とりとめない思考

とりとめない思考

青葉  2012-01-06 22:03:27 
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考えがとりとめなく浮かんでしまう。

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  • No.2765 by 活字大好き  2013-05-20 13:26:23 

確かに、雪見さんがそうなら、合点がいくけれども……

  • No.2766 by 青葉  2013-05-21 22:39:26 

改札口を通り、駅から出ると見慣れた景色が広がる。雪見の家の最寄りの駅とは、つまり僕の家の最寄りの駅ということだ。僕の家と雪見の家は近い。
僕が乗っていた電車の駅周辺はどこも商店街があり、少し歩くと住宅街になる。僕は商店街を抜けるために歩き出す。日和も後に着いて歩いてくる。
「 僕は新里が真打ちだと思ってきました。日和さんもそうだったはずです。新里が共通の敵だからこそ僕達は協力体制がとれます。でも日和さんは考えを変えたということですね。場合によっては決別もあるかもしれません。」
僕は日和のいる後方に顔を向けて言う。すると日和は足を速めて僕の隣に肩を並べた。
「あたしが雪見さんの敵ならば、協力はできないというわけね。」
「そうです。僕は雪見の味方にしかなれませんから。雪見は被害者ですよ。」
「じゃあ、雪見さんが黒幕ではなく、やっぱり爆死しているならば今の雪見さんは偽者ね。」
無表情で日和は言った。その無表情と偽者という言葉が癇に障る。
「違う!雪見は本当に雪見だった。間違いなく雪見でした。」
少し声が大きくなってしまったが、雪見を否定的に言われたのだから仕方ない。だが日和にとって、雪見が偽者ではないならば甦りはあり得ないという考えから黒幕ということになるのだろう。
僕がちょっと声を荒げたところで怯む日和ではないが、困った顔をしている。
「あたしは敵対する気はないの。一色君、冷静になって。」
確かに僕は冷静ではない。冷静でいろというのが無理な話だ。何せ僕はこれから雪見と会うつもりだ。それだけで気持ちは昂っている。
「とにかく日和さんに着いて来られるのは迷惑です。僕はこれから雪見に会います。何が起きているのか雪見から聞けば全てが解ります。雪見は僕に隠し事をしませんから。日和さんと話しているより真実を簡単に知ることができます。着いて来ないで下さい。」
新里の邪魔さえ入らなければ、そして雪見と二人で話すことがてぎるならば、僕は真実にたどり着けるだろう。雪見は僕に今起きていることを話すだろう。雪見は本当の本当に雪見だったのだから。
日和は僕と肩を並べながら少し考えている。

  • No.2767 by 青葉  2013-05-21 22:43:37 

「解ったわ、一色君。あたしはあなたから離れる。」
そして、そう口を開いた。
「ありがたいです。」
心のそこからそう思った。
「でも、今日もう一度会ってもらうからね。どこかで待たせてもらうわ。」
嫌な提言だと思う。僕は日和に今は不快感しかない。
「正直な気持ちを言えば、もう今日は会いたくありません。」
クスッと日和は笑う。
「正直ね。本当に。でも、これを呑んでくれなければ付きまとうわよ。さっき電車内で一色君が考えてたように、走って逃げたとしても行き先を知ってるから逃げ切ることなんて出来ないわ。」
「………。」
「呑めばいいじゃない。そうすれば一色君は晴れて雪見さんと二人で会えるんだから。それに時間も問わない。ゆっくり再会を堪能していいのよ。野暮なことをするつもりはないからね。ただその後あたしに時間をくれればいいのよ。勉強する時間が減っちゃうかもしれないけど、そんなの一色君なら心配ないわよ。」
何だか馬鹿にされてる気がするが日和の方が年上だと思えば仕方ないのかもしれない。
「さっき日和さんは言ったじゃないですか。雪見の家に入ることはしないと。」
「そう言ったけど一色君があたしを拒むならば仕方ないじゃない。雪見さんの家まで喰らいついていくわ。あたしには一色君が必要なのよ。」
「ゼロの能力の影響を受けない僕の情報が必要なだけでしょう?」
「そうよ。つまり一色君が必要なのよ。それとも、あたしに違った意味で必要とされたいの?そんなはずないわよね、あたしは人前で異様な表情をしたり奇態をとるんだから。異性として感じてないでしょうね。」
やはり日和は僕の発言を根にもっていたようだ。
日和の人間味を感じてしまい、日和への不快感が薄れていく。そのせいか僕は取り敢えず今だけ日和が離れてくれるだけでいいと思う。雪見に会う間だけ邪魔されなければいいと。
「解りました。雪見に会った後に日和さんと会います。」
「それがいいわ。お互いにね。」
「でも会ってどうするんですか?」

  • No.2768 by 青葉  2013-05-21 22:48:44 

「解りきったことよ。一色君と雪見さんが再会した結果を知りたいのよ。何を話して何を感じたのか。どんな真実が出てきたのか。言える範囲でいいわ。」
「そうですか。繰り返しますが場合によっては日和さんと決別があるかもしれません。僕は雪見の味方です。」
「それも仕方ないわね。そうなるならば最後の情報を受け取って、残念だけど一色君に見切りをつけるわ。敵になるにしてもゴングは鳴らしてもらわないとね。一色君だけがあたしを敵と認識して手痛い先制のパンチを喰らうのは勘弁してほしいもの。フェアにいきましょう。」
僕がいったい何をすると言うのだろう。それに電車に乗る前に、着いてこないと言い僕を油断させておきながら、後を着けてチャッカリ電車に乗ってくることをしながら、日和はフェア精神を僕に求めてきた。勝手な言い分だ。
「ゴングでもサイレンでもホイッスルでも決別するならば合図をしますよ。だから、さっきみたいに日和さんも僕に着いて来ないで下さい。騙さないで下さい。」
僕は嫌みを言う。
「今度は大丈夫。お互いにフェアにね。でも、あたしと一色君に決別はないと思うわ。確実にね。」
嫌みは軽く流される。そして決別はないと自信をみせる。
「敵対する結果なにならないということは、雪見の家に行っても会えるのは偽者の雪見ということですか?若しくは雪見は黒幕で幼馴染みの僕が嫌悪するほどの悪人ということにでもなるんですか?」
「或いはそうかもね。そして違った形かもしれない。決別がないとは直感的に感じることだから何も解らないのよ。」
僕には解らない何かを日和は感じているのだろう。
「雪見が偽者の場合、どう偽者なんですか?誰かが雪見を演じているのですか?」
「それも解らない。偽者ならば、どう偽者なのか一色君が答えを持ってきて。あたしは待つだけよ。」
今の日和は僕の欲しい言葉を出すことはないだろう。
さあ、もう雪見の家に行こう。
僕は小走りで日和から離れる。

  • No.2769 by 青葉  2013-05-21 22:53:50 

この後どう日和と会うのか何の約束もしていないが、きっと日和は僕の前に現れる算段をつけているのはずだ。だから何も言わず動き出した僕をただ見ているだけなのだろう。雪見の家はもうすぐだ。途中の駅で下車して日和から逃れる行動をとって時間を潰そうと思ったが、結局は最短時間で雪見の家に着くことになった。でもそれでいい。雪見は帰ってないだろうが家の中で待たせてもらえばいい。逸る気持ちを抑えることはできない。
よく知っている街中を僕は早足で通りすぎていく。考えるのは雪見のこと。雪見が黒幕とはあり得ない話だと改めて思う。雪見が日和の言う通りゼロだとしても、能力はゼロの能力を増幅するものだろう。実際に雪見が復活してから、学校だけに限定されていた新里の影響が広がったのだから。雪見を黒幕と疑っている日和こそがそれを身を持ってそれを実感したはずだ。何故に雪見を黒幕と疑うに至ったのか判らない。
道の両脇に家が連なる長い緩やかな坂を上り切ると十字路がある。いつもは右に曲がり帰宅するが、真っ直ぐ進む。雪見の家に向かう。もう二、三百メートルで着く。早足だった僕の足がスピードを増していく。本気で走りだしていた。そして、あっという間に雪見の家の前に着いた。
見慣れた赤い屋根に白い壁の二階建て。僕は直ぐにインターホンを鳴らす。
雪見はまだ帰ってないだろうと思いながらも、いきなり雪見の声がインターホンからしたらどうしようかと思う。
しばらくして応答がある。
「はーい。」
雪見の母親の声だ。
二、三百メートルを真剣に走れば息が切れている。切れ切れに僕は声を出した。
「優です……。おばさん、……優です。」
僕は雪見の母親を「おばさん」と呼んでいる。
「優ちゃん?……ちょと待ってね。すぐ開けるから。」
思わぬ来訪者が来て意表をつかれたようだ。僕は最近はこの家に寄り付かなかったから仕方がないだろう。
扉が開いておばさんが顔を出す。僕を歓迎する笑顔を見せてくれている。

  • No.2770 by 青葉  2013-05-21 22:59:21 

僕は息を整えながら挨拶をする。
「おばさん。こんにちは。」
「優ちゃん。珍しい。ここに来るなんていつ以来?雪見に会いに来たの?」
心がざわつく。雪見はもう帰っているのだろうか。
「雪見は家にいるんですか?」
おばさんは一瞬不思議そうな表情をしてから言う。
「勿論いるわよ。さあ、上がって。優ちゃんが来てくれるなんて嬉しいわ。」
鎮まりかけた動悸が再び早まる。雪見が近くにいる。
玄関で靴を脱ぎ上がり込む。
おばさんに後に着いて短い廊下を歩き出す。トイレの扉、お風呂の扉をこえると二階への階段がある。雪見の部屋は二階にある。よく知っている家の中。しかし、おばさんは階段を通りすぎてしまう。僕は二階に上がってよいのか戸惑い足を止める。おばさんは正面の居間の襖まで行ってしまった。とはいっても短い廊下。僕とおばさんの距離がそんなに離れたわけではない。
「雪見はこっちよ。」
おばさんが襖を開けて僕を中に誘う。雪見は自分の部屋ではなく居間にいるようだ。
僕は歩き出し、おばさんに続いて居間に入った。

そして、そこに雪見はいた。

僕の期待とは違う形でいた。

控えめな笑顔を崩さない雪見。今後絶対にその表情を崩すことのない雪見の写真が仏壇の中に飾られていた。

ああ、こんな展開だとは。そう思った。

  • No.2771 by 活字大好き  2013-05-25 08:03:18 

あああああああ……

  • No.2772 by 青葉  2013-06-01 21:22:13 

「さあ優ちゃん、こっちに座って雪見にお線香をあげて。」
動きが止まってしまった僕をおばさんが促す。
僕はノロノロと仏壇の前に行き、先に座っていたおばさんの隣に正座する。
思考が僕の動きを鈍くしている。どう考えればいい?雪見は学校に来た。でも家では亡くなったことになっている。学校に来た雪見は偽者ということだろうか。いや、あれは雪見だった。僕と新里に板挟みにされて辛い表情をしていた。偽者に出来ることではない。
僕は線香をあげる。酷く馬鹿馬鹿しいことをしているような気がした。そんな気持ちになるのは、雪見がこの世に存在していると確信しているからだろう。学校で会った雪見は偽物ではない。
「ありがとう、優ちゃん。きっと雪見も喜んでいるわ。」
僕は自分のしていることを客観的に冷めた目でみていたが、おばさんは大変喜んでくれている。
「優ちゃん、もっと雪見に会いに来てくれない。このまま雪見が皆の記憶から消えてしまうのは哀しいのよ。特に優ちゃんは雪見の幼馴染みのだし忘れてほしくない。優ちゃんは小さい時からよく知っていて半分くらい家の子だもん。ううん、おばさんはほとんど優ちゃんを家の子と思ってる。だから、もっと家に来て。」
この言葉を聞き、学校で会った雪見は偽者かもしれないとも思う。雪見が自分の親にここまで寂しい思いをさせるだろうか。させて平気だろうか。
「来ます。また必ず来ますよ。」
僕は自分を責める。おばさんは僕を幼い時から随分と可愛がってくれた。なのに僕は、おばさんが辛い思いをしているのに今まで何もしてこなかった。僕に出来ることなんてたかが知れているが顔を見せることくらいするべきだった。
「ありがとう。約束だからね。」
おばさんは笑顔でそう言ったが、どこか寂しそうだった。
僕は仏壇の前から移動して座卓に座る。
その時玄関の方から声がする。
「ただいまー!」
雪見ではない。雪見の弟で中学一年生の和真だ。
「お帰りなさい。」
おばさんは玄関に出迎いに行く。そして和真と言葉を交わした。僕の来訪を報せているようだ。
「優兄ちゃん!久しぶり!」

  • No.2773 by 青葉  2013-06-01 21:24:56 

ドタドタと和真は居間に入ってくる。
「和真君、お帰り。本当に久しぶり。」
そう言ったが雪見の葬儀の時に暗い表情で雪見の遺影を持って立っていた姿を僕は見ていた。
その時に中学生になった和真を初めて見た。生意気だとは自分でも思うが和真が大きくなったんだなと思った。
僕が小学生だった頃は和真ともよく遊んだが、僕が中学に上がってからはこの家に来ることがなくなり和真に会うことはほとんどなかった。だが和真もおばさん同様に僕を歓迎してくれている。
「どう、中学校生活は?」
雪見のことを避けて当たり障りのない話題を出す。
「部活が毎日ある。」
「何をやってるの?」
「テニス部だよ。モテるかなと思って。」
快活な性格の和真は笑いながら答える。
「へえ。で、実際にモテるの?」
「そうだな、別に変わんない。ただ毎日の部活で忙しくなっただけ。遊ぶ時間がない。」
「そう、大変そうだね。」
三人分のお茶を運んできたおばさんが口をはさむ。
「何言ってるの。ちゃんと遊んでるじゃない。夜、部屋でゲームしてるの知ってるんだから。勉強もしないで。」
「勉強だってしてるよ。」
「ウソ、成績は小学生の頃の方が良かったじゃない。優ちゃんや雪見の学校には入れないわね。」
親子喧嘩よりもずっと柔らかな雰囲気が感じられる。
和真は自虐的な言葉を言う。
「入れないなー。馬鹿は入れてくれないよ。」
新里という馬鹿も入学できていると僕は思う。新里の成績は良いが馬鹿だ。そんなことを考える僕は新里が心底嫌いなんだろう。
「そうだ和真。せっかく優ちゃんが来てるんだから解らないところを教えてもらいなさいよ。勉強をみてもらったら。優ちゃん、いいでしょう?」
おばさんからの突然の提案に戸惑う。僕はそれでも良いが和真にとって、それが嬉しいことだろうか。しかし和真は乗り気だ。
「優兄ちゃんが教えてくれるなら願ってもないよ!」
勉強を教えてもらうことなんて、そんなに楽しいことではないはずだ。つまり和真はそれだけ僕を歓迎してくれているということだろうか。

  • No.2774 by 青葉  2013-06-01 21:35:42 

「優ちゃん、いいわよね?」
おばさんがたたみ掛ける。
「はい。どれ程役に立てるかは解りませんけど。」
僕は了承する。
「良かった。じゃあ、夕飯も食べていって。久しぶりにおばさんの料理を食べていってよ。さっそく用意するわ。」
おばさんは僕に長居を求める。雪見がいない寂しさを紛らわせたい気持ちだろうか。いや、雪見と幼馴染みの僕がいることで、雪見を近くに感じたいのかもしれない。
「夕飯までご馳走になるわけには……」
僕はおばさんの気持ちを推し量りながらも辞退しようとする。
「あら、優ちゃんも遠慮をする年になったのね。でも、ここでは遠慮なんて要らないわよ。ここは優ちゃんの家も同然なんだから。」
「そうだよ。ずっと優兄ちゃんに会いたかったんだから。せっかく来たんだから食べていってよ。」
おばさんに和真も同調する。
「では、家に連絡してみます。」
自分の家でも僕の夕飯は用意されるだろう。雪見の家で食べるなら母に知らせなければならない。
「大丈夫、おばさんが優ちゃんのお母さんに電話しておくから。心配しないで。」
連絡さえしておけばある程度の時間までは遅く帰っても母は心配しない。遅くなる理由が雪見の家にいるということならば尚更だ。朝に帰っても何も言わないだろう。僕の母とおばさんは仲の良い友達だ。ただ二人が元々友達だったから僕と雪見が幼馴染みなったわけではない。僕達が仲良くなってから母親同士の交流が始まった。そのあたりの経緯は物心がついてなかったので記憶にはない。
とにかく僕のスケジュールは、和真に勉強を教えその後に夕飯をご馳走になり、その後日和に会うということになった。

  • No.2775 by 青葉  2013-06-01 21:40:39 

和真の勉強を二時間近くみて、夕飯を食べた。雪見の話題を僕は避けるべきかと思ったが、おばさんと和真は寧ろ積極的に雪見の話をしたがった。特におばさんや和真の知らない雪見の話を聞きたがったので、二人が知らない小学校や中学校、高校での校内でのエピソードを話した。その他、僕の家族と雪見の家族で一緒に行った旅行の思出話にも花が咲いた。

「また和真の勉強、お願いしていい?」
帰り際におばさんはそう言った。
「はい。和真君が良ければ。」
おばさんと一緒に玄関まで見送りに来ていた和真が空かさず言う。
「良いに決まってるよ。また教えてよ。」
「じゃあ決まりね。」
おばさんの顔はほころんでいた。
「はい。」
雪見が偽物かどうかは関係なく僕はまた来ようと思っている。それは寂しい思いをいているこの家族への同情ではなく、単に僕がこの人達を好きだからだ。今日、ここに来て楽しかったからだ。暫く忘れていた。僕にとってこの家は居心地の良い場所だってことを。
「気をつけて帰ってね。でも近いから心配ないか。」
名残惜しそうにおばさんは別れを言う。
「ご馳走様でした。おじさんに宜しく言っておいて下さい。」
おじさんとは雪見の父親だが、今日は仕事が遅くなるそうで会うことが出来なかった。おじさんは人を笑わせるのが好きで気さくな人だ。会えなかったのは残念だった。
「またね。」
和真が手をふる。
僕は雪見の家を出た。外はすっかり暗くなっている。
さて、ここからは現実に戻らなければならない。日和はどこから現れるのだろう。一時は日和を不快に感じて会うのを嫌がったが、雪見の仏壇を見てしまうと日和の意見が聞きたい。日和と話をしたい。
日和とは待ち合わせをしていないので、とりあえず家に向かって歩き出す50メートルも歩かないうちに後方から声を掛けられる。
「一色君……」
「?」
女性の声ではあるが日和ではない。かといって雪見でもない。
誰だ?
僕は後ろを振り返る。

  • No.2776 by 活字大好き  2013-06-04 17:47:44 

どうなっていくんだろ

  • No.2777 by 活字大好き  2013-07-09 09:14:08 

あげます

  • No.2778 by izm  2013-07-19 23:20:44 

お久しぶりです

続きは…
どうなるのでしょう??

  • No.2779 by 青葉  2013-07-20 23:42:21 

されば続きを。
待っててくれたお二人に感謝。

  • No.2780 by 青葉  2013-07-20 23:59:03 

同じ学校の制服を着た女子が立っている。街灯の灯りでハッキリと顔が見える。見覚えのある顔だ。
佐野菜奈緒。
同じ学校になったのは高校からだが、雪見とは常に行動を共にするほど仲良くしていた。が、僕とは今まで話をすることがなかった。存在は知っているがよくは知っているとはいえない。
予想外の人物が立っている。
振り向いたが何も言葉を発しない僕に対して菜奈緒は困っている様だ。
「一色君?」
呼び掛けに反応しない態度の理由を問うように再び菜奈緒は僕を呼ぶ。
「ああ……突然話し掛けられてちょっとビックリしたんだ。それで声が言葉が出なくて。ゴメン。」
呼び掛けに僕は答えた。
「ううん、突然に声を掛けられたらビックリするのは当たり前だよ。しかも相手が話したことない私なんだからビックリも倍だよね。こっちこそごめんね。」
菜奈緒は僕にどんな用だろうか。
「一色君。雪見の家から出てきたでしょう?」
「うん、そうだよ。見てたんだ。」
「私も雪見の家に用があって、そこまで来てたから。」
「そう。」
菜奈緒は僕と違って、寂しい思いをしているおばさんに頻繁に会いに来ていたのかもしれない。
「それで、あの……雪見はいた?」
「!!!」
菜奈緒は学校で起きている異常に何か気づいているのもしれない。そう思った。
菜奈緒が雪見の復活を当然と捉えているならば、雪見が家にいたか訊くのは特におかしなことはないのかもしれない。
だが、僕に声を掛けてきた。
雪見が亡くなった記憶がなく、ずっと生きていると思っているのらば、わざわざ普段話をしない僕に声を掛けて家に雪見がいるかを確認する必要はないはずだ。
「変なこと訊いてるよね。ごめんね。自分で確かめればいいことだもんね。そうするね。雪見の家に行く。サヨウナラ。」

  • No.2781 by 青葉  2013-07-21 00:01:52 

質問に答えない僕から菜奈緒はそう言って離れようとした。僕が思案して喋らないのを、僕が不快に感じてるように思ったのだろう。喋らなくなるのは僕の悪い癖だ。日和が僕のことをモテないというが、その通りで、こういった人を寄せ付けないところも良くないのだと思った。
「待って。雪見は家にいない。でも、何で僕にそんなことを訊いたの?」
「……そうよね。雪見はいないよね。ありがとう。本当にごめん。もう帰る。」
菜奈緒は僕の近くにいることに居心地の悪さを感じてるようだ。最初の態度は肝心だ。
「帰るの?雪見はもう少ししたら帰るかも。家の前で待ってれば。」
菜奈緒が何かを感ずいている。それは間違いないだろう。
菜奈緒は何をどう感じたのか知りたくなった。だから、 僕は悪いと思いながら嘘はをついた。雪見は家では遺影になっているのだから、学校を中心としたゼロの能力外であるここには来ないつもりだろう。それは雪見が本物であれ偽者であれそう思う。そう思うなかで、雪見が帰ってくるようなことを言ったのは菜奈緒の反応を見るためだ。ただそれだけだ。
果たして 菜奈緒は複雑な顔をする。
「雪見、帰ってくるの?」
徐々に菜奈緒は怖れの表情に変わる。
「………。」
まずいことを言ってしまった。
菜奈緒が雪見の復活をおかしなことと捉えていることはほぼ解ったが、いたずらに菜奈緒に恐怖を与えてしまった。
「ねえ!雪見は帰ってくるの?生きてるの?」
やはり菜奈緒は雪見の復活をおかしく思っている。
怯えを含んだ真剣な眼差しで僕を見ている。
日和は雪見が甦っても常に雪見のことを考えていなければ、ゼロの能力の範囲から脱しても雪見が生きている不可解さは考えに上がってこないと言っていた。だから騒ぎにはならないと言っていた。それは当たっているのかもしれない。が、心の中に雪見を大きく残している存在がいた。菜奈緒にとって雪見は亡くなった後も大切な友達だったのだろう。だから今起きているあり得ないことに気づいてしまった。

  • No.2782 by 青葉  2013-07-21 00:12:39 

雪見は人柄が良いから校内で雪見が亡くなったことを悲しんだ人間はたくさんいた。だが、その度合いが人一倍強く、この事態に気づいた菜奈緒は僕にとって同憂の士だ。味方と言える。
「ごめん、冗談だよ。でも佐野さんが先に変なこと言うから……雪見は帰ってこない。帰るはずないよ。僕たちは葬儀に出たんだから。」
味方かもしれないが、そう答えた。雪見を大事に思う人を危険に晒す訳にはいかない。巻き込んではいけない。僕の味方になることで菜奈緒が狙われる事態は避けるべきだ。

誰から狙われる?

そんなことを思った。
敵は誰だろう。
おそらく新里だとは思う。でも違う可能性があることも否めない。迷いが生じている。
日和は新里は利用されているだけで、雪見が黒幕だと言っていた。
それについては否定しかない。雪見は黒幕ではない。
しかし、これまでのことを新里が中心で全てやっているとは確かにいいきれない。冷静になった今、新里の思い通りだけにはなっていないとの日和の考えは頷ける。新里は僕を大ケガさせようと狙っている。本人もあからさまに言っているが未だに新里の思惑通りにケガをせずに僕は元気だ。いくら僕がゼロで能力を受けつけなくても、亡くなった者を生き返らせらほどの強い能力を持っている新里に狙われながら無事なのはおかしいと思える。
とにかく黒幕が新里であれ誰であれ、菜奈緒が真実を知れば危険になる可能性は高くなる。
「葬儀には行った。でも今日、雪見は学校に来た。一色君、本当のことを教えてよ。一色君だって変に思ったから雪見の家にきたんでしょう?それでここにいるんでしょう?」
厳しい表情で僕に問いかけてくる。
菜奈緒も僕が何かを感じていることを察した様だ。もっとも僕は菜奈緒よりずっと前からこの事態をおかしく思っていたが。
「どうしたの、もう変なこと言うのはよそう。認めたくないけど僕たちは雪見のいない現実を生きていかなくちゃ。さあ、帰ろう。」
僕は強引に話を終わらせることにした。さっきは帰ろうとする菜奈緒を呼び止めておきながら勝手だが、今は菜奈緒を巻き込むことは出来ないと思う。

  • No.2783 by 青葉  2013-07-21 00:14:30 

「雪見の葬儀には出たけど、雪見の遺体はなかった……お願い、知ってることを教えて。雪見は生きてるんでしょう?」
「!」
遺体はなかった。
その通りだ。
日和は雪見について、甦ったのではなく最初から亡くなっていない可能性を考えていた。菜奈緒の言葉は日和の推測に通ずる。
雪見は爆死した。身体が木っ端微塵になったということで、棺桶に入れられたのは雪見の遺品のみ。遺体は無かった。

現実は命は一度落としたらお仕舞い。

やはりそういうことなのかもしれない。ゼロの能力を持ってしても人の命までは操れない。つまり雪見は日和の考え通り亡くなっていなかった。ただ姿を見せなかっただけなのかもしれない。そう僕も疑い始めている。ただ日和の考えと違うのは、雪見が黒幕ではないと思うこと。雪見が新里に利用されているのだろう。しかし、新里は強力なゼロであり黒幕であるとは思えない節がある。だから黒幕は、雪見と新里の両者を利用しているのかもしれない。いや、家族思い雪見をずっと家に帰れないということは利用というより支配かもしれない。
そうならば、雪見を早く救い出さなければならない。
「大丈夫?もう帰って家で休んだ方がいいよ。佐野さん、何だか疲れているみたいだから。」
菜奈緒には申し訳ないことをしたが、菜奈緒と話すことができで僕にとっては良かったと思った。菜奈緒のお陰で僕は新たな可能性を見いだせた。ここからは日和と話したい。そう切に思う。だから、全てを疲れのせいにして菜奈緒を帰らせようとしている。僕は本当に勝手だ。
「疲れている?疲れのせいで学校で雪見が見えたの?見えただけじゃない、話をしたし、ふざけてジャレたりもした。つまり雪見に触れたの。ねえ一色君、雪見に触れたあの感覚さえ、疲れが作り出したの?」
「………。」
「それに、雪見がいる違和感もずっと気づかなかった。いるはずない雪見と一緒にいるのに、おかしいと思わなかった。少なくとも学校にいる間はおかしいと考えもしなかった。これは疲れのせいなの?あり得ない!」
「………。」
菜奈緒の興奮の度合いが上昇していくのが判る。

  • No.2784 by 青葉  2013-07-21 00:16:59 

「普通ならば疲れたからって、そんなことは起きないでしょう!もし雪見は亡くなっているのならば、自分では気づかないうちに深刻な精神病にでもなってるとしか考えられない!一色君は何か知ってて隠してる。それは解る。お願い一色君、教えて!……それともヤッパリ……おかしくなってるのかな?」
菜奈緒が恐ろしく感じているのは、死者である雪見が学校に来たことではなく、来るはずなき雪見が学校に来た奇怪なことに気づかずにいたことの様だ。
「僕にもハッキリしたことは判らない。だから答えられない。それから、この件は首を突っ込まないのが最良の選択だと思う。ひとつ言えることは、佐野さんの脳は健康だよ。間違いない。」
こんな言葉で菜奈緒が安心するとも納得するとも思ってはいないが他に言葉がみつからない。
「何で首を突っ込まない方がいいの?それに何で脳が健康だと言えるの?全然腑に落ちない。ハッキリしなくていいから一色君が知ってることを教えて。そうじゃないと脳が健康でも心はどうにかなっちゃいそう。」
脳が健康でも心はどうにかなる、という菜奈緒の表現を面白く思った。僕は脳イコール心と考えていたが菜奈緒は違う認識らしい。
それは兎も角、菜奈緒は予想通り納得しなかった。
「普通ではない事態が起きているんだ。首を突っ込むと危険に巻き込まれる可能性が大きい。普通ではない事態だから佐野さん脳が混乱して当然だよ。深く考えないのが脳にも心にも良いと思う。その方が危険もない。」
ゼロではない菜奈緒は普通に日常を送るのが一番だろう。
「深く考えなければ明日から普通に過ごせるの?雪見が学校に来なくなるの?それとも雪見が学校に来るのが当たり前と明日から思えるの?そうなら一色君の言う通りにする。でも違うと思う。また明日も同じことで悩む。きっと悩む……。」
自分がどうにかなったのでは?と恐怖を感じている菜奈緒にとって僕の言葉は逆効果だった。僕の知っていることを聞きたいとより強く思わせてしまったようだ。
それに菜奈緒の言葉は的を得ている。明日になり登校すれば菜奈緒は学校にいる間は何の疑問もなく雪見と接するだろう。でも下校して学校で能力を振るっているゼロの能力範囲を脱したら同じことになる。

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