れだけど作品の冒頭や舞台となる碧翠院に昭和時代の面影やおもむきがある。
桜宮巌雄先生が『ブレイズメス』の頃は東城医大もしくは佐伯清剛病院長と蜜月だったのはうかがえる。だけど高階病院長は欲張ったんでしょう。
光と闇は同時に取り込めない、とラストに言い残しそれは後の作品で東城医大は徐々に変えていかなくてはならない。
天城雪彦先生の理念や思想、桜宮巌雄先生の信念や遺したモノそれらは形を変え有形無形として人物たちの心や気持ち、もしくは“結界”という形で取り巻くものではないだろうか思われる。
天馬大吉、冷泉深雪などの若き医学生が如何なる道を選ぶのか、というのも未来の桜宮もしくは医療の在り方を問う。

  • No.354 by 風人  2016-11-02 17:29:24 

桜宮サーガ内で解剖が行われた場面があるのは、『螺鈿迷宮』と『極北クレイマー』だけだったかな。
どちらも食事時に読むと食欲をなくす場面でもある。
けど死に目を向けろ、というのも桜宮サーガの一貫した姿勢でありいまの医療が招いた現状のひとつでもある。
医者、警察とアプローチは違えどメッセージとして訴えているところはおなじ。
『玉村警部補の事件簿』の「青空迷宮」にせよ真犯人は殺害された被害者が知っておりそれを加納警視正と玉村警部補が突き止める。
バブル三部作の昭和時代の医療がよかった、というのはリアルにむかしのお話。
手術も高度化にもなるけど医者や医学生が育たない時代でもある。
『螺鈿迷宮』から『輝天炎上』の天馬大吉くんの成長は素晴らしい。本質は変わってない面もあるけど(苦笑)。
『ケルベロスの肖像』と対比したら『輝天炎上』互いの表裏はおもしろい。
田口先生は『肖像』においてはAiセンター会議で一番上の席に置くけど実際は高階病院長らのマリオネット。
だけど『輝天炎上』の天馬くんから見たら権威があり権力があり実は実力あるのでは?と疑われる(苦笑)。
どちらも見方は正しいと思う。本人や他人のちがいはあるけど物事の受け取り方はひとによる。
いちがいにどれが正しいかは絶対ではないと思う。
人間はなかなか自分を見ることはできないから。

  • No.355 by 風人  2016-11-03 10:34:52 

『螺鈿迷宮』をあらためて読むと碧翠院側がかならずしも悪い側には読めなくなる。
地域のサテライト病院として“闇”を背負い抱えてきた長い年月。
ひとの“死”を 背負ってきた地域病院。
それを己の利益優先のために潰そうとする高階病院長と東城医大、そして白鳥さんと姫宮香織。
もちろん自殺や安楽死はいけないと思うけどひとが次々と亡くなる碧翠院の怖さ。
だけど巌雄先生たちは最後まで抵抗する。そして娘に託す思い。
続編『輝天炎上』のラストに至るまで読んでも桜宮小百合・すみれがどちらとも実は生きているようにも思える。
桜宮巌雄先生の意思は清川司朗先生などに受け継がれているわけだし。
東城医大の血脈とはちがう形で彼の意思は天馬くんや清川司朗先生、そしてふたりの姉妹の内で生きている。
『輝天炎上』ですみれや小百合が亡くなったとは思えない。
あり得ないことが『桜宮サーガ』のシリーズでは起きるから。
まだ医療の未来はわからないものだし。

  • No.356 by 風人  2016-11-04 05:12:54 

『輝天炎上』での天馬くんと美智さんの再会は何を意味するのか。
たんに再会だけではないのは『肖像』での田口先生と美智さんの治療や愚痴を兼ねたいきさつからでもわかる。田口先生は美智さんの内にすみれを見ている。あるいは見ることができた。
なら天馬くんにとっては?
医学生として初めて触れた患者が高原美智であった。過去への邂逅ではない何かを彼に託すために高原美智さんは二年もの間生きていたと思われる。
『肖像』ではおおざっぱにしか描写されてないのを『輝天炎上』では天馬くんを通して事細かに描写されている。
田口先生が大人としてやらなければならないことが多くあり田口先生の物語にとっては美智さんは一患者。忙しいなか毎週のように治療の具合や愚痴を聞いてカルテに記す。
だけど天涯孤独の天馬くんには数少ない家族同然な人物。そのぶん情や気持ちがある。
しかし将来、医者になる上で何が必要かというのも美智さんが亡くなった直後に田口先生や田口先生が記したカルテを通して問われる。
患者が延命治療を望んでいないというのもある現実。
『輝天炎上』で天馬くんと美智さんの場面は決して長くはない。むしろ短いけど中身は濃い方。
涙を誘う場面のひとつ。

  • No.357 by 風人  2016-11-04 12:11:36 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』は読み方を変えたら『スカラムーシュ・ムーン』の浪速の死後画像センターへの布石とも読めますね。
『ナニワ・モンスター』で作品世界の日本地図がだいたいあらわになった。そこからシミュレーション的に各人物が事細かに桜宮、霞ヶ関、浪速などから動いてるのがわかる。各人物は駒のようでもありまさに医者、官僚、政治家などが各々の思惑で動き動いている。
彦根先生を白鳥さんは本気で警戒してないまでも斑鳩芳正はどの作品に登場しても不気味さを醸し出す人物。
とはいえ“火喰い鳥”である白鳥さんは『弾丸』で怒りの表情は見せたものの『ナニワ・モンスター』では斑鳩室長らのルーレットの存在を知りながらも手を出す様子は一切なし。あくまで知り理解はしてる程度の理解に留めている。
若き官僚としては迂闊に官僚の闇に触れることを暗に知っていると考えた方が自然。
だけど斑鳩芳正が医療が主導になるのを許さない背景はたんに警察官僚ということでしょうか。
南雲忠義、桜宮小百合ほどに個人的感情や気持ちがはっきり見えない人物だから掴みどころがない。
『スカラムーシュ・ムーン』を読めばまた何かわかるとは思うけどなかなか中古書店で見かけない、(;´д`)。

  • No.358 by 風人  2016-11-06 18:00:05 

『ケルベロスの肖像』はややもするとおおざっぱ。
だけど田口先生が桜宮小百合の生存を知らないのは何かの伏線にも思える。
『輝天炎上』の表裏の関係。『輝天炎上』において小百合は東城医大に手紙を出しのちにAiセンター長が田口先生であるのを知る。
これがただ知ったというだけならともかく未来への伏線としたら物語に影響があるんじゃないだろうか?
真実、『輝天炎上』ですみれ小百合姉妹が亡くなってたとしてももしも小百合が誰かの子を身籠っていたら……とも考えられる。そしてその子が未来の桜宮や東城医大を守るとか……。
さすがにそれは想像力を拡大しすぎか(苦笑い)。

  • No.359 by 風人  2016-11-07 05:44:08 

自分の中で小百合とすみれが入れ替わっているのはドラマ『螺鈿迷宮』かあるいは『桜宮サーガ』全体の情報量の多さか(苦笑い)。
けど『ケルベロスの肖像』をあらためて読むと『ブラックペアン1988』からのバブル三部作は現在に至るも尾を引いてることが伝わる。
『肖像』『輝天炎上』については人物からの視点で読めるのはもちろんだけど過去(の作品)からも読めるという視点。
マリッツイアと小百合の関係も合点がいく。
天城雪彦の無念をどこかで晴らしたいという心情があるのか。
『スリジエセンター』で何があったかは私は未読なので知らないけど『肖像』の高階病院長は天城雪彦が植えるはずのスリジエ(桜)の樹を引っこ抜いたことを彼は後悔していた。
『ブレイズメス』のラストで敵意を露に燃やしていた高階先生、だけど時を経るにつれ後悔が何かしら芽生えてきた。
田口先生から見ても高階病院長は伝説多い人物。
黒崎教授は一見すると高階病院長に隠れがちだけど『田口白鳥シリーズ』における院内対立の必要悪でもあり時にコメディリリーフ、病院長代行、口では悪態をつくものの田口先生、速水先生ら次の世代に何かしらの期待とあえて対立する立場にいることで東城医大に必要不可欠な人物。
小物なように見えて意外にしたたかというか器用貧乏ではないだろうか。
『肖像』のラストで田口先生に悪態をつくのは信頼の裏返し。院内対立としていえば自分の配下が後継者にならないのは本音を口に出せば残念と思う。
だけど高階病院長が選んだ後継者なら使われてもいいという度量はある。
黒崎教授を主役に据えたコメディな物語を書いてほしいところでもある。

  • No.360 by 風人  2016-11-07 08:50:11 

冷泉深雪は『肖像』と『輝天炎上』といまのところ活躍が少ない。
『輝天炎上』で人となりは浮き彫りだけど。天馬くんにちょっと手を出されたりはにかんだり。
じゃじゃ馬な別宮葉子とは対照的であり桜宮姉妹ともまた異なる魅力。
若いぶん真っ直ぐを画に書いたような大人になりかけの美少女と言える。
天馬くんからみれば幼馴染みではないヒロインのポジションに位置する彼女。『輝天炎上』では碧翠院のことを知らないがゆえに天馬くんと接点を持ちながら知っていき関係が少しずつゆっくり進む。
だけど天馬くんと葉子さんから幼馴染みでないから時に仲間外れにされそうになるのが嫌なのか首を突っ込んでゆく。
天馬くんと同級生でなおかつ優等生、また融通が利かない。だけど先輩である天馬くんにはそこそこフォローしちいさくチクリと刺す可愛らしさもある。
『輝天炎上』ではAiセンター絡みや医療にとっての“死”については天馬くん同様に彼女なりに考えるけど優等生らしく自分の範疇を越えた考え方ややり方には納得しない一面や大人社会の医療としての壁に突き当たる。
ところどころに悩むところはあるのも特徴。
『輝天炎上』を彼女視点で読めば先輩である天馬くんにほのかな恋に近い感情や気持ちを抱いているのでは?と思わせる場面はある。
東城医大の医大生のなかで偏見なく見てる唯一の異性といえなくない存在。
反面、純粋かつまじめで正義のカタマリみたいなところがあるから逆に世の中のけがれや裏を知らなく知った時に対処できなく悩む一面があるのが彼女の魅力のひとつ。

  • No.361 by 風人  2016-11-07 17:12:50 

高階病院長がいつ田口先生を次期病院長候補にしようとしたかは謎だけど、『肖像』から遡って考えたら『凱旋』の速水先生の収賄の件を黒崎教授はウィーンから帰った直後に委員会を開いた場で目の当たりにしてる。
この時に田口先生が委員会を開いているのを知っている。見方を変えたら“高階が選んだ小僧がどう解決するか”を見定める機会でもあったと思う。
『凱旋』においては本来の目の上のたんこぶである速水先生に本音を吐き出しながらも彼が東城医大そして桜宮に必要であるのを認めている。
だけど速水先生と同期の田口先生、島津先生には特に言及していない。
田口先生には委員会をスムーズに進めるよううながしながら最後は疲れたからと退場している。
そして『凱旋』の顛末は後々、高階病院長から速水先生が極北に行ったぞくらいは伝えているはずなのは想像つく。
『弾丸』では高階病院長が逮捕され不在ななか誰が大学病院を一時的に任せられるかとなったらNo.2の黒崎教授しかいない。
白鳥さんに言いくるめられ田口先生と白鳥さんに事件解決を任す以外にはない。
テレビドラマにエキストラ出演したとあったけどたぶん本音は心労があったんじゃないのかと想像できる。
『弾丸』のラストでいつも面倒事をワシに押しつけての言葉は同じ時代を東城医大で過ごした者だから高階病院長に言える信頼の裏返しでもあったと思える。

  • No.362 by 風人  2016-11-08 05:03:47 

高階病院長にとっても渡海先生と天城先生は影響があったと思われる。
本来なら高階先生と渡海先生は真正面から戦わなければならないのを渡海先生の勇み足からふこうなすれ違いがあって戦わずして渡海先生は東城医大から去ってしまう。
渡海先生が海外に渡ったいきさつはいささか不明ながらノルガ共和国にいるらしい。『モルフェウスの領域』ヒロインの涼子の回想にて登場している。
そして天城先生については『ブレイズメス』にて他の医師同様に相容れない姿勢を見せて物語の流れから天城先生からみてライバルに位置する。
未読な『スリジエセンター』にて天城先生を何らかの形で失脚させ彼を失意のもとへ追いつめたと考えられる。
『ブレイズメス』で分化しすぎた教室、高階先生のもとで統制されていったことを佐伯病院長は満足しておらずあえて火種となる存在である天城先生を自ら招いている。
だけどそれがおそらく互いに悔恨を残す結果になったとも考えられる。
『ブレイズメス』の時点で天城先生は好き勝手にやっている。
それは助教授であった黒崎先生であった彼の目に余る行為。だけどそれは佐伯病院長の庇護下でもあるから何も言えない。
佐伯病院長は渡海先生が去り高階先生と黒崎助教授では満足がいくことはなかった。天城先生の招致であえて破壊を伴う創造をしてると思われる。
この辺の考え方は彦根先生に継承されるよう。

  • No.363 by 風人  2016-11-08 07:05:14 

書き手の海堂尊先生にしてもかんたんに国家は変えられないのはおそらく理解はされているでしょう。
あくまで架空の『桜宮サーガ』の世界を通してこういう考え方もあります、提示(プレゼン)してるとも考えられる。
『イノセント・ゲリラの祝祭』の医療庁、『極北ラプソディ』のドクタージェット構想、『ナニワ・モンスター』の日本三分計画などひとつひとつのパズルの組み合わせは壮大。
『祝祭』でしたか。医療あっての国家という発言。国家が疲弊するなか国家を支えるのは国民。
だけど国民を支えるのは医療という土台。それが崩壊した現代に何が医療にできるかという提唱。
Ai(オートプシー・イメージング)による画像診断、『ナニワ・モンスター』での解剖率百パーセント(実数は八十ではあるが)、市民が安心して健康に生きられる社会。
だけど現実には壁がいくつもある。
医療と司法の対立は続く。『スカラムーシュ・ムーン』で如何なる決着をつけたか私は知らない、未読だから。
だけど、各々の作品を読むといろいろな人物たちの思惑思想感情気持ちなどが複雑に絡む。
現実の社会とほとんど差がないくらいに詰まっている。

  • No.364 by 風人  2016-11-08 14:17:45 

彦根先生と斑鳩室長の間に勝ち負けがないというのも大人のものの考え方のひとつでしょう。
『肖像』を読んだ時にその文面があった時に意外に思えたけど後々、また読んだらああそういう関係でもありそんな見方が互いにあるんだと思う。
だけど『ナニワ・モンスター』の日本三分の計や『極北ラプソディ』の南雲監察病院潰しなど見たら日本地図の塗り替えにもみえる。
世良先生もほどよく彦根先生に使われている身。極北市の益村市長への体のいい伝言受け渡し人?
斑鳩芳正個人にはある特定の思想はないかもしれない。ただ医療から国家を守るために徹しているのかもしれない。
警察主導という思想はあるけど口に出すことは少ない、彼なりの司法の担い手とも解釈できる。
本当の本意はわからないけど。
『肖像』『輝天炎上』で双子の桜宮姉妹は炎に包まれた。仮にすみれが生きてたとしても表だって支援や支援者は募れないはず。
仮に生き延びていたら斑鳩・南雲親子のラインは残っているはず。
この辺も実情は謎ありき。
どの登場人物もすべてではないにせよ桜宮というひとつの都市もしくは結界に集約されてもいる。

  • No.365 by 風人  2016-11-10 06:15:06 

『ケルベロスの肖像』をあらためて読むと、Ai会議に総勢17名いるでしょうかね。
大半はオブザーバ参加だけど。
だけど会議にほとほと疲れる田口先生、かたや『輝天炎上』で素晴らしい会議と評しながらどこか空虚だった若い天馬くんたち。
大人と学生ではものごとの受け取り方がちがうのを端的に表現している点かもしれない。
空虚と評した冷泉深雪は本質的にAi会議に参加した真犯人が醸し出す雰囲気を無意識に嗅ぎ取ったかもしれないのではとも思う。
彼女が桜宮一族に縁がない、真っ白な無垢さゆえかもしれないのは深読みでしょうか。

  • No.366 by 風人  2016-11-10 10:21:14 

インフルエンザの注射は『ナニワ・モンスター』で触れられていたかな。
むかしは全国的に学校などで施行されていたけどいまはおこなわれていないという。
『桜宮サーガ』の物語を読むと現実とフィクションを通して現実にある思惑がみえ隠れする。
メタボやインフルエンザも国というよりは官僚にいいように操られる。
『ナニワ・モンスター』の徳衛医師みたいに国や官僚の思惑に疑問を持っても一市民は何も言えないのが現状。
だけどそこにメスを入れるのが彦根先生。
あの手この手の人脈を使い村雨府知事、検事鎌形、テレビメディアを使いインフルエンザウィルスキャメルのパニックから浪速府を救う。
『ナニワ・モンスター』においてはキャメルによる経済封鎖から国に無血クーデターを起こすであろう浪速府や他地方を救うことで物語は終わる。
だけど彦根先生は次に新たに処方される新薬をめぐっての利権争いが起こることを予見をしている。それが『スカラムーシュ・ムーン』にもなっているはず。
『ナニワ・モンスター』を基点に読むと『桜宮サーガ』が架空のシミュレーションに読めてしまう海堂尊先生の作風作品世界の見事さ。
『バチスタ』からの桜宮から日本地図へと広げてゆくスケールアップ。
『ブレイズメス』ではわずかながらほんの二章分ながらフランス・モンテカルロおよびモナコ公国が舞台になる。『イノセント・ゲリラの祝祭』でもわずかにドイツが描かれている。
あと『弾丸』で高階病院長がモデルガンにハマッていることからアメリカにいたことも断片的に書かれている。
これらのことから日本だけでなく世界に目を向けている節もある。
『肖像』のラストでAiセンターで小百合に破壊はされたが、Aiの理念や思想は世界に綿毛のように翔んでいく希望的思いからも伝わる。

  • No.367 by 風人  2016-11-13 06:14:46 

カジノ法案は現実の世界はようやく審議入り。
『桜宮サーガ』の世界では天城雪彦先生のなかでは確立されてはいるけど彼は政治家ではなく一医者。後に村雨府知事にカジノ構想は受け継がれる設定になっている。
現実の橋下徹府知事および市長時代の構想が『桜宮サーガ』にスピンオフされそれが医療にも繋がる形としてあらわれている。
『ブレイズメス』では“日本人は重い腰をなかなか上げない”みたいな台詞でカジノ構想が頓挫するのは外国人からそう見られている。
海堂尊先生の表現は先鋭的、だけど的確にとらえている一面もある。
とはいえ主人公側が相手側に勝ってハッピーエンドということもない。
ひとつの物語がそこで終わってないからでしょう。次へ次へとゆっくり大胆に人物や世界観を広げてゆく。
だけど必ずしもその物語にとっては過去のことでも風化させないようにあちこちの物語に散りばめられて存在している。
過去の事象は現代の世界や人物たちに影響を与え現代の人物たちの事象はほんの少し先の未来の世界や人物にまた影響させている。

  • No.368 by 風人  2016-11-13 15:25:00 

『輝天炎上』で別宮葉子はアグレッシヴに書かれているけど冷泉深雪は優等生ゆえにやや一部は融通が利かない。
ふたりの間に天馬くんはふたりの性格や内面に引っ張られるからある程度は柔軟にやってのける。
そのぶん異性に引っ張られて損をする。
甘いことを言ってもあるいは女難(?)をかわしてもまた別な形でやってくる。
異性にうかつなことは言えないやってはいけない、とつくづく感じながらも別宮葉子も冷泉深雪も天馬くんから離れない。
別宮葉子は天馬くんの“運”を変えた“幸運の女神”だからおそらく離れることはない。
なら冷泉深雪は?ということになる。
『輝天炎上』においては死因究明社会の問題をレポートの題材にし再び天馬くんはAi(画像診断)、解剖などを学ぶために東城医大内の各教室、浪速府、房総などをふたりしてすすむ。
冷泉深雪は立ち回りがそれなりにうまいけど融通が利かない、だけどそれは彼女の内のちいさな世界ということ。
物語が四部に移りAiセンター会議にオブザーバー参加の際には登場人物の誰とも深い因縁や過去がなかったためか彼女は自然な感想を述べている。
“素晴らしい会議だったけどどこか空虚”。
深読みしたらどこか存在感が空虚な人物があの場にいたことを示唆してたかあるいは犯人側の狙いを本質的にどこか感じていた女性の勘とも解釈できる。
『輝天炎上』ではまだその辺の能力?を自覚していないかもしれない。
西園寺すみれ(桜宮小百合)がどう彼女を見たかも作品内では語られていない。

  • No.369 by 風人  2016-11-14 07:55:18 

高階病院長は強欲であったのは否定できないでしょう。
佐伯前病院長時代は碧翠院と蜜月であったにも関わらずその関係を一方的に絶とうとした。
もちろん心情的に桜宮巌雄には個人的な尊敬もあったと思うがそれが裏腹になってしまった。
『ケルベロスの肖像』と『輝天炎上』を読めばまさにおもてとうらの存在。
小百合の憎しみ、小百合の憎しみは理解しながらもそれをとどめようするすみれ。
ここにも双子姉妹の表裏が書かれている。
本編においていえば田口先生と天馬大吉の出会い、対比もある。
『肖像』と『輝天炎上』はまさにいろいろな人物の表裏。
過去から引っ張られた因縁というのも物語の本質からいえば恐ろしいこと。
ただ高階病院長はブラックペアンを患者の体内に残したことも天城雪彦先生についても忘れてはならない過去として彼に残っている。
だけどそれがはたして公の場では通じないのが大人の社会でもある。
『肖像』から『モルフェウスの領域』などほんの少し先の未来で東城医大がどう経営難を越えたかはくわしくは謎。
いろいろ謎が含まれている。

  • No.370 by 風人  2016-11-14 11:50:35 

すみれは憎しみにとらわれているけど小百合は東城医大を憎む気持ちはあっても田口先生を憎む気持ちはさほどないみたい。
『輝天炎上』の二部三部それぞれすみれ、小百合の心情はわからなくはないけど彼女たちは医療の未来を見ていないのかもしれない。
小百合についていえば碧翠院で高原美智たち患者に働かせるトライアルをしてることで治療に励んでいたと言える。
患者に生きる希望や将来を与えようとしてた。
最後の患者となった高原美智、彼女にその思いは受け継がれ田口先生、天馬くんそれぞれに小百合の気持ちは託されたとみるべきでしょう。
だけど、小百合がひそかに生きていたのを知っていたのは兄であった城崎さんと天馬くんのふたりだけ。
田口先生は知ることもなく『肖像』は終わりを告げる。
天馬くんは小百合の生存を知っていて田口先生は知らないというニュアンス。
『田口白鳥シリーズ』は『肖像』で終わりを告げているけど東城医大の物語は終わっていない。
『領域』などにおいてなお続いている。
『肖像』から艱難辛苦あったであろう東城医大が如何なる再建の道のりだったか……。
『領域』でわずかながら語られているがそれとて全体の一端でしょうね。
その間にも高階病院長と飯沼さんとの裁判、白鳥さんが未来科学センター(コールドスリープセンター)を立ち上げるまであるいは加納警視正からの事件依頼などないとは限らない。無数ともいえる出来事はあったでしょう。
天馬くんや冷泉深雪たち医学生も一度は東城医大がなくなるかもしれないことで学生としては危機感をおぼえたかもしれない。彼らは情報網を意外なほど持っている(兵藤先生あたりが口を滑らしたりして(苦笑い))。
どちらにせよ再建まで茨の道は難くなかったと思われる。

  • No.371 by 風人  2016-11-17 07:38:18 

東城医大が災難に見舞われるのは碧翠院と対極にあった存在だから?
あるいは桜宮という土地時代がひとつの“結界”だからでしょうか。
主要人物である田口先生からさほど桜宮に縁がないはずの八神課長まで何かしら切っても切れない縁が薄くてもある。
『ナニワ・モンスター』では何故か八神課長は桜宮の名を思い出してもそこにあった縁はあたまから抜けていた。田口先生と彦根先生にしてやられた『イノセント・ゲリラ』、『ナニワ・モンスター』時点では『領域』の未来科学センターの話題はなかったと思うけど何かしら桜宮関係で苦渋を飲まされた可能性はある。たんに本人が忘れたか記憶からないだけで。
北は北海道極北市や雪見市、そして近畿は浪速府、彦根先生がいる房総など。
ありとあらやる都道府県に桜宮あるいは東城医大の人物が散らばっている。
海堂尊先生は意味なく人物を移動させることはしない。そこに意味を見出だす。
世良先生が極北に現れたのを桜宮小百合は過去の記憶から彼が東城医大の人間であるのを知っていた。
それを繋いだのはかつての天城雪彦先生。『ブレイズメス』で天城先生に連れられた世良先生は桜宮姉妹と出会っている。
現在に直接出会わなくても互いに(薄くても)縁は存在している。
これらが後々に意味がある場合も『桜宮サーガ』にはある。
浜田小夜にしても罪を償った後に『夢見る黄金地球儀』に出ている。
『夢見る黄金地球儀』以前に4Sエージェンシーにいかなる形で現れたかはまた謎でもあるが。
その辺の断片はパズルのピースのよう。
そういうところを探すのままたたのしみ。

  • No.372 by 風人  2016-11-17 16:27:29 

まだまだ物語内で語られていないところは多々ある。
バブル三部作以前をはたして海堂尊先生が書くかはわからないけど。
桜宮家からいつ城崎は出奔したかこれはある程度、『沈黙』あたりで彼の口を使って語られているけど具体的に詳細は不明。
田口先生が不定愁訴外来をつくるきっかけのひとつは『ブラックペアン』の渡海先生の言葉、『田口白鳥シリーズ』で不定愁訴外来の立ち上げのきっかけはたびたび語られているけどこれもまた細かな事柄は不明。
ドイツのクリフによるDMA(デジタルムービー・アナリシス)の開発の経緯。
渡海先生が日本を離れた具体的な理由。そしてノルガ共和国に身を置く真相←これは『領域』の涼子との触れあいで語られてたような雰囲気。
いくらでも謎は拾えるけど具体的に物語のなかで解決してる事例はあんがい少ないかもしれない。
読み落としして気づかぬ間に解決してたり作品内で時が過ぎてる場合もないとはいえない。
情報量が半端ないおもしろさ。
田口先生や白鳥さんをひとりひとり人物を取り上げても現実の人間とたいして変わらない奥深さ。

  • No.373 by 風人  2016-11-18 06:15:50 

田口先生がすみれたちと親しかった頃は彼が警察関係者と接触はなかったんでしょう。
まだ若かったし不定愁訴外来もなかったからでしょう。
せいぜい速水先生や島津先生の旧友、兵藤先生ら同僚などから警察関係の話題を耳にすることはあったと思われる。
だけど不定愁訴外来を設けリスクマネジメント委員会、Aiセンター会議などの委員をつとめることで徐々に人間関係が広がりを見せてゆく。
『沈黙』においては牧村瑞人という少年が容疑者の疑いがあっても大学病院のひとりとして警察署長に意見する姿勢を見せる。ちゃんと地元警察にも東城医大は協力の関係を示しながらいざという時には真っ向から立ち向かう(ような)姿勢を見せる。
おそらくかつてのすみれたちと親しかった頃はそんな姿勢を見せる人物ではなかったと思う。
だけど高階病院長はどこかで田口先生の人物像や器を見極めたんでしょう。
『田口白鳥シリーズ』を全般的に見ても田口先生がヘタレなところや失敗につまずくこともある。
だけどどこかでチャンスを見いだしたり他人に操られながらも意見する姿勢を見せる。
医師あるいは医者としての境界線を守りながら個人の意思をあらわす言葉や表現力を持っている。
バチスタ事件で遺族に頭を下げる機会を生かしてもいる。
不定愁訴外来という立場や職業からいろいろな人間を知っている利点もある。
不器用ながらも空気を適度に読んで院内の立場や地盤を本人でさえ気づかぬ間に築いている。
高階病院長、藤原看護師、黒崎教授この三人という重鎮あってのところもある。

  • No.374 by 風人  2016-11-18 10:46:44 

桜宮小百合は東城医大を憎んでも田口先生には憎しみは抱いてないだろう。
『輝天炎上』では4Sエージェンシーの兄の城崎に頼んである程度は東城医大の事情を知る。
だけど、Aiセンター長が誰かをとりあえず知らないままだったが盗聴機を通じて知ることになる。
『輝天炎上』の顛末を考えたら田口先生を危険な目に遭わせたくない一面をあったかもしれない。
ふつうに中年と化した田口先生が火の中に飛び込んで桜宮姉妹と再会したら事の真相を知らないままよりさらに悲惨な目に遭わなくもないし物語としては格好よくない。
『肖像』で事の真相を知らないままの方がしあわせだったといえる。
『輝天炎上』で天馬くんに真相を知ってもらうことで逆に田口先生に余韻を残す綺麗な終わり方と表現できる。
『輝天炎上』から『領域』など先の時をゆく物語はまだまだ語られてないパズルのピースやミッシング・リンクもあるからそこをどう海堂先生がどう描くのか。

  • No.375 by 風人  2016-11-18 14:43:16 

病院経営者が建設関係に疎いのは『ブレイズメス』で天城先生以外は疎いことに触れられ『肖像』『輝天炎上』で再度、触れられている。
だけどAiセンターにもしマリッツアが関わってなかったら事なきを得ただろうに。
本来ならスリジエハートセンターが建って芽が出て桜の樹がなってたら高階病院長や東城医大は桜宮家とマリッツアから怨恨を買うこともなかったということ。
だけどそれだけ天城雪彦への思いがマリッツアは深く桜宮姉妹(すみれ、小百合)にも通じるものはなにかしらあったとするべきか。
桜宮市あるいは桜宮の土地そのものがひとの思いを具現化し創っては壊しの歴史を繰り返す土地なのかもしれない。
桜宮のAiセンターは後世に語り継がれることもないまま紅蓮の炎に消えた。
浪速府の死後画像センターの決着は如何なるものになるのか……。
『玉村警部補の災難』でも物語内のGoogleはいまだ過去のままの画像になっているというのも興味ある事例かもしれない。

  • No.376 by 風人  2016-11-19 07:19:04 

斑鳩芳正と加納警視正がなぜふたりして桜宮にいるのかというのもまた謎。
玉村警部補みたいな平凡に近い刑事でさえ何かしらは感づいている。
警察が医療に主導権を握るための何かしらの案件があるということかもしくは何か異なる物事があるのか。
『肖像』では堂々と斑鳩は現れているけどこれは西園寺さやか(桜宮小百合)を隠すダミーであったと見るべき。
『肖像』『輝天炎上』には加納警視正は一切、登場していない。だけど、『ナニワ・モンスター』でのカマイタチ鎌形による検察のガサ入れがあったことは坂田局長や白鳥さんもある程度の警戒はしている。
鴨下局長の逮捕が厚労省全体を震わしているおそれがある。
斑鳩の人間関係が広い。加納警視正ともカマイタチ鎌形とも交流がある。そして霞ヶ関内にある非合法暴力的組織を束ねておりなおかつルーレットを用いて霞ヶ関にあるネタをマスコミに売ることでめくらましにもしている。
おそらく『桜宮サーガ』内の登場人物でもっとも権力を有している人物にちがいない。彼より上もいるとは示唆はされているけどおもてに出てきてはいない。

  • No.377 by 風人  2016-11-20 06:11:47 

『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』の城崎さんの活躍はまさに裏方。
『アリアドネの弾丸』でも裏方でしたが。
『肖像』と『輝天炎上』では城崎さんは桜宮すみれにこき使われながらも東城医大防衛に専念する。どこまでが本音かはわからない。
『弾丸』では白鳥さんを通じて再び東城医大あるいは田口先生と縁ができる。そして『肖像』『輝天炎上』で陰から活躍する。
彦根先生が『肖像』で活躍できたわけもうなずける。裏ですみれがあれこれ考えておもてで城崎さんが動くことで彼女は隠れた存在になる。
小百合の方がある意味、狡猾ではあるけど暗躍という意味では『輝天炎上』ではすみれの方が上回るかもしれない。

  • No.378 by 風人  2016-11-20 14:35:37 

『ナイチンゲールの沈黙』で小児科病棟で子どもの患者に不定愁訴外来を受けさせてみようかという案が持ち上がった際に子どもでも打算や競争があるみたいなことは書かれていた。
だけど『桜宮サーガ』のシリーズが進むたびに大人社会の打算は凄まじいものがある。
『ブラックペアン』では渡海先生が佐伯病院長の失態を露にしようとし、『ブレイズメス』では天城雪彦先生のやり方に高階先生以下誰もが反発を抱く。
『極北シリーズ』で今中先生の苦労を室町院長は鼻で笑い世良先生は台無しにしていく。
『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』はやや母性に溢れた作品だから打算そのものは少ない。このふたつの作品は母性を問いかけるニュアンスもある。また生まれてくる子どもにたいして。
東城医大もだけど白鳥さんらがいる霞ヶ関は伏魔殿、打算のカタマリとも表現できる。
『イノセント・ゲリラ』『ナニワ・モンスター』では如実に顕れている。
善悪はともかくとしてあの斑鳩室長にしても何かしらの信念はあるように見受けられる。彼は医療が主導権を持つことはままならないんだと思う。
『肖像』では桜宮小百合に活躍の場を譲っただけ。大人として分をわきまえた。それは『肖像』のエピローグで語っている。
大人も子どもも本質はもしかしたら変わらないのかもしれない。表現や方法が異なるだけ。
そんななかで田口先生や今中先生みたいに出世を求めない人物いれば白鳥さんや彦根先生みたいにギリギリ綱渡りしながら高みを目指す人物もいる。そのなかで己の目的や目標に辿り着こうとする。
斑鳩室長は本意がわからない人物。高階病院長の方がわかりやすいくらい。

  • No.379 by 風人  2016-11-20 16:42:16 

『ナニワ・モンスター』のカマイタチ鎌形さんみたいな人物が検事や検察にとっては国民の理想かもしれない。
二部の検事や検察の描写は医療が主題の『桜宮サーガ』からしたら異質にはじめは見える。だけど厚労省にガサ入れをして少しずつ事の真相が見えてくる。
『桜宮サーガ』によくあることのひとつだけど無関係な事象や事柄が後々、物語の種明かしになる。
検事や検察が鎌形みたいな人物なら汚職や賄賂などは必要悪程度にしか社会に残らないのかもしれない。社会を完全に清廉潔白にするのは現実的に不可能。
社会には必要悪は必要不可欠。
鎌形はそれをよく理解してる人物に思われる。だけどこの人物もまた彦根先生と因縁ある。
『ナニワ・モンスター』二部の霞ヶ関の描写は『イノセント・ゲリラ』とはまた様相がちがうのも興味深い。
活躍する鎌形たち、ルーレットする斑鳩たち、『イノセント・ゲリラ』がまだ社会のおもてに出ている一面とするなら『ナニワ・モンスター』二部は霞ヶ関の裏もしくは闇の一片でしかないかもしれない。
Aiセンターもしくは死後画像センター、正しくはどちらも同じ機能を施設ではあるが医療か警察主体で名称が変わることが示唆されている。
これらも霞ヶ関の国民が知らない一面かもしれない。フィクションではあるけど。

  • No.380 by 風人  2016-11-22 07:08:04 

『輝天炎上』のラストにおいてすみれは死なないと天馬くんに言い残しているから死んでない可能性もある。
だけど『ブレイズメス』『螺鈿迷宮』を経ての桜宮姉妹、双子のDNAもしくは遺伝子の因縁。
『輝天炎上』のすみれ視点の物語はまさに憎しみに満ちている。マリアクリニックの曽根崎理恵先生、茉莉亜先生も桜宮一族と血脈や因縁があるのも驚き。
だけど三枝先生が罪に追いやられたのは小百合からの因縁ともいえる。

反面、すみれは『輝天炎上』で一見こちらは空虚に書かれてるようで鶴岡師長との縁、兄である城崎との接点からかろうじて実存を得ている。
小百合もすみれも戸籍という現実からは亡くなっていて存在はしてないことは同じ。
同じだけど似て非なる。
小百合は憎しみにとらわれながら斑鳩や南雲父娘という社会組織にいる者たちのバックボーンが存在する。
たいしてすみれはやや社会から離れた鶴岡師長や兄城崎という社会の枠組みから離れた協力者や親しい者。
たぶんに愛情や人間的な面からしたらすみれに分がある。
権力組織を背景に持つ小百合はそこがやや欠けているかもしれない。
だけど、双子ゆえに鏡合わせかもしれない。
マリツィアも真実を知りながら小百合には多く語らない。

  • No.381 by 風人  2016-11-23 13:58:29 

『輝天炎上』での実存がないまま生きているすみれや小百合の気持ちはいかがなものか。
死亡届は出され戸籍は存在してないだろう。
だけど生身の身体を持ち生きてはいる。
その一方で東城医大に憎しみに駆られる思い。
『輝天炎上』で桜宮家を再興しようとする動きは皮肉なことにふたりにそれは見られない。
小百合は復讐に燃えすみれは阻止しようとする。
巌雄先生や華緒さんにしたら生きている道があるならしあわせに生きて欲しかったのではないでしょうか?
なにぶん巌雄先生は『螺鈿迷宮』で亡くなっているのでその真意は謎のまま。
巌雄先生はいずれ白鳥さんが“出る杭は打たれる”みたいな形である種の予見はしている。
誰が白鳥さんに刃を向けるかは『桜宮サーガ』は登場人物が多いためにわかりにくい。
もしもすみれや小百合が『輝天炎上』後に生きていたらその可能性はないとはいえない。
『桜宮サーガ』の世界では死者が生き返ることがあり得る世界であるかもしれないから。
ひとつひとつの本やシリーズ全体に謎や伏線が散らばっているからどこかでその線を辿って人物や物事が生きているあるいは息を吹き返すことがある。
だからすみれや小百合が『輝天炎上』で亡くなったという風に思えないのかもしれない。

  • No.382 by 風人  2016-11-23 15:06:10 

巌雄先生は「すみれが戻れば桜宮家は安泰だ」みたいな表現を残してもいましたね。
もしかしたらこれが桜宮家再興の言葉かもしれない。
ただあくまで亡くなる直前の言葉だから嘘はないと思われる。
それにすみれにしても『輝天炎上』に「わたしは死なないわ」と言葉を残している。
すみれの心から田口先生への気持ちが消えていないのは『輝天炎上』で彼がAiセンター長をつとめたことへの驚きから理解できる。
小百合は東城医大も田口先生もおなじにしか見えていない。
だけどすみれは東城医大と田口先生を組織とかつての恋人(?)ということかろうじて分けてみている。
『螺鈿迷宮』『輝天炎上』をとおして読むと小百合は憎しみにとらわれているけどすみれはいざとなると不器用なぶん人間らしくもあると思われる。
実際に過去の田口先生とのいきさつは物語のいくつかで田口先生をとおして邂逅として語られ『肖像』で彼は人知れずその過去に涙する。
『輝天炎上』でのすみれの驚きとはまた対照的ともとれる。
田口先生、桜宮すみれのつながりは『肖像』『輝天炎上』を読む限りは絶たれたようにも思えない。
この辺もいずれは回収されるのか。

  • No.383 by 風人  2016-11-24 16:34:19 

『輝天炎上』は基本的に天馬くん、冷泉深雪、桜宮小百合、桜宮すみれの視点で物語が語られる。
同時に『ケルベロスの肖像』の裏側でもあるため天馬大吉が事実上は物語の中心に位置する。
『肖像』『輝天炎上』共にクライマックスの場面では西園寺さやかに化けた桜宮小百合に一蹴されるもののすみれから託されたことを担う。
だけど『肖像』『輝天炎上』においてはいちおうの勝利をおさめたのは小百合自身の情念でしょう。
桜宮のAiセンターを崩壊させた事実。それは幽霊でも何でもないそこにある現実。
『肖像』においても斑鳩室長はそれを認める度量。だけど彦根先生はこれを敗北とする潔さもある。
高階病院長や田口先生は徒労に終わるむなしさ。
天馬くんは城崎さんを通じて知るすみれの生存とクライマックスの別れ。
これらがおそらくまた天馬くんの人生を左右することはあるでしょう。

  • No.384 by 風人  2016-11-26 12:16:27 

速水先生を一度は東城医大に復帰させようと『ケルベロスの肖像』でありこの時は高階病院長の判断で留意された。
時期尚早と判断された旨はあったよう。
しかし『モルフェウスの領域』でもまだ東城医大に戻っていなかった。
速水先生が東城医大に戻っていない意味はなんだろうか思う。
東城医大の倒産は免れたが『領域』においても経営が順調かは不透明。明らかにわかるのは医療が先細りしてる現状は『領域』でも伝わる。
おそらくその辺の懸念もあるんでしょう。
速水先生が“大人になる”のを高階病院長は見守りおそらく桃倉センター長や世良先生に彼の成長を見守らせているのかもしれない。
『極北ラプソディ』を速水先生の視点で読むととてもよそ者の雰囲気はしない。だけどある程度の境界線は保ちながらいずれは雪見市の救急センターを去るよそ者という自覚はあると思われる。
桃倉センター長や伊達先生たちに時ににらまれながらも地道に成長や反省の兆しはある。
桃倉センター長はともかくとしても若い伊達先生や五條さんたちにしたら速水先生は苦労の種でも救急センターに患者を呼ぶ存在。
花房さんと別れたことでもひとつの成長はあったと思われる。
だけどまだまだ東城医大に復帰させるにはまだ何か足りないものがあるんでしょう。
速水先生不在のなか佐藤先生や如月さんたちの成長を促す意味も当然あるでしょう。
桜宮に速水先生が復帰された時に何かが成されるのか?と考えるのは読者としては深読みでしょうね(苦笑い)。

  • No.385 by 風人  2016-11-27 05:56:33 

『スリジエセンター』は未読だけど『肖像』や『輝天炎上』の人物たちが天城雪彦を語る様子をかんがみたら彼が失意のもと亡くなった可能性を否めない。
そもそも20年以上の時が経ったうえでのタンピング。
陣内教授やマリッツアの語る天城先生への思いや邂逅。
高階先生側からしたら『肖像』で陣内教授から代理店のメアドを聞く描写はあったけど最終的にAiセンターが小百合により崩壊したために代理店を通してマリッツアまでたどりつくことをしたかは不明。
Aiセンターそのものが崩壊したことで建築家まで確かめようとする気持ちがあったかどうか。高階病院長の『肖像』のラストの様子ではその気持ちさえなかったようにも思う。

  • No.386 by 風人  2016-11-28 06:23:41 

シリーズ全体を通して斑鳩芳正室長は実体が見えないような存在。
登場人物の誰もが印象をはっきりさせないというのもひとつの印象。
だけど医療に対しての姿勢ははっきり敵意を示している。
『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』『ナニワ・モンスター』などどの作品にあらわれても不気味な存在。
なにかの作品で田口先生が自然の作る闇よりも人間が作る闇の方が怖いのでは?と示唆する思いがあったと思うけど斑鳩室長はまさにそれを具現化した人物かもしれない。
霞ヶ関の闇もしくは暗部と表現すべきか。

  • No.387 by 風人  2016-11-28 13:38:32 

『螺鈿迷宮』を読むたびに碧翠院つぶしは正しくなかったように思われる。
安楽死などの行為はたしかに犯罪だけど、桜宮の闇を一手に引き受けた存在でもあった。
天馬くんはすみれと小百合を通して碧翠院を学び巌雄先生から短い間ながらも医者として必要な心や信念を教わる。
だけど患者が次々に亡くなる碧翠院はホラーでありミステリー。
描写のいくつかが都市伝説ぽいところも相まって不気味。
読んでるとバブル三部作(『スリジエ』は未読)をのぞけば『螺鈿迷宮』は平成や21世紀の時代なのになぜか昭和の雰囲気を醸し出すシリーズ。
この時点の天馬くん若いけど続編『輝天炎上』でもまだまだ若さを残す。
『輝天炎上』の高原美智さんとの別れはちいさな一歩のように見えて実は大きな一歩であると思う。
『輝天炎上』ではAiと死因不明社会について彼と冷泉深雪がいろいろな先生方に出会い学ぶことで社会の見えない壁や問題に突き当たり向き合うというのがひとつの姿勢。
清川司郎先生はたしかに臆病なところはあるけどそうせざる得ない姿勢は社会もしくは組織に属する人間には本人の意思に関係なくあること。
妥協や臆病、あるいは他人に意思を委ねるのもやむを得ない。

  • No.388 by 風人  2016-11-29 06:45:29 

田口先生みたいにいっこうに女っ気がないのと天馬くんみたいにふたりの異性に挟まれるのはどちらがしあわせだろう。
田口先生とてスケベ心程度は備えているのは『ケルベロスの肖像』でようやく姫宮香織と会う口実ないし理由を利用してることから必ずしも女っ気を意識してないわけではない。
だけど職場たる不定愁訴外来には東城医大の生き字引がひとり藤原真琴看護師がいて目を光らせている。
『バチスタ』では大友看護師といい仲になりそうだったのを阻まれ『沈黙』では浜田小夜に知らないこととはいえ父親に重ねられたり『凱旋』では如月翔子と親しくはなるが恋愛関係には当然のようにいたらない。
田口先生が双子の桜宮姉妹とある一定の関係を絶ってから彼のまわりに際立った異性はいないみたい。
基本的に東城医大から出ることは少ない。

片や天馬くんは幼馴染みでも別宮葉子がなんだかんだで時に彼をこき使いねぎらいながらのつかず離れずの間柄。
『輝天炎上』での冷泉深雪との出逢い。落第留年生と優等生とこれまたラノベやアニメみたいなありえないシチュエーション。
死因不明社会とAiについての問題を東城医大、浪速府や房総とあちこちをふたりしてまわりながら距離が近くなる。
『輝天炎上』は『螺鈿迷宮』同様に天馬くんを主役に置いているから物語の内容が若く描写されてる。
医学生や留年落第生徒という天馬くんの立場や位置。一方では深く刻み込まれた桜宮家との因縁、一方では冷泉深雪との異性への恋心に近い感情や思い。
若いけどだからといって感情や気持ちのおもむくままに行動や発言はしない。多少の医療社会や田口先生をはじめとした大人たちへの感情はあるけど。
だけどそこから学び取れるなにかを得ている。
冷泉深雪という優等生な異性がいることで際立つ一面。
だけど恋愛関係として考えると三角関係はふつうに苦労ありそう。

  • No.389 by 風人  2016-12-02 13:44:36 

『外科医 須磨久善(ひさよし)』があった。
中古書店で280円。ちょっと安かった。
本来なら『スリジエセンター』や『スカラムーシュ・ムーン』から再び読むところだけどあいにくこの二冊は見当たらないorz。
著者である海堂尊先生もまたこの本の須磨久善もどちらも医者であり作家であるという共通点。
医者であり作家でもある海堂尊先生が同じ職業の実在の人物を書くという。
『伝説』で解説は読んだはずだけどいまはあたまから抜けているorz。
だけど『外科医 須磨久善』の冒頭とあとがきちらっと見たら海堂尊先生からの言葉、そして『ブレイズメス』で書かれた“公開手術”という言葉が真っ先に現れている衝撃。そしてあとがきには再び著者で海堂尊先生から、さらにドラマ『相棒』の杉下右京を長く演じている水谷豊からのあとがき。
『ブレイズメス』のあとがきでも作家西尾維新さんが書いてましたが『外科医 須磨久善』も劣らない雰囲気。
『ブレイズメス』で天城雪彦がおこなった公開手術を須磨久善先生なる人物は現実におこなったということか。
ノンフィクションということだから海堂尊先生を通した現実が伝わることになりそうな一冊。

  • No.390 by 風人  2016-12-02 15:39:10 

『外科医 須磨久善』ちょっとだけ読んだら須磨久善なる人物が『ブレイズメス』の天城雪彦先生のもとになった人物ぽい雰囲気を醸し出している。
“公開手術”そして海堂尊先生は須磨久善先生の公開手術をギャンブルと表現しているこのふたつ。
海堂尊先生の表現力などもあると思うけど。
だけど須磨久善先生が公開手術したのは1992年というこの年月の古さというのも衝撃な事実。
バブルがはじけた日本の時代。
ノンフィクションという本だから無意識に自分が生きた時代を重ねたかもしれない思い。
しかしみごとに海堂尊先生の『桜宮サーガ』の『ブレイズメス』とも重なる時代。
明らかに天城雪彦先生は現実の須磨久善先生からの思いやイメージから出てきた人物と考えた方が妥当だろうか。

  • No.391 by 風人  2016-12-03 06:25:16 

『外科医 須磨久善』を読むと海堂尊先生が須磨久善先生をもとに『桜宮サーガ』のいろいろな人物に投影させている雰囲気ある。
だけど医療社会の現在も書かれている。“日本人は新しいことに拒否反応を示す”のくだりは医療に限らずほぼすべての世界や分野にあることと思われる。
『ブレイズメス1990』の天城先生の公開手術とギャンブル、『田口白鳥シリーズ』の白鳥さんによるAi提唱、彦根先生の医翼宣言、医療庁など。いくつかはフィクションの物語を通しての現実への呼びかけであると思う。
『伝説』を読むと海堂尊先生が書かれたことのいくつかは現実に追いつかれているらしい。
架空の『桜宮サーガ』世界とこちらの現実世界が重なっているところもないわけではない。
もしかしたら『外科医 須磨久善』などいくつの本を通してあちらの世界とつなげているのかも(笑)。
だけど『桜宮サーガ』な世界でも田口先生たち登場人物たちは医療が誰のためなんのためにあるのか日々を悩み葛藤する。
答えを見出だそうとしながら答えは見つからない。
海堂尊先生の本を読むと医者が日々悩みながら病気や患者あるいは地域地元に接しているのが伝わる。

  • No.392 by 風人  2016-12-03 11:25:03 

『外科医 須磨久善』はノンフィクションだから海堂尊先生が須磨久善先生を取材したことを追っていってる点が架空の『桜宮サーガ』シリーズとは異なる。
過去からおそらく現在への須磨久善先生を追っていって書いてたはず。
1992年と冒頭に出てきた時にふつうに驚いた。90年代なんてつい最近までそんなむかしではないと思ったけど現実の自分が歳を取ったことへの現実も見えるから自分に重ねあわせたらむかしなんだということ。。
だけどそんな古い時代に公開手術という場を設けるだけでも本の中でも現実に例は少ない。
なおかつ衆人監視のもとで手術をしながら質問者に的確に答えあまつさえ当然、ミスは許されない。
この辺の描写はまんま『ブレイズメス』の天城雪彦先生を彷彿させる。だけど『ブレイズメス』は架空世界の出来事、『外科医 須磨久善』は現実にあった出来事。
読んでた『桜宮サーガ』の世界そのものが現実に一部であれ起きてたといいこと。
また須磨久善先生の奥さんが出てきたところも現実味ある。旦那さんの活躍を心配なさってたと思われる。
こういうところも『桜宮サーガ』の人物たちに重ならなくもない。
医療従事者の家族というのも『伝説』で医者ではないけど三船事務長を通して語られた場面があった。
いろいろ重なって読めるのはすごい一冊かもしれないと感じ始めているかもしれない。

  • No.393 by 風人  2016-12-06 05:37:51 

『外科医 須磨久善』を読むと須磨久善先生の半生はバラエティに富んでる。
バチスタ手術をOKした院長もさりげなく凄い。もしも失敗すればおこなった病院の信用にも関わることなのに須磨久善先生に承諾する。
だけど『外科医』にいくつか書かれている事柄、阪神大震災の出来事などや『プロジェクトX』に取り上げられたこととか現実の重みが伝わる。
須磨久善夫妻には子どもはいないけど犬を買っていたらしい。
だけど犬が病気になった時はいくら本人が医者であっても獣医ではないからうまく伝えられなかったり獣医とのコミュニケーションのむずかしさもあったよう。
おそらくそんなところも医者としてのコミュニケーションに考えたり役に立てようとしてた節もあったんじゃないでしょうか。
外国で安住の地を持っても飼い犬が道を示してくれたというのも運命的。
世の中にはなにかしら人間関係や天運に恵まれた人物がいるかもしれない。
人生に選択肢はあってもいちばんむずかしい選択することは大抵の人間はしない。
だけど須磨久善先生はそれができる人生のよう。

  • No.394 by 風人  2016-12-08 09:43:44 

『ブラックペアン1988』『ブレイズメス1990』あと未読の『スリジエセンター』が『桜宮サーガ』の世界ではバブル時代にあたる。
『ブラックペアン』には花房さんとデートする若き日の世良先生が「となりのトトロ」を見に行くという描写があったり『ブレイズメス』の時代には医療従事者たちが病院の食堂で食事をする場面があったり21世紀の今日(こんにち)からしたらあきらかにちがうのが伝わる。
バブル時代で浮かれる日本人の姿を海堂尊先生は医療については荒波の時代として書いてる節はあるかもしれない。
作品内の高階先生と天城先生の対比を見る世良先生が客観的にふたりを見つめることにも時代の息吹きがあるかもしれない。
またノンフィクションである『外科医 須磨久善』は冒頭からいきなりバブル時代の現実のなか須磨久善先生の活躍が語られる。
以前にも書いたけど『ブレイズメス』の天城先生と現実の須磨久善先生は重なる。
フィクションあるいは現実にせよ高度成長期とはちがう意味で日本人が輝いていた時代かもしれない。虚飾であった可能性も否めないが。

  • No.395 by 風人  2016-12-08 19:53:07 

『外科医 須磨久善』のあとがきになぜ水谷豊さんのあとがきがあったのか謎だったけど読んだらなぞでもなかった。
ドラマ『外科医 須磨久善』で須磨久善先生を演じられたようですね。
それにしても須磨久善先生の半生にしても人生の選択に迷うことはあるだろうしつまずきということもあるだろうけどすべてや完璧、完全というのは読んだら求めていない雰囲気。
失敗も成功もあるだろうけど大半が自分にとって前向きでありわがままを言わなければたいていはうまくいくみたいな感じ。
以前に読んだ『ゲゲゲの女房』の水木しげるさん武良布枝さんにも近いところはある雰囲気。
なにをしあわせとするか?というところは共通している。

  • No.396 by 風人  2016-12-15 16:01:47 

今年は『ブレイズメス1990』『ナニワ・モンスター』『ケルベロスの肖像』『輝天炎上』『玉村警部補の災難』『モルフェウスの領域』『外科医須磨久善』と海堂作品を七冊読めた、例年にない本に出会えた年。

個人的に名作だったのは『ブレイズメス1990』『ナニワ・モンスター』『外科医須磨久善』の三冊。
『ブレイズメス』では謎の人物だった天城雪彦の鮮烈な魅力や人物像。
ギャンブルと人の命をおなじように扱ってみえるように誤解されがちだけど人生がかかっているとしたら全財産を投げ出すくらいの覚悟や手術も必要ではないだろうかと思う。
『外科医 須磨久善』を読むと天城雪彦先生のモチーフは現実の須磨久善先生なのが伝わる。生き方、思想、行動力、運などすべてではないだろうけど。天城雪彦先生にいくぶんフィクションとしての魅力はあるから。
天城雪彦先生も須磨久善先生も医療の現実や社会に立ち向かう姿勢は重なる。『ブレイズメス』『外科医』どちらも読めば伝わるはず。
『ナニワ・モンスター』はまさに日本国内の架空のウィルスに経済戦争シミュレーションモノ。
多くの物語のなかであれこれ謎の動きをしていた彦根新吾先生の謎が明らかになる。
『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』『極北ラプソディ』などで何をやってるんだと思いながら追いかけていたら浪速府村雨府知事と一緒になって地方独立を謳い浪速府に医療庁の創設をたくらんでいたとは。読んでて吹っ飛んだくらいに天城雪彦先生とは違う意味で衝撃あった。
来年は『スリジエセンター』と『スカラムーシュ・ムーン』は読んでみたい。

  • No.397 by 風人  2016-12-26 15:28:15 

『カレイドスコープの箱庭』を冒頭を少し読んだら相変わらずいろいろな人物が出てくるけど高階病院長と田口先生の立場の入れ替わりや妙に意気消沈な彦根先生など少しだけ時代は未来になってる。
『肖像』からほんの三ヶ月程度なのに。
彦根先生が落ち込んでおとなしいのは『スカラムーシュ・ムーン』で司法か斑鳩室長に負けたんでしょうか。『肖像』のラストでは意気があったのにまるで可愛い後輩のようにおとなしい。
だけど『肖像』からほんの三ヶ月しか経ってないから東城医大の経営や患者からの信頼がいささか頼りない印象があるようにも映る。
幾多の事件や難題を抱えていた病院なだけに現実ならなおさらと思う。
しかし藤堂文昭、この人はアメリカがよく似合う(笑)。
『桜宮サーガ』内ではノーベル賞に近い人物とされるだけにインパクトある。

  • No.398 by 風人  2016-12-27 16:25:29 

『カレイドスコープの箱庭』のアメリカの一場面。
よもや曽根崎伸一郎の登場もあったのは驚き。ネットだけでなく直に本人が足を運び議論するのは好感ある。
あの藤堂文昭を唸らせるのはたいした存在。
『箱庭』でのアメリカへのAi標準化国際会議は無駄足ではなかったのは明らか。『肖像』で桜宮のAiセンターは破壊はされたが、ひとの思想までは消せなかったとうかがえる。
『祝祭』においてもひととのつながりは広いようで狭いと表現されてたけど海堂作品はそういうの多々ある。人物たちがさほど自覚してないだけ。現実にも通じるところ。
田口先生は『バチスタ』以降、人脈を広げているのは事実。おそらく『箱庭』や『領域』などの経験が未来の東城医大ひいては桜宮に通じている雰囲気ある。
上昇志向がないのは変わらないけどさすが次期病院長に就くというのは難色を示す。
明らかに佐伯前病院長や高階病院長とタイプが異なるのもあるし田口先生が権威を振るうひとではない。
だけど『箱庭』『領域』ともに白鳥さんや如月翔子などは着実に田口先生を次期病院長に、という雰囲気もある。高階病院長に似てきたとあるし(苦笑)。
ある意味誉め言葉ある意味ちょっとした嫌みも含んで。

  • No.399 by 風人  2016-12-28 06:24:25 

田口先生は成長してないようで成長や進歩はあるでしょう。
物語の時系列がほんの三、四年程度ですからね(苦笑)。
『箱庭』での高階病院長とのやりとりを読むと『バチスタ』『凱旋』『沈黙』『弾丸』からとかなりちがう。のらりくらりとやり過ごそうとしてたのに比べたら『肖像』『箱庭』は意外なくらいにあっさり依頼を受けている。
不定愁訴外来だけやってるよりははるかにアクティブに動いているということ。院内業務としては不定愁訴外来、リスクマネジメント委員会、Aiセンター長。
Aiセンター長の肩書きはてっきり『肖像』でのAiセンター爆破事件からなくなったと思ったら存在したままなのは少し驚いた。
組織に属す限りは肩書きはかんたんに消えるものではないということか。
だけどもし『肖像』でもし病院が破綻してたら『箱庭』での同窓会はなかった可能性もある。
そういう意味では『肖像』のラストで高階病院長の言い分をひっくり返したのは田口先生たちにとってはプラスだったかもしれない。
桐生先生は一時は医者は廃業かと悩んでたのは気の毒だったけど子どもを助けたいという一心が『ブレイズメス』でもわずかに語られてたけど『バチスタ』から『箱庭』へとようやくつながる。
ある程度の登場人物への救いある措置はしてある。

  • No.400 by 風人  2016-12-31 04:32:00 

『相棒』シーズン6の白い声のノベライズを読んだけど海堂尊作品にそっくり。
だけど死体が画像診断は現実には数えるほどしかされてなく事件性がないまま扱われる。
海堂尊作品はそこに切り込んでいくことで作品を通して社会に問題提議をしてゆく姿勢。
『相棒』の「白い声」については犠牲となる人物が重たい。
死ぬ必要があって訴えるのはドラマだからかあるいはあえてテーマを伝えるためにやむない演出なのか。
さりげなく舞台が城南大学というのは『仮面ライダー』ぽい点は面白かった。

『桜宮サーガ』と『相棒』シリーズは違う。
『桜宮サーガ』はほとんどの作品は医療や医療従事者があってそこに日々の難題や事件あってなにかを訴える。
Aiを伝えるのは“死者に耳を傾けろ”と『バチスタ』から唱えたり訴える人物は作品により異なるけど一貫している。
だけど『極北クレイマー』の三枝先生みたいになまじAiをしてなかったばかりに証拠を不十分とされ逮捕に至ることもある。つねに世の中に悪意がどこかに潜んでいたり闇に手を伸ばす者もいる。
『相棒』シリーズも共通してるのはどんな地位ある人でも犯罪に手を染める者がいること。
なりゆきから犯罪に手を染める者たちもいるが中には加害者でもあり被害者もいる。
右京が許せないのは何者であっても犯罪行為に手を染める者に彼は憤る。

とはいえ『桜宮サーガ』の白鳥さんは『螺鈿迷宮』で桜宮巌雄先生から警告を受けている。
いずれは白鳥さんが誰かの標的にされる、と。
これは『相棒』における右京ら特命係が常に警察上層部から疎まれたりまたは別な第三者から狙われていることに似る。

  • No.401 by 風人  2017-01-02 07:53:52 

『チーム・バチスタの栄光』から『カレイドスコープの箱庭』までおおよそ三年経っているけど、電子カルテに嫌いを示す医療従事者もいるということ。
以前に母が地元の医療センターにお世話になった時も母を診たお医者さまが電子カルテよりは紙のカルテの方が書いているというようなことをおっしゃってたかな。
だけど時代やハイテクの流れがある。
『桜宮サーガ』のシリーズを読むとハイテクとローテクの両方が生きているところもある。
必ずしも最先端やアメリカ諸外国の医療が正しいと思うわけでもないという風潮やむかしながらの堅い意識を持つ医療従事者などもいる。
どこかでそういうのが時に時代の妨げにもなるしまた逆にむかしながらだから信頼あるというのもある。
どう何を受けとるかでそのものの印象は異なる。

  • No.402 by 風人  2017-01-04 18:55:38 

『カレイドスコープの箱庭』で速水先生と彦根先生の会話から察するに彦根先生は今中先生が極北市民病院に不在の時に訪れているような雰囲気。
実際、『極北ラプソディ』で今中先生と彦根先生は一切出会っていない。
今中先生を雪見市救命救急センターに派遣した時にも目に見えない日本三分構想やドクタージェット構想などを話し合ってた可能性はある。
だけど速水先生はどこで世良先生が彦根先生と会ってるのを耳にしたのか。
医療の人間関係は広いようでせまいとあるから何かしら風のうわさは流れてきたかもしれない。

  • No.403 by 風人  2017-01-05 09:00:03 

白鳥さんがなぜ官僚を志した(?)というのも興味あるところ。
『ナニワ・モンスター』での描写からかなりAiに早い時期からこだわっていたのがうかがえる。
基本的に東城医大が舞台になることが多くライバル帝華大についてはまだまだ語られていないのではない。
ある程度は各作品の描写や台詞から拾えるけどイコール具体的に語ってるわけでもないから読者にしたらいささかなぞになる。

  • No.404 by 風人  2017-01-06 16:14:03 

『カレイドスコープの箱庭』において田口先生ほど特異な存在な准教授は現実にはいないでしょう。
だけどいくつかの作品では海堂尊先生は論文ありきな医療界にある種の警鐘を鳴らしてもいる。
かといって論文警視ではないとも思う。『極北ラプソディ』で世良先生の口を借りて論文批判はするけど研究が滞っていた今中先生にひとつのチャンスを与えてもいる。
今中先生の方が平凡な医師として書かれている。田口先生が特殊なだけ(苦笑)。
論文は書いてもいないAiに理解はしてても放射線科医でもないのにAiセンター長を東城医大でつとめAi標準化会議に出席し出席者を束ねないとならない。
Aiの在り方を『箱庭』であらためて説いているともいえる。
もし高階病院長が本当に引退したら次期病院長は田口先生なんでしょうか。『箱庭』では田口先生と不定愁訴外来に口を出す者はいなくなってしまう現状。唯一は兵藤先生だけが犬のようにしっぽを振るだけ。
だけど『箱庭』で白鳥さんと兵藤先生がある程度どのような情報交換をしてるか明らかになったのもおもしろい。鬼の居ぬ間、というのをふたりは巧みに利用してたみたい。
だけど藤原看護師は不定愁訴外来に予期せぬ来客があるたびに出勤しては珈琲を淹れては先生たちの世話をするのも大変な労苦かもしれない一面もまたうかがえる。
大学病院の人間模様がうかがえるのも魅力。

  • No.405 by 風人  2017-01-07 09:21:24 

とりあえず文庫化になってる本から読んでいきたいけどもうかなり読んでるから実質は少ないはず。
『モルフェウスの領域』の続編『アクアマリンの神殿』からでしょうか。
『領域』はある意味SFであり複雑な恋愛モノとも取れる、やや視点が違った作品だった。
西野さんは嫌みな人ではあるけど決して不誠実ではないと思う。頭いいぶん嫌みさがおもてに出てしまうもしくは誤解を生む人物ともいえる。
仕事そのものについては『極北ラプソディ』や『領域』においても真剣そのものがうかがえる。ちゃんと己のテーマを具現化しさらに追求する。
恋愛するとやや厄介にも思える人物ではあるかもしれない。
西野さん涼子さんの関係が輪廻の輪のようになるのか。
『領域』のコールドスリーブ(冷凍睡眠)は人類の夢ではあるけど一方では被験者の人生や権利を奪うものでもある。
それを田口先生や如月翔子、高階病院長東城医大は守らないといけない側面もある。
医療が社会により成り立つ一面はあるけど逆に社会がその進歩を止めたり阻む一面も『桜宮サーガ』にある。

『極北シリーズ』はそのなかでも端的かつわかりやすく描写してた。
市民病院の破綻、地域地方の首長の政(まつりごと)しだいで町や市の運命が左右にふられる。

『領域』のようにコールドスリーブがもしも未来において日常的になれば問題は無数にあふれ出る可能性は否めない。
『桜宮サーガ』は過去、現在、未来の時間を紡いでいる。
無関係な事象はないということ。

  • No.406 by 風人  2017-01-09 05:46:41 

桜宮市に人物が来るのは土地や結界に招かれるからでしょうか。
田口先生をはじめ白鳥さん、桜宮姉妹、斑鳩芳正、加納警視正、幾多の人物が桜宮を訪れては難題や事件あったり。
不定愁訴外来を結界と呼んだのは田口先生、藤原看護師、加納警視正くらいでしょうか。
もとは田口先生が医学生時代にサボりの時にたまたま見つけた東城医大で設計ミスからできた物置部屋。
それを田口先生は自らの職場にして不定愁訴外来にした。

だけど桜宮市にはまだまだ結界がいくつも存在する。
碧翠院桜宮病院があった土地もそう。『輝天炎上』ですみれ・小百合姉妹が潜伏してた場所は殺人事件があったアパートとされる。
『伝説』の城東デパート火災も加納警視正たちによると桜宮の負の遺産。

これらが意味してるものは何なのか。
意味なんてないかもしれないけど。

  • No.407 by 風人  2017-01-10 14:49:00 

『ブレイズメス』で触れられていた富士見の診療所を舞台にした話も見てみたいもの。
不定愁訴外来ができる人は根気ある人やひとの話を聞くことをよろこびに変えないとできないと思われる。
『ブレイズメス』から『極北ラプソディ』の世良先生の患者の対応や接し方あるいは治療ということへの考え方など考えたらまるで別人。
『ラプソディ』では長々と話す患者のおばあちゃんに対して親身に接してはお土産を手にして感謝を示す。
『ブレイズメス』では手術や治療をしたいと意気込みはあるけど患者に向き合ってるかはいささか疑問の余地はあるように思われる。

不定愁訴外来で愚痴や不満を聞くのもひとつの治療行為。患者の精神的ケアは結果的には病院内の精神的ケアにもつながる。
『ナニワ・モンスター』でも浪速府のちいさな町の診療所でもいちおうの効果は示していることからもあらわれていた。

富士見の診療所はどんなところでどんなお医者さまがいて患者にどんな治療をしているのかというのか興味深い。
不定愁訴外来は『田口白鳥シリーズ』でさんざん書かれてるけど他のお医者さんの治療も見てみたい。白鳥さんが『螺鈿迷宮』で患者と話ながらおこない『極北クレイマー』でも姫宮香織も若干はしてたけど。
不定愁訴外来が必要な時代なんでしょうね。

  • No.408 by 風人  2017-01-11 06:55:38 

『カレイドスコープの箱庭』で桐生先生、彦根先生、速水先生のそれぞれの立場でAiをどうとらえエシックスとどう接するかで各々の考え方がわかるのもおもしろい。
彦根先生が年下なのもありある意味、わずかながら本来の性格が彼はあらわれてるみたいでもある。
対して速水先生は救急の立場から物事をとらえるあまりにスピードスターではあるけど世界観に欠けるというところでしょうか。
桐生先生ほどに医療の世界や現実を理解するにいたらない。
桐生先生は一度挫折してることもあるしある種の領域に達しているから語れる。挫折しないと学べないこともある体現者。
手術できない医者が哲学者になるという表現にひとつの挫折と苦労が感じられる。
まだまだ彦根先生や速水先生は島国の医者というとらえかたもできる。
『ブレイズメス』での発表会での帝華大の面々にかぶらなくもない。
いろいろ人物たちの意見に医療の在り方やAiの未来などが見えてくる。
ただ前向きな未来あれば医療の現実が狭くなっている現実も目の前にあるように迫る物事もある。
常に医療が誰のためにあるか、というのを医療従事者は問われ向かうのもひとつの姿勢。

高階病院長は『ケルベロスの肖像』で一度は病院長の地位から退いたものの田口先生にやりこめられ『箱庭』『領域』においても病院長の立場にいる。そして田口先生たちをはじめとしてイヤイヤながらも彼らを導く立場にいる。
『箱庭』においても市民の要望から東城医大がなくなるのを望まなかった市民たちがいるというのもひとつの展望。
だけどなぜ田口先生が次期病院長なのか?という謎は明らかではない。
佐伯前病院長や高階病院長のように手術畑でもないのに。
ひとつ言えるのは出世欲にまみれてないことや病院内をある程度、把握できる立場にいたということ。不定愁訴外来やリスクマネジメント委員会のポジションから適切だったとうかがえる。

  • No.409 by 風人  2017-01-11 07:44:25 

海堂尊先生、『伝説』の自身の半生でチャンスを得てもいるけど逃してもいるが『箱庭』の半生を綴っていますが逃してますね。
『笑っていいとも!』に出演できる機会があったのに逃してしまったというorz。
ただこの時期はテレビ出演を控えてたとあったから出演しなかったのは天啓ではなかったでしょうか。
『伝説』でもだったけどなにかを逃したらまた別なチャンスや機会はおとずれると思われる。
これらの経験は結果的に作品や作品内の表現に生かされているように思う。
田口先生はAiセンター自体は小百合により崩壊したはずなのにセンター長の肩書きは残るみたいになる(苦笑)。
それと似たり寄ったりに思う。

医療ミステリーとして『桜宮サーガ』は作品世界が構築されているから医療関係者や医療に興味ある読者が手にする作品。
注目の度合いがちがうと思われる。
だけどけっして日の目を見ないわけではない。
ちゃんと社会に根ざし問題提議をしてると思うし架空の『桜宮サーガ』世界とこちら側の現実がいくつか重なってると思う。

  • No.410 by 風人  2017-01-11 18:20:19 

加納警視正と玉村刑事のお遍路いくいかないのやり取りは海堂先生のお遍路ミステリーへの憧れでもあり布石みたいですね。
『玉村警部補の災難』に収録されている「エナメルの証言」でわずかに四国が数行書かれるだけで終わっている。
だけどお忙しい合間に日本各地で講演してるから四国にもお越しになってたんですね。
しかし遍路参りは短時間でそうまわれないのも切ないはなし。

  • No.411 by 風人  2017-01-12 05:43:16 

組織の上にひとを使うのと組織の中や下にあって使われる者。
『桜宮サーガ』では田口先生が物語では『バチスタ』から『肖像』までは前者であったけどやや『箱庭』では立場が異なる。
表向きな立場は高階病院長が上司であるが『肖像』のラストに引退を決めてたのに部下である田口先生に言い括られ結局、立場として変わらないまま。その心情は別として……。
だけど『箱庭』では田口先生が助言を求めたことから経験者としてそれなりに適切なアドバイスをせざる得ないし実際にアドバイスをしている。
『モルフェウスの領域』で被験者であるアツシ少年の人生を守るためやこれからの医療のためにも田口先生に論文を書きなさいと指示している。

心情としての立場は逆転していても病院長や以前の経験もあって高階病院長は部下たちをしっかり束ねている。
『肖像』や『箱庭』においては部下に一任するプレッシャーや責任の重さについてはやや吐露した心情から組織の上に立つ者の苦労がうかがえる。
だけど『箱庭』では田口先生から助言を求め『領域』ではこれからの医療のためやアツシ少年のために指示や示唆ができるおこなうのは人の上に立つ資質があったのではと思われる。
バブル三部作の過去の悔やみや省みたことのあらわれでしょう。
勝者なだけでは人の上に立てないことの具現ともいえる。
ただの腹黒タヌキではない。底が深い、と思う。

  • No.412 by 風人  2017-01-13 18:58:04 

『桜宮サーガ』シリーズはあらためて読むと謎が解けるところもあるけど謎が深まります。
『玉村警部補の災難』に収録されている「四兆七千億分の一」に出てくるネットゲームの話題で被疑者の馬場利一がバンバン、ヘンロは玉村警部補。
ユナちんはもしかしたら『極北クレイマー』に登場した布崎夕奈の可能性あり。モズクは不明。
ドミンゴは『箱庭』で名前だけ出たドミンゴ教授でしょうか?
海堂作品特有の符号や他作品への伏線はあると思う。

  • No.413 by 風人  2017-01-14 07:44:18 

『箱庭』で田口先生の肩書きにリスクマネジメント委員会はともかくAiセンター長と電子カルテ委員会の肩書きを残したのはいざという時のための措置なんでしょう。
もしその肩書きを必要とする難題や事件があった時のために慣れた人物が組織内で動きやすいのもあるし反感を持つ人物がいたとしても反発が少なくスムーズでもある。
肩書きを置いておくことで長く組織内の環境に抑止力にもなる利点があるともいえる。
新たに肩書きをもらった人だと事情を聞くのさえ厄介だろうし余計に手間がかかることもある。
『桜宮サーガ』はけっこう組織内に良くも悪くも組織ね利点と悪癖どちらも等しく描写されている。肩書きある人物はそれなりに本人が厄介に思えばこそまわりからも面倒だけど結果的には組織を守ることにもなる。

  • No.414 by 風人  2017-01-14 10:03:49 

組織において肩書きが必要不可欠は否めない。
Aiセンター長の肩書きを『肖像』の時点で消していたらまた一から行わなくてはいけない。あるいは引き継ぎにしても同様。
電子カルテ委員会の肩書きは『バチスタ』の時点では生きてたでしょうしほぼ電子カルテに移行した時点で役目自体はその時に一度は終えた。
だけどニ、三年の間に電子カルテの目に見えない問題が『箱庭』で浮き彫りにされた。
高階病院長が田口先生からその肩書きを消さなかったのもひとつのリスクマネジメントや組織の上に立つ者の判断。
不可避とされない事態への予見であり保険。

もうひとつは田口先生が肩書きによる権力を無駄に行使しない人物というのもある。
職権乱用にいたることはしない人物だからこそ肩書きを温存し生かすことができる人物ともいえる。白鳥さんがいることで悪評がついてしまうのはおまけみたいではあるが。

田口先生は兵藤先生が適任と思ってるらしいけど彼みたいに組織内を廊下トンビが如くうろうろされたら情報漏洩になるおそれもあると思う。
知らないですむ情報があるなら越したことはないしよけいな軋轢を生むことはない。
田口先生がAiセンターやリスクマネジメント委員会、電子カルテ委員会の長が適任なのは彼ひとりが背負うことで組織が安全に運営できる。
よけいなことを漏らさないだけそれは組織内にとっては信用に代わる大きなこと。目には見えてあらわれるわけではないけど地道に長い目ということでしょう。

  • No.415 by 風人  2017-01-16 14:50:54 

『バチスタ』以降、海堂尊先生の『桜宮サーガ』シリーズよく読むようになったけど医療の世界にもいろいろな事情があるということ。
個人的に勉強になったのは『イノセント・ゲリラの祝祭』の悪辣な官僚の骨抜き政策や案など。
『祝祭』では白鳥さんと彦根先生が打破しますけど(苦笑)。『祝祭』の霞ヶ関、厚労省の描写や八神課長と白鳥さんの駆け引きが面白い。
『祝祭』から『ナニワ・モンスター』へとつながる医療庁の旗揚げ、日本三分計画。『極北ラプソディ』にもつながるいろいろな伏線。
『ナニワ・モンスター』のインフルエンザウィルス“キャメル”による中央と地方の経済戦争。
『極北』シリーズ(『極北クレイマー』『極北ラプソディ』)は地域地方の市民病院の経営がいかに大変か伝わるシリーズ。一市民としては『極北シリーズ』がもっとも共感した作品。
バブル三部作のうち読めたのは『ブラックペアン』『ブレイズメス』だけど昭和と現在では医療の形態やニーズがちがうというのもある。
『極北ラプソディ』であったけど科学技術は未来にむけ飛躍的に進んでるけど実際に使う人間はさほど技術ほどに精神的に進歩していない寒々とした現実や現状。
医療という存在がせまくなっているかもしれない現実。
いちがいに“患者のため”という定義にしても医者も患者もそれぞれ求めるものはちがう。
不定愁訴外来みたいな存在はまた必要と思われる。

  • No.416 by 風人  2017-01-18 18:14:59 

『カレイドスコープの箱庭』の冒頭はいくつか触れられている。
かつての桐生先生に思いを巡らしまた『肖像』で失墜したはずの東城医大が市民の声という形の要望で存続していること。
桐生先生がドミンゴ教授の代理という形で一時的に来日というのも『田口白鳥シリーズ』が終わっていることの証し。
高階先生が引退したいというのも組織のトップの重責もあるでしょう。大学病院の職員八百名の人生を背負い病院という職業から患者の命は当然とし医療ミスから患者の遺族から訴えられる危険もある。
だけど前病院長である佐伯清剛から引き継いだ目に見えない理念や信念、教えなどあるでしょう。

しかし『肖像』のラストや『箱庭』での様子を見たら田口先生が病院長になると表向きはガラリと変わる雰囲気はありそう。だけど藤原看護師や黒崎教授などバブル三部作からの人生が引退しない限りはそう変わらないともいえる。
『箱庭』では論文をろくに書いてない田口先生を本来なら黒崎教授が叱るなりしないといけないけど『肖像』のラストで田口先生の背中を推したことで面と向かって言えなくなったのも悲喜劇。
結果的に論文を書くのは『モルフェウスの領域』までおあずけ。
大学病院の時代ごとの環境や人材不足などいろいろな要因があるというのも背景でしょうね。
田口先生みたいな人物は現実にはいないでしょうけど海堂先生は一部の本で論文ありきの在り方をまた批判もしている。

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