その頃、私は書斎にて、女中が恭しく持ってきた一通の手紙を受け取り、拉丁語で綴られたその宛名を一瞥してから、まだ春の香りが抜け切らない風を押し付けてくる両開きの窓の外を見やり、あの派手で黄色い車をけたたましく鳴らしてやってくる人物と、そいつが運んでくるであろう厄介事に思考を巡らせつつ、まだぬるい珈琲の酸味を口の中に広がらせて一言、呟きを落とした。 「——もう17年か。」